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パリ市では、イダルゴ市長による車道の削減と歩道化、自転車専用レーンの設置が進んでいます。あわせて植樹による緑化も進められており、環境により配慮した町へ変わりつつあります。その中でも近年のパリ市内を歩いていて気づく、自転車利用が増えたことによる功罪を述べてみたいと思います。
以前から、パリ市内中心部における慢性的な渋滞は、パリ市の悩みの種でした。理由は、歴史的建造物が多いことによる入り組んだ街路と、戦後のモータリゼーションに対応できない道幅、そして一方通行の多さです。渋滞は排気ガスを深刻化させ、晴れて乾燥した日が続く時期は、今でもしばしば大気汚染のアラートが発せられます。
現在のパリ市長であるアンヌ・イダルゴ氏は、パリ・オリンピックを一つの契機として、市内の道を車中心から歩行者中心にする政策を進めてきました。あわせて、排気ガスを出さない自転車を移動の主役にできるように、自転車レーンの設置などしています。多くの車道を歩行者専用またはバス・タクシー・自転車のみに制限し、市内中心部へ流入する車を減らす政策です。
車道が制限されたことにより、一部の車道で渋滞がよりひどくなりましたが、一方でパリ市内での車利用を避ける人も増えました。歩行者が主役となることで、より観光もしやすくなりました。市民には、電動自転車の購入に対して補助金を出したり、市内各所にはヴェリブというセルフでのレンタサイクルを設置して、自転車を持たない人や観光客でも気軽に自転車利用ができるようにしました。
結果、一気に自転車を利用する人が増えましたが、追いついていないのが自転車利用者のマナーです。
自転車に乗る際に、「自転車は軽車両」「歩行者優先」という意識を強く持って乗っている人は、どれくらいいるでしょうか。フランスでは歩行者が道を横断する際に、歩行者信号が赤でも車が来ていなければ道を渡ってしまう雰囲気がありますが、この傾向が自転車利用者にもしばしば見られます。
歩行者信号が青、自転車含む車両用の信号が赤の際に、信号を無視して横断歩道を横切る自転車を多く見かけます。特に自転車レーンを走行している自転車については、速度を緩めず横断歩道に突っ込んできますし、子供や老人などにとっては危なく、私個人としても日々それら現場を見ていつも苦々しく思います。
もちろんフランスでも、自転車についての罰則はあります。例えば「赤信号の無視」「一時停止で停止しない」「歩行者を優先しない」などは各135ユーロが科されます。
今のパリにおける自転車推進は、一部で現実が理想に追いついていない現状があるように思います。脱炭素社会に向けたエコな手段である自転車の推進。一方で、アップデートされていない人々の意識やマナーです。フランスのテレビ局TF1の記事によると、2017年から2024年までに自転車事故は37.5%増えたそうです。
自転車利用は良いことです。それゆえマナーも同じように向上していけば、パリはもっと素敵な町になるのですが、なかなか全ては上手くいかないようです。