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【『おいしい日本の届け方』発行記念特別対談】農林水産省 中岡菜々子×地球の歩き方 宮田崇|世界へ、“おいしい日本”を届けたい!

sponsored by 農林水産省

地球の歩き方編集室

地球の歩き方編集室

更新日
2025年9月4日
公開日
2025年9月4日

農林水産省と『地球の歩き方』による、異色のコラボが実現!世界で、日本の「食」への需要が高まる今、生産現場からも、“挑戦したい”という声が広がっています。しかし、日々の業務に追われ、なかなか最初の一歩を踏み出せない生産者も少なくありません。そうした状況を少しでも前に進めたい——その想いから生まれたのが、食品輸出のためのガイドブック『おいしい日本の届け方』だ。

「“はじめての旅”のように、輸出の挑戦も、第一歩がすべて。その一歩を踏み出した先人たちの軌跡と、多様な業種の声を集め、挑戦する人の背中を押す一冊をつくりたい。」この一冊に込められた想いを、発案者である農林水産省 輸出国際局 輸出支援課の中岡菜々子課長補佐(以下、中岡)と、『地球の歩き方』宮田崇取締役(以下、宮田)が語り合いました。

 

「食の輸出」を、旅のガイドのようにわかりやすく

宮田
今回の企画の話をいただいた時は「え! 輸出!?」と驚きました。全然畑が違うので最初はドキドキしてたんですよ。発案されたのは中岡さんだったとか。

中岡
そうなんです。世界的な和食ブームや健康・発酵食品への注目、さらにサステナブルな価値観の広がり、インバウンド需要の拡大も追い風となり、日本の食は今、世界のビジネスシーンでこれまでにない注目を集めています。2024年には輸出額は1.5兆円を突破し、12年連続で過去最高を更新。円安も相まって、輸出を始めたい事業者にとっては絶好のタイミングです。とはいえ「興味はあるけれど、どう一歩を踏み出せばよいか分からない」という声も多く、足踏みしてしまう方も少なくないんです……。

宮田
それ、わかります。旅行業界も同じで「海外って怖い」と感じる人は少なくなくて。言葉の問題とか、パスポートやビザを取ったり、現地のマナーや文化を覚えたりとか、考え始めるとちょっと尻込みしてしまう。でも実際は、最初の一歩を踏み出すのが難しいだけで、案内さえあれば行けるんですよね。

中岡
まさに、「海外旅行の計画」と似ていますよね。食品輸出も、現地の規制や商習慣、市場ニーズ、言語対応など、考えることは非常に多岐にわたりますし、地域や品目によって条件もさまざまです。でも、すべてを自分で完璧に理解する必要はありません。全体像をつかめれば、自分で進められる部分と、専門家に任せる部分を整理できます。日本の食品輸出が拡大するなかで、ようやく経験や事例も蓄積されてきましたが、初心者が全体像を整理して理解するにはまだまだ情報が不足しています。そこで、GFP(農林水産物・食品輸出プロジェクト)(※注1)で、その「道標」を作りたいと思ったんです。

宮田
だからこそ『地球の歩き方』なら、と思っていただけたのはうれしかったです。我々、地球の歩き方が作ってきたのは、旅のハードルを下げるガイドブックで、英語ができなくても、その国や地域の文化がわからなくても、旅立てる最初の一歩になればと思っていて。だから、輸出をはじめたい人にもきっと同じことができると思ったんです。

(注1)GFPとは、Global Farmers / Fishermen / Foresters / Food Manufacturers Projectの略称であり、農林水産省が推進する日本の農林水産物・食品輸出プロジェクト。2018年に農林水産物・食品の輸出を意欲的に取り組もうとする生産者・事業者などのサポートと連携を図る「GFPコミュニティサイト」を立ち上げ、サイトへの登録者を対象に、輸出診断、専門家からのアドバイス、輸出情報の発信、セミナー開催などのサポートを行っている。

