96. サマルカンド観光の中心 3つの神学校が織りなす壮大な景観「レギスタン広場」

公開日 : 2023年03月19日
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サローム(こんにちは)!

サマルカンドを訪れる旅行者のほとんどは、サマルカンドブルーとも形容される、美しい青のタイルで彩られた荘厳なイスラム建築をこの目で見るのを心待ちにしているはず。中でも世界遺産に登録されているサマルカンド旧市街の半径1km強圏内にあるレギスタン広場、グル・アミール廟、ビビハニム・モスク、シャーヒズィンダ廟群の4つの歴史遺産は、サマルカンド観光の上で必ず訪れてほしい最強カルテット。私も各見所に何度も何度も訪れ、そのたびどんどんその魅力のとりこになっていったのでした。これらの観光地を今回の記事より、ガイドブックに載っていない情報もたっぷり交えてそれぞれ徹底解説していきましょう。
まずはサマルカンド観光の中心で一番人気の見所、レギスタン広場。

レギスタン広場 全景

3つのメドレセ(マドラサ、神学校)に囲まれたレギスタン広場。その壮大な景観が初めて目に入った時は、誰でもその美しさにあっと息を呑むはず。それぞれ1つのメドレセだけでも主役級の存在感なのに、それが3つもここに集まっているとなると圧倒されるのも当然です。ここはウズベク人旅行者や地元サマルカンドの人々にとっても特別な場所で、「一緒に写真を撮ろう!」と言われたり、結婚式のフォトセッションに遭遇したりすることもよくあります。
このレギスタン広場は毎晩美しくライトアップされるので、ぜひ夜にも行ってみましょう。また雨で地面が濡れているときにライトアップを見に行くと、地面に映る「逆さレギスタン」が見られたり、オンシーズンにはときどきプロジェクションマッピングをやっていたり...と、日によってさまざまな姿を見せてくれます。

レギスタン広場 ライトアップ
これが「逆さレギスタン」!夜のライトアップ時は日中より観光客が少なく、ゆっくり眺められる
レギスタン広場 プロジェクションマッピング
プロジェクションマッピングショーは主に団体客の予約が入った時に開催されるので、見られるかどうかは運次第

レギスタンとは「砂地」の意味で、13世紀にモンゴル軍が襲来し古代サマルカンドの町が破壊された際、堤防に破壊されたため川が干上がってしまった結果、この地に広い砂地が生まれたといわれています。
このレギスタン広場は時の支配者によって何度も建て直され、ソ連時代には大規模な修復が行われました。その際、時代とともに堆積した土が2m以上も取り除かれたとのことです。

それではそれぞれのメドレセや、何十回となく私がここに通った中で見つけたレギスタン広場内のおすすめスポットを詳しくご紹介していきましょう。まずは向かって左側にあるウルグベク・メドレセ。
サマルカンドの歴史を語る上で欠かせない偉人な英雄がティムールですが、実はティムールの時代にはこれらのメドレセはありませんでした。ティムールの時代にこの広場に建てられたのは大きなバザールで、その孫のウルグベクが1420年に建てたのがこのウルグベク・メドレセ。ウルグベクは3年かけてこの美しいメドレセを造ったほか、さらに広場の東側にハナカ(聖職者の宿舎)を、南側には荘厳なモスクを、現在ティラカリ・メドレセがある広場北側には隊商宿キャラバンサライを建てたとされています。

レギスタン広場 ウルグベクメドレセ外観

入口の高さは約35m。正面入口アーチはモザイクタイルが使われ、きめ細かな装飾が施されており、入口の両脇には水色でイスラム教の唯一神「アッラー」と書かれた模様がいくつもあります。そしてアーチ上部に描かれている青い星をモチーフにした模様は、いかにも天文学者だった彼らしい装飾といえましょう。そう、ウルグベクはティムール朝の君主であったと同時に優秀な学者でもあり、彼自身もこのメドレセの教壇に立って直接学生に教えていました。
アーチの両側にはミナレット(塔)がありますが、北側(正面から見て右側)のミナレットは少し傾いています。これはこのミナレットが空を支えるためにあり、空の重さのため傾けて建てられたそう。
この北側のミナレットは、上まで登っていかないか?とときどき真下の土産屋さんからお声がかかりますが(有料。先日聞いた時の言い値は7万スムでした)、当然ながら狭い階段を延々と登っていくことになるので人によってはかなりしんどいかもしれません...。奥にはもう1つミナレットがありますが、かつてはメドレセのすべての角に、つまり4本のミナレットが建っていたとのこと。

時間とお金、そして体力に余裕があるならぜひ登っていただきたいミナレット。交渉次第で安くなるかも?
時間とお金、そして体力に余裕があるならぜひ登っていただきたいミナレット。交渉次第で安くなるかも?

