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【熊本】白玉屋新三郎|380年受け継がれる白玉の技と和菓子文化

hossie

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東京特派員

更新日
2025年12月21日
公開日
2025年12月21日
白玉屋新三郎の美しく美味しい白玉

こんにちは、東京特派員のhossieです。私がかつて5年間勤務した熊本は、良い思い出ばかりの土地です。気候や風土、食べ物はもちろんこと、多くの地元の方々と楽しい時間を過ごさせていただきました。
そんな熊本に12年ぶりに訪問してきました。各地を回りましたが、今回はその中でも一番伺いたかった白玉の老舗「白玉屋新三郎」をご紹介致します。
熊本県八代郡氷川町に本店を構える老舗和菓子店「白玉屋新三郎」の創業は1638年。江戸時代から380年以上にわたり、白玉粉や米飴づくりを家業としてきた、熊本を代表する和菓子の名店です。

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米どころ・水どころ そして石工が育んだ白玉文化

白玉屋新三郎が店を構える氷川町は、かつて「肥後吉野郷」と呼ばれた米の産地。
阿蘇地下水盆により良水に恵まれ、肥後米が育つ土地は、※1肥後の石工集団とともに知られてきました。
創業当時は砂糖など無い時代で、甘い米飴屋として始まり、餅米を使う白玉粉や白玉菓子の製造へと発展。食材を活かす技と製法は、現在も変わらず守られています。
白玉粉は、佐賀県神埼産の「ヒヨクモチ」から伝統的な石臼碾き(水をくわえて臼を回す損傷澱粉の少ない製法)であり、保存が利き・調理は簡単で利用出来るもの。
求肥や団子などには、なめらかであり柔らかい中に餅らしい食感をたのしめます。
白玉粉に使用するもち米は、佐賀県神埼産の「ヒヨクモチ」を100%使用。時間と手間を惜しまない伝統的な石臼碾き石臼挽き製法により、なめらかな舌ざわりと、やわらかさの中にコシを感じる独特の白玉粉が生まれます。

※1 県内の霊台橋や通潤橋等多数の石橋が現存しています。長崎・鹿児島にも作りに行ったと言われています。

©︎白玉屋新三郎

石臼が生む、なめらかさとコシ

工房で使われている石臼は、創業当時から形を受け継ぐ全国的にも珍しいもの。
社長の牛嶋伸夫さんは、「白玉の特徴は、つるんとしたのど越しと、しっかりとしたコシ」と語ります。
かつて八代平野が干拓される以前、この地は海に近く、白玉粉は貿易品としても重宝されていたそうです。土地の歴史とともに、白玉粉は熊本の食文化を支えてきました。
日本人にとって(もち米の)餅は特別なもの。正月や節句・慶事にしか食しませんでした。
ましてや、夏の季語にもなる白玉は、冷たいつるんとした餅を食べたい上流階級のものでした。
そんな和素材の魅力が、現代の暮らしの中で再認識されるようになっています。
例えば、なめらかな喉どおりは高齢者にとっては嚥下を助けてくれますし、料理の濃度調節も美味しさを足しながら(小麦粉に頼ることなく)出来ます。

©︎白玉屋新三郎

定番から進化系まで広がる白玉の可能性

白玉屋新三郎では、白玉粉を使った伝統的な和菓子に加え、時代に合わせた商品開発にも積極的に取り組んでいます。
その代表的な商品のひとつが「軍配もなか」。
白玉粉を使ったもなかの皮(種)に白玉粉を加えてあることで、一般的なものよりサクサクとした軽やかな食感と香味が特徴です。
軍配の形には、「勝利をつかむ」「良い方向へ導く」といった縁起の良い意味も込められています。

©︎白玉屋新三郎

400年へ向かう老舗の現在地

創業400年を目前に控えた白玉屋新三郎。
伝統を守るだけでなく、白玉粉という素材を現代の食卓へどうつなげていくか。その姿勢は、老舗でありながら常に前向きです。
熊本の風土と歴史が育んだ白玉の味わいは、今も変わらず、そして少しずつ進化を続けています。
和菓子の奥深さと、素材の力を改めて実感できる一軒です。

首都圏にお住まいの方も、白玉屋新三郎の白玉を味わえる場所があります。
浅草の人気の甘味処「甘味みつや」で使用している白玉は、全て白玉屋新三郎の商品です。
「甘味みつや」は行列の出来る人気店ですが、予約をすることが出来ますので、浅草に行かれた際には、是非足を運んでみては如何でしょうか。
末筆ながら、久しぶりの訪問にも関わらず、快く取材にご協力をいただいた牛嶋伸夫社長様(14代目)に、この場を借りて御礼申し上げます。
誠に有難うございました。

■ 白玉屋新三郎(しらたまやしんざぶろう)
本店:熊本県八代郡氷川町吉本72
営業時間:
・甘味…本物の白玉を愉しむ 10:00〜16:30
・ランチ…地産地消の食材 11:00〜15:00
・お買い物 9:00〜18:00

店休日:1月1日〜3日のみ
公式サイト:お取り寄せ・贈答 https://www.shiratamaya.co.jp/

©︎白玉屋新三郎
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