【大阪・関西万博攻略法】9月に入り混雑度合いが加速、今後の訪問は大行列覚悟で。9月下旬以降は夜の寒さ対策も必要
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閉幕まであと50日をきった大阪・関西万博(EXPO2025)。関西を中心にリピーターが定着し、行ってよかったという声が数多く聞かれます。筆者は東京在住ですが、きっかけがあり訪れたところ、万博にどハマりしました。すぐに通期パスを購入し、これまでに10回入場し、友人や家族にも訪問をすすめています。大阪万博、いったい何が楽しく、どうしたら満足度の高い滞在ができるのでしょうか。東京から通うために、効率のいい滞在方法を試してみた筆者が、プラン作りのヒントをお教えします。
「並ばない万博」というキャッチフレーズが先行したこともあり、会場で遭遇する行列は、来場者ストレスの一因となっています。行列は会場だけではありません。パビリオンの3日前予約の際は、インターネット予約でログインするまでに4~5万人待ち、1時間以上アクセスできないという事態も発生していました(7月下旬以降は劇的に改善)。
残念ながら、万博は行列を回避できないイベントです。パビリオンに入場したり、食事・買い物を楽しんだりするなら、どこかで必ず並ばなければなりません。ただ時間帯や訪問先により、行列の長さは変わりますので、タイミングがよければ、それほど並ばずに入場することができます。
行列してでも訪れたい場所はそこを優先すべきだと思いますが、そこまで強い思い入れがないのであれば、頭を切り換えてほかの場所を訪問するのも手です。特に食事処は何分かの差で大行列になりますので、食べる場所にそれほどこだわらないのであれば、空いているお店にさっさと入ってしまいましょう。またレストランの中には予約可能な店もあり、パビリオン予約ほど難しくないので、事前に予約を入れておくのも行列回避のためのいい解決法です。
今回の万博は開催前には否定的な見方が多く、筆者も訪問しようとは考えていませんでした。2015年のミラノ万博を取材したときには、あまりにおざなりな展示を行うパビリオンが複数あり、10年前の時点で「万博ってオワコン(終わったコンテンツ)なのでは?」と感じていました。
万博に足を運んだのは、5月上旬に開催された「大阪の祭!~EXPO2025 春の陣」に出演する友人から撮影を依頼されたのがきっかけでした。空き時間にパビリオンを訪問すると、各国・各社の工夫あふれる展示を見ることができ、文字と写真だけで知っていた国の貴重な映像や、工芸品、衣装を目の当たりにすることができました。スタンプラリーでスタンプ帳を埋めていくのも楽しく、もっといろんなパビリオンを訪問したいと思い、最終日には通期パスを購入していました。
万博の魅力をキーワードにまとめると、「建築」「体験」「発見」「映像」「グルメ」「出合い」「夕景・夜景」などに集約できます。
会場では、わずか半年の展示ということから、耐久性に重きをおかない大胆なデザインの建物や構築物を見ることができます。また包み込むような巨大スクリーンでの上映のおかげで、VR体験も可能です。観光的にはマイナーで、現地の映像を見るチャンスが少ない国の、豊かな自然や現地の人々の動画映像が見られるのも、万博ならではの魅力です。
今回の万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマですので、未来予測を展示内容の柱にしているパビリオンが多数あります。多くのパビリオンで、最新の映像技術を駆使した展示が行われ、各国のアピールとして、開発中の最先端技術も展示されています。国によっては観光要素ゼロで、その国の産業を紹介する展示もありますが(ベルギー)、密度のある展示内容は興味深く、多くの発見もありました。
万博会場内は物価が高く、各国グルメも「正直、高いなあ」と思います。しかし、はっとするほどおいしいものに出合うチャンスもありました。現地スタッフもいて、グルメ旅を楽しむ場としてもいい空間です。多くのパビリオンで当該国や現地に詳しい日本人スタッフが働いており、現地語で挨拶したり、現地の方ならではのおすすめ情報を聞くことができたりします。
夕景や夜景の美しさは期待以上のものでした。万博会場が西の端に位置しているので、夕日がさえぎられることなく会場を照らしますし、夜のパビリオンは昼の姿を一変させるライティングやイルミネーションが施され、目を楽しませてくれます。夜はイベントも開催されるので、案外忙しいのですが、夜景を見るためだけにリングを1周したいと思うほどです。
まずは、無駄な行列を避けることです。万博は行列が避けられないイベントと説明しましたが、訪問場所や時間を変えることで行列する時間を短縮することができます。