また、メドレセ入口を囲むらせん状の柱は「知性」を表しており、知識がこの柱のらせんのようにどんどん上に登って行ってほしいという願いが込められているとのこと。また入口中央は「パンジャラ」という格子窓になっており、メドレセ学生達が勉強に集中できるよう中から外のバザールを見づらいようにするため作られたそうです。

アーチ両脇にある木彫りの扉の入口をくぐり、土産屋さんを通って中庭へ。

レギスタン広場 ウルグベクメドレセ中庭
中庭2階からの眺め。春に咲くのは桜、、ではなくアンズの花

中庭は2階建てのフジュラ(神学校の小部屋)にずらりと囲まれています。それぞれのフジュラの扉はとても小さく、学生は学問に敬意を示すという意味を込めて頭を下げながらフジュラに入っていたとのこと。このフジュラは1階が勉強用の部屋、2階が学生寮となっており、1部屋に3人ほどが暮らしていたそう...なのですが、現在は1階のフジュラは全て土産物屋になっており、日本語で客引きする店員などもいます。昔は学問の場だったこのメドレセは数百年たった現在商魂たくましいウズベク人の商売の場になっており、神学校として使われていた当時の雰囲気を思い起こすのはなかなか難しいかもしれません。さすがサマルカンドで一番の観光地、値段相場が他の場所より少し高めで、なかなかの値段で吹っ掛けてくることも。

同じようなお土産を売っている土産屋ばかりですが、そんな中でおすすめのお店をご案内しましょう。まずは日本語で「レギスタンタイル工房」と書かれた看板が目を引くタイル屋さん。1階では青の都を訪れた記念にぜひ買いたいブルーのタイルや、ウズベキスタン各地の陶器が売られています。そして2階は工房になっており、実際に職人さんがここでタイルを作っており、希望すれば見学させてくれることも。この職人さんたちはソ連時代からウズベキスタン各地の歴史建築や遺跡の修復に携わってきた敏腕の職人さんたちで、実はご縁あって私は時々ここでタイル作りを習っています。日本人に売れそうな模様や絵柄があったらぜひ教えて欲しいと言われているので、何かアイデアがある方はぜひお知らせください。

レギスタン広場 ウルグベクメドレセのタイル工房
タイル屋さん2階の工房では、作品に囲まれて職人さんが黙々と作業している
レギスタン広場 ウルグベクメドレセのタイル工房
私の前任のJICA観光ボランティアが考案したという、日本人に大ウケの富士山柄タイル

そのすぐ近くにあるのが、レギスタンの名物おじさんオマル氏のカリグラフィー(アラビア書道)のお店。ここでは希望すれば羊皮紙に好きな言葉をその場ですらすらと書いてくれ、その筆さばきは本当に見事なもの。名前を書いてもらって表札代わりに...なんていかがでしょうか。羊皮紙のサイズによって料金が違い、最小サイズで3万スム(2023年3月現在のレートで約360円)。

レギスタン広場 ウルグベクメドレセのアラビア書道のお店

さらにこのお店の隣にはコーヒーの看板を出しているお店があり、階段を上って2階に上がると小さなカフェが出現。市内の一般カフェと比べると少し値は張りますが、中庭を見渡しながらゆったりコーヒーやお茶を飲むことができます。このカフェの反対側、ウルグベク・メドレセの南西の角から上がって2階には、サマルカンドでは珍しいトルココーヒーを出してくれるカフェも。

コーヒーカップにもこだわっているウルグベク・メドレセ2階のトルココーヒーカフェ
コーヒーカップにもこだわっているウルグベク・メドレセ2階のトルココーヒーカフェ

かつてモスクとして利用されていたとされる最奥部の広いスペースは現在博物館となっており、このメドレセで使われていた物や当時のモザイクタイル、ウルグベクの造った天文台、六分儀などが展示されています。

レギスタン広場 ウルグベクメドレセの博物館

広場から見て正面にある神学校が、1660年に建てられたティラカリ・メドレセ。当時のサマルカンドの支配者ヤラングトシュ・バハドールによってこのメドレセは3つの中で最も新しく、このメドレセの完成をもって現在のレギスタンの姿になりました。両側にある2つのメドレセと違い、このメドレセは入口両側にもフジュラが見えます。そして目を引くのが、正面から見て左側に建っている青のドーム。
入口から入って左手にある、このドームの下に入ってみましょう。そこにあるのはまばゆいばかりの黄金の間。ここは礼拝所で、ビビハニムモスクが早くから廃墟となってしまったためここがサマルカンドの主なモスクとして使われていました。礼拝スペースには他のモスク同様、メッカの方角を指すミフラーブという窪みや、階段のようなイマーム(礼拝の指導者)用の説教壇ミンバルも見られます。