“やってみたい”を引き出す 遊び心

中岡
この企画の一番の狙いは、より多くの方に、輸出への関心をもっていただき、「自分も挑戦してみたい」と感じてもらうことでした。国や地域ごとに異なる規制や手続き、物流などの実務に加え、販路開拓やブランディングといった戦略要素も重なり合い、一見すると非常に複雑です。だからこそ、情報をわかりやすく整理し、“海外旅行の計画をたてる”ような感覚で、現地のマーケットやビジネスのイメージを膨らませ、ワクワクする構成を目指しました。複雑な全体像をしっかり伝えながらも、前向きな気持ちにつながる──その両立は、行政の立場ということもあり、中々簡単ではないですが、あえて重視したポイントでした。

宮田
最初に参考用にいただいた輸出に関する資料を見たときは、どういう風にわかりやすくするかが課題だなと、喧喧諤諤(けんけんがくがく)話しあって、咀嚼してこの形になりました。イメージしているものに近づけたでしょうか?

中岡
私たちが当初から意識していたのは、「手元に置きたくなる」「デザインで魅せる」「図や写真で直感的に理解できる」という3点でした。その構想に、『地球の歩き方』チームの編集力が加わり、想像を超える形へと仕上がっていきました。やりとりはまさに創作のキャッチボールで、完成品は従来の資料とは一線を画す仕上がりに。「こういうものが欲しかった」という声を多くいただきました。内部の関係者からもとても人気です。(笑)

宮田
そう言っていただけるとうれしいですね。私たちの強みって、教科書じゃなく“旅の参考書”として作る感覚なんです。しっかり読み込んでもらいたいところと、息抜きになるネタ、そのバランスをとるのが得意で。この本の構成を考え始める時に、巻頭にグラビアがあって、モデルルートがあって、エリアガイドや旅の準備とテクニックが続く、という地球の歩き方の構造が意外と活かせるなと思ったんです。

中岡
いきなり堅い情報から入ると、ハードルが高く感じられてしまいます。そこでまずはグラビアやモデルルート、エリアガイドを通して“旅気分”でイメージを広げ、“どうやるの?”と気持ちが高まったところで、ノウハウに辿り着くんですよね。また、編集部の発案で、地球の歩き方おなじみの「旅の準備と技術編」を輸出版にアレンジし、トラブル回避のための情報も盛り込んでいます。

取材のなかで印象的だったのは、輸出に挑んできた方々と、「地球の歩き方」愛読者層が想像以上に重なっていたことです。だからこそ、このコラボは、多くの方の背中を押す一冊になると感じました。

宮田
表紙に輸出船のイラストを加えたり、中ページのデザインや最後のスタッフクレジットにいたるまで、あちこちに遊び心を詰め込めました。ちなみにスタッフクレジットにおにぎりのアイコンを入れたのは、中岡さんのアイデアですよね?

中岡
そうですね。表紙の船も、スタッフクレジットのおにぎりも、ちょっとした雑談や遊び心から生まれたんです。『地球の歩き方』といえば、国名の下に飛行機マークが定番ですが、“食品なら船便もあるよね”と。スタッフクレジットについては、『ジョジョの奇妙な冒険』とのコラボ本を見ていたときに、「ジョジョが★マークを使っているなら今回はおにぎりマークかな」と。そんな小さな仕掛けが、読み手の心に残る余白になればうれしいですね。随所に散りばめられた食のデザインもぜひ楽しんでもらえたら。

宮田
出版業界ではよく「神は細部に宿る」と言うのですが、そういう遊び心が読者には伝わるんだと思います。ほかにも、読者に少しでも「輸出できそうかも」と思ってもらいたくて、例えば欄外に、「スモールスタートでいいよ」みたいなひと言コメントが入っていたり、巻末に漫画を入れて、内容をおさらいできるようにしたり。実際、この本を読んで、うちの編集スタッフが「輸出してみたい」って言い出したんですよ(笑)。

中岡
それ、最高の褒め言葉です!想いがきちんと届いて、本当にうれしいですね。

国境も業務も超えてー「オールジャパン」で形にした1冊

宮田
巻頭のインタビューページでは、コシノジュンコさんや村上信五さんのように、農業や食に多様な立場から関わる異業種の方々にも登場していただきましたが、やっぱり“食の輸出”って、モノというより文化だと思うんです。

