ロッテルダムの魅力Part2:レトロ&ヒップな港町を巡る
コンテナ港として世界11位の規模を誇るロッテルダム。14世紀に漁港として発展し、18世紀の東インド会社の台頭、アジアへの新航路開拓、後の19世紀にロッテルダムと北海をつなぐ新水路の完成と、時代とともにオランダの発展を支えてきました。常にモノやヒトが動いているからか、ロッテルダムは特有のエネルギーに満ちています。
そんなロッテルダムの魅力を伝えるPart2では、ロッテルダムがロッテルダムたらんとする「港」に光を当て、昔ながらの面影を残すエリア、ヒップなスポットとして注目を浴びる埠頭と、「新」「旧」の顔をご紹介します。
かつての港町の面影をたどる――デルフスハーヴェン
では、「旧」のほうから訪ねてみましょう。行き先はデルフスハーヴェン(Delfshaven)です。お隣の市、デルフトのような名前ですが、ロッテルダムです。名前はデルフトの港だった名残です。
Part1でお伝えしたおもしろい建物群が並ぶブラーク駅(Blaak)からメトロで約6分、コールハーヴェン駅(Coolhaven)に降り立ちます。
駅から8分ほど歩き、デルフスハーヴェンに入る直前で橋を渡ります。運が良ければ、跳ね橋が上がって船が通行する瞬間に出くわすかもしれません。橋が元に戻るまでには5分くらいかかるので、道を急ぐ地元の人にとってはバッドタイミングですが、滅多にお目にかかれない光景なので、観光客にとってはラッキー(笑)。
ロッテルダムは、第二次大戦時、港を中心に大規模な爆撃を受けました。焼け野原から立ち上がることでユニークなビルが立ち並ぶ今のロッテルダムができあがったわけですが、奇跡的に戦火を逃れた町もありました。デルフスハーヴェンもそんな町うがのひとつで、ロッテルダムの面影をしのぶ場所として人気があります。
デルフスハーヴェンがロッテルダムのなかでもことさら大切にされているのは、たたずまいのみならず、ここから新大陸アメリカへの船出をしたという歴史をもっていることもあります。その歴史の出発点である巡礼始祖教会(Oude of Pelgrimvaderskerk Rotterdam-Delfshaven)があるエリアへと歩き、運河を左岸から右岸へとのんびり散歩してみましょう。
1620年、清教徒たちが巡礼始祖教会に集まります。清教徒はオランダ人ではなく、イギリス人。英国国教会の弾圧を逃れてきた人たちで、ここからイギリスのサウサンプトンに行き、メイフラワー号に乗り換えてアメリカを目指しました。
■ 巡礼始祖教会
・住所: Aelbrechtskolk 20, 3024 RE Rotterdam
・URL: https://www.oudeofpelgrimvaderskerk.nl/en/
教会横の地ビールレストラン――De Pelgrim
教会の横には外テラスがあるレストランがあります。De Pelgrimというビアレストランです。
400年以上の歴史をもつ建物は、市役所、警察署など、時代と共に様々な使われ方をし、1996年にロッテルダムの地ビールを楽しめる店としてオープンしました。建物内で定期的にビールを醸造しています。8人以上のグループなら、敷地内でデルフスハーヴェンの歴史を織り込みながらの地ビールツアーを催行してくれます。
■ Stadsbrouwerij de Pelgrim
・住所: Aelbrechtskolk 12, 3024 RE Rotterdam
・営業時間: 水~土曜12:00~24:00(日曜~22:00)
・定休日: 月、火曜
・URL: https://www.pelgrimbier.nl/
フードアントレプレナーが集うウェアハウス――Fenix Food Factory
レトロな港町を楽しんだ後は、ヒップな埠頭に移動しましょう。トラムや地下鉄を乗り継いでいく方法もありますが、天気がよければ水上バスがおすすめ。ビアレストランDe Pelgrimからは約20分(1.3キロ)ほど歩きますが(トラムもあり)、St. Jobshavenという船着き場から目的地のKatendrechtまで水上バスが運行されています。約5分と短い船旅ですが、水上からみるロッテルダムのビル群もなかなかのもの。
着いた埠頭のKatendrechtは、かつては売春宿が立ち並び、ポン引きがうろつく物騒なエリアでした。2010年代、ロッテルダム市が再開発に着手、ドックヤードがギャラリーになったり、古いレストランからこぢんまりとしたおしゃれなカフェなどになったりするごとに雰囲気が変わっていき、いまや殺風景なドックヤードがヒップ! とすっかりおしゃれなエリアになっています。その中心にあるのが、2014年にオープンしたFenix Food Factoryというフードコートです。
Fenix Food Factoryが人気なのは、ロケーションもさることながら、ロッテルダマー(ロッテルダムの人々という意味)のフードアントレプレナーだけを集めたことも大きいと思います。ロッテルダマーたちは、独立心旺盛で、商売熱心、そして地元愛がとても強いのです。コート内は地ビールやチーズ農場のチーズ、ベーカリー、精肉、本など個人商店がごちゃっと集まっており、買ったり、食べたり、休んだりすることができます。
■ Fenix Food Factory
・住所: Veerlaan 19D, 3072 AN Rotterdam
・営業時間: 10:00~19:00(土・日曜~18:00、金曜~20:00)店やレストラン・バーにより異なる
・URL: http://www.fenixfoodfactory.nl/
人々はここからニューヨークに旅立った――ホテル・ニューヨーク
Fenix Food Factoryから橋を渡った対岸に、ホテル・ニューヨークという四つ星ホテルがあります。ロッテルダムなのになぜニューヨークなのか? という疑問がわくかもしれません。それはこの建物の歴史にあります。
この建物はホーランドアメリカライン(Nederlandsch Amerikaanse Stoomvaart Maatschappij)というクルーズ会社のオフィスでした。ビルが完成したのは1917年のことで、ここからオランダの人々はニューヨークへと旅立ったのでした。ホーランドアメリカラインは1971年に拠点をシアトルに移すために建物を売却、1993年にホテルニューヨークとしてオープンします。ちなみに、ホーランドアメリカライン社は今もシアトルで営業を続けています。
1900年代前半、オランダから大型客船でニューヨークに行くのはリッチな層だったに違いありません。贅沢でクラシカルなディテールと古さに新しさを見出す現在の風潮がとけあい、独特の雰囲気をつくりだしています。天気がよい日は、海沿いロケーションとレトロ&おしゃれな雰囲気にひかれて、宿泊客のみならず、ランチやディナーを楽しむ人でにぎわいます。
■ Hotel New York
・住所: Koninginnenhoofd 1, 3072 AD Rotterdam
・営業時間(レストラン): 7:00~01:00
・URL: https://hotelnewyork.com/food-beverage/
協力: オランダ政府観光局
https://www.hollandflanders.jp/
TEXT・PHOTO: 水迫尚子(オランダ在住ライター)
筆者
地球の歩き方書籍編集部
1979年創刊の国内外ガイドブック『地球の歩き方』の書籍編集チームです。ガイドブック制作の過程で得た旅の最新情報・お役立ち情報をお届けします。
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