レギスタン広場 ティラカリメドレセの黄金の礼拝所

そして天井を見上げると、まるで目が吸い込まれそうなほどきめ細かい青と金色の装飾が!下から見上げるとドームの天井のように見えますが、遠近法を使って描かれており実際は平面だというのだから驚きです。そういえば私が最初にウズベキスタンに行きたい!と思った理由は、偶然この美しい天井の写真を何かの本で見たからでした。
ティラカリメドレセのティラカリとは「金箔された」という意味で、建設当時は5kgの、修復の際にも3kgの金箔が使われたとのことです。

レギスタン広場 ティラカリメドレセの黄金の礼拝所

礼拝所右側はやはりミニ博物館となっており、修復前のレギスタン広場の写真や当時のタイルなどが展示されています。現在のレギスタン広場は、どれだけ忠実に当時の姿を再現して修復されたかは分かりませんが、叶うことならぜひ当時のレギスタン広場も実際に見てみたかったものです...。
そして礼拝所左側はお土産屋さん。布地を織る機織り機も展示されています。他のメドレセと異なる1階建てのフジュラも、やはりそれぞれ土産屋になっています。

レギスタン広場 ティラカリメドレセのお土産屋

最後にご紹介するメドレセが、向かって右側のシェルドル・メドレセ。17年の歳月をかけ、1636年に完成しました。

レギスタン広場 シェルドルメドレセ外観

このメドレセで注目してほしいのがアーチ上部の模様。人面の太陽を背に持つ動物が小鹿を追いかけている姿が描かれています。この動物は虎にしか見えませんが実はライオンとのことで、実際「シェルドル」も「ライオンが描かれた」の意味。
しかしこのような装飾で人や動物を描くことはイスラム教で禁じられた偶像崇拝にあたり(そのためこの国のイスラム建築の装飾は植物などをモチーフにした幾何学的なアラベスク模様が多い)、禁じ手にあたるこの模様をわざわざ描いたのは当時の支配者が自分の権力を見せつけるためといわれています。しかし建築家がその責任を取って自殺してしまったという伝説もあります。

右側入口から入ったところにあるのが金細工工房で、この場で金細工のお皿などを彫っています。買うにはなかなかハードルが高い品物ですが、ぜひ足を止めて作業の様子を見学してみましょう。

レギスタン広場 シェルドルメドレセの金細工工房

このシェルドルメドレセの中庭はウルグベクメドレセと同じく2階建てのフジュラで囲まれており、神学校として使われていた当時は100人以上の学生が寄宿していたといわれています。現在は他のメドレセと同じくフジュラが全て土産物屋になっています。またウズベキスタンでは珍しい顔はめパネルや歴史衣装コスプレ写真スペースもあるので、お好きな方はぜひ記念撮影を(有料)。
ここにしかないお店が、最奥部アーチのすぐ左にある民族楽器のお店。店主のボーブルさんはあらゆる楽器を演奏できる音楽家で、リクエストするとミニコンサートと称して弦楽器ドゥタールやルボーブ、タンバリンのような打楽器ドイラといった定番の伝統楽器から、珍しい口琴チャンコブズまで演奏して見せてくれます。次々と出てくるウズベキスタン民族楽器の美しい音色は必聴です!聞かせてもらった際はぜひお礼にお心づけを。

レギスタン広場 シェルドルメドレセの民族楽器屋さん

なおレギスタン広場のチケット窓口は広場の向かって左側にあり、展望台のある広場正面からだと少し遠回りして行かなければいけません。入場料は1人5万スム(2023年3月現在のレートで約600円)ですが、ウズベキスタン在住者はアクレディテーションカードを提示することで現地人価格で入ることができます。
またトイレはウルグベクメドレセとティラカリメドレセの間、ウルグベクメドレセを出て2回左に曲がると見えます。

まさにこのレギスタン広場を見るためにサマルカンドにやって来た、という方も多いことでしょう。ぜひたっぷり時間を取って、この壮大なイスラム建築をゆっくり見学してみてください。じっくり見ると2~3時間は過ぎてしまうかも...。

それではコルシュグンチャ・ハイル(また会う日まで)!

■レギスタン広場 Registon maydoni

住所
Registon ko'chasi, Samarqand
電話番号
+998-66-235-3826
営業時間
07:00~00:00(冬季は08:00~20:00。予告なく変更となる可能性あり)
入場料
6万5000スム(2024年より5万スムから値上げ。予告なく変更となる可能性あり)
アクセス
サマルカンド駅から3、73番バスでRegistonバス停下車、徒歩1分

筆者

ウズベキスタン特派員

伊藤 卓巳

根っからのスタン系大好き人間です。まだまだ知られていないウズベキスタンの魅力や情報を、サマルカンドより愛をこめてお伝えします!

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