中岡
その通りで、食の輸出は、単にモノを動かすことではなく、文化を広げていく営みだと思います。だからこそ、手続きや実務の解説にとどまらず、現地の人々の思いや、日本食がどのように受け入れられているかという“ストーリー”を大切にしました。

宮田
現地で活躍されている方々の生の声を入れられたおかげで、読み物としてのクオリティを上げられたと思います。各国の輸出状況を案内する「エリアガイド」のページでは、日本から出て行った食材が現地でどう変化していくのかがよくわかるし、それに加えて「イギリスでは、カツがのってなくてもカツカレーと呼ばれる」みたいなクスッと笑える小ネタもあって。たくさん情報提供していただいて、すごくありがたかったです。

中岡
情報収集にあたっては、「農林水産物・食品支援プラットフォーム」をはじめ、JETRO(日本貿易振興機構)や、JFOODO(日本食品海外プロモーションセンター)など、多くの関係者にご協力いただきました。ビジネスに“正解”はないからこそ、多様な視点をできる限り取り入れたいという思いがあったんです。食品輸出は、生産から加工・物流、販売・プロモーションまで、幅広い分野が関わります。だからこそ、国境も業種も超えた「オールジャパン」で作り上げた一冊になったと思います。裏側の調整は本当に大変でしたけど(笑)。

この一冊が、日本の食を世界へ運ぶ旅のはじまりに

宮田
今後はそれをどんな形で届けていくか、ですね。

中岡
まずは、各地域の農政局を通じて、輸出に関心をもつ生産者の皆さんに届けていきます。
加えて、まさに「地球の歩き方」スタッフのように、日本の食文化を世界に広めたい方、地域や現場を支えたい方、新しい挑戦を始めたい多様な方々に手に取っていただきたいですね。最近では、教育機関でも人材育成の教材として活用され始めています。

宮田
デジタルだけでなく、紙にもしたことで活用範囲が広がりますね。

中岡
やっぱり紙には、独特の“伝わる力”がありますよね。「知人が持っているのをみて、自分も欲しくなった」という声も寄せられています。装丁の心地よさやページをめくる質感、視覚的な見やすさ──そうした「地球の歩き方」ならではの魅力とあいまって、ふと開きたくなる身近な一冊になればと思っています。

宮田
これから『おいしい日本の届け方』を手にしていただく方に、メッセージをいただけますか?

中岡
「地球の歩き方」が旅人の世界を広げてきたように、この本が「食で世界に挑戦したい」皆さんの背中を押す一冊になればと願っています。
“最初の一歩”に必要なエッセンスをぎゅっと詰め込みました。すぐに動き出したい方も、これからじっくり夢を膨らませたい方も、気軽にページを開いて、イメージを広げてもらえたらうれしいです。ここから新しい挑戦が芽生えることを、心から楽しみにしています。

宮田
輸出したいと思ってもらえることと、そんな生産者さんを支える仲間が増えるきっかけの1冊になれば言うことないですね。海外輸出、盛り上がって欲しいです! 中岡さん、本日はありがとうございました。

<農林水産省HP>
”地球の歩き方”とのスペシャルコラボ『おいしい日本の届け方』
<入手方法>
▼無料デジタル版ダウンロードはこちらから(おいしい日本、届け隊ウェブサイト)
▼ご購入はこちらから(万能書店)

Profile

中岡菜々子(農林水産省)
輸出・国際局 輸出支援課 課長補佐(※2025年6月当時)。東大農学部卒、経産省入省後、広く産業政策やデザイン・PR戦略を担当。大阪・関西万博では担当した公式キャラ「ミャクミャク」がSNS等で話題に。2023年より農水省にて輸出産地支援に取り組む。現在、JETRO香港産業研究員事務所 代表。

宮田崇(地球の歩き方)
2017年、編集長に就任。コロナ禍で旅行が制限されるなか「旅の図鑑シリーズ」「国内シリーズ」をヒットさせ話題になる。現在は取締役兼観光マーケティング事業部長。これを機に輸出業を立ち上げたいと目論見中。

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