次いで重要なのは、自分にとって価値のあるパビリオンを見学することです。見どころランキング記事は人気のコンテンツですが、1位から5位くらいで比較しても、媒体によりランキング評価はばらばらです。それが個人の評価になれば、もっと異なってきます。みんながほめていても、自分には響かない展示かもしれません。
万博の何が楽しいかは人それぞれでしょうが、大屋根リングの散歩と渡航経験・興味のある国のパビリオンへの入場、万博グルメの体験、夜のショーの鑑賞、夜景散歩は、万博を楽しむにあたり外すことができない要素です。いろいろな出合いと発見が期待できます。
当日分のパビリオン予約は入場後10分を経過すると可能になります。どこかに座ってパビリオン予約を、と考えたくなりますが、訪問したい予約不要のパビリオンがあるなら、まずはそのパビリオンを目指しましょう。
入場したばかりの家族連れと、大屋根リング下のベンチで隣合わせになったときのことです。その家族のお父さんが当日予約を入れようと「近くのパビリオンにでも入るか」と言いながら検索していました。しかしそこで初めて、どこも空きはなく予約は簡単には入らないということに気づいたようで、ショックを受けていました。
開場直後に入場していれば当日予約分の希望パビリオンを押さえることができるかもしれませんが、当日の予約はそもそも空き枠が少なく、パビリオンを選ぶ余地はほとんどありません。たとえ△印(混雑しているという表示)の時間帯があったとしても、みんなが一斉にそのパビリオンに予約を入れるので、「予約できません」と返されて終わりです。当日予約が成功する確率は、はっきり言って1%もありません。スマホ操作は、パビリオンの行列に並んでからにしましょう。
入場したら真っ先に大屋根リングに上って、会場全体を見渡したいと思われる人も多いでしょう。パビリオン見学はまったく興味ないという方ならそれでもいいですが、入館したいパビリオンがあるなら、やはりそちらに直行しましょう。人気パビリオンは朝から行列していますが、それでも朝早めの時間帯はまだましな状況です(アメリカ館やイタリア館は開場直後に2時間以上の待ち時間ができます)。行ったときにたまたま行列が短くなっているという可能性もありますので、まずは入館したいパビリオンに向かいましょう。
ちなみに、会場限定のおみやげを買いたいなら、ショップ訪問を優先してもいいと思います。普通の観光なら見学の最後におみやげ購入という流れになりますが、ショップも行列していることが多く、夜も最後におみやげを購入するお客さんで混雑する傾向にあります。
ショップには大行列ができていることがありますが、「万博ICOCA」(交通ICカード)や、サンリオのタイアップグッズを購入する人のための列であったりするので、並ぶ前に何の行列かを確認することをおすすめします。
購入したおみやげは、東ゲートと西ゲート近くにあるヤマト運輸で預かってもらったり、発送したりできます。梱包用の段ボール箱も購入できます。
おすすめのパビリオンはいくつかありますが、残念ながら人気パビリオンだけに行列必至です。イタリア館やアメリカ館などは2時間以上の行列が当たり前、フランス館も常に長い行列が続いています。
パビリオンの展示内容は国によってさまざまです。旅行の思い出がよみがえるような国があれば、「この国にこんな一面もあったんだ」と驚くほど違った表情が見られる展示、旅情ゼロのビジネス博覧会のような展示もあります。正直言って、入ってがっかりというパビリオンも中にはあります。
入館時の満足度が高いのは、渡航経験があったり、思い入れや興味があったりする国です。ノーアイディアの人にとってはおもしろくない展示内容でも、興味があったり、行ったことがあったりする場所なら、どこか楽しめる要素を見つけられます。
あえておすすめを紹介するなら、フランス館やインドネシア館、サウジアラビア館、オーストラリア館、バーレーン館、未来の都市などを候補にします。いずれも並んで入ることができ、五月雨式に入場できるので(バーレーンは1回当たりの人数制限があるが待ち時間が短い)、タイミングがよければ行列する時間は案外少なくて済みます。もちろん展示内容もおすすめできます。バランスよくその国らしさを感じることができます。未来の都市は日本の企業が展示を行っていますが、最新技術が紹介され、未来をテーマにしたこの万博ならではの夢のある展示が見られます。
人気デスティネーションの北欧も行列ができていますが、北欧館の展示内容は非常に地味です。多くの方は中に座り込み休憩所化しています。しかし、壁のディスプレイの展示映像を見れば、北欧諸国のSDG’sへの取り組みが理解できます。見どころのないような写真展示にも、「ああ、確かにこういう風景だった。こんな人たちがいた」と、懐かしい思い出がよみがえりますが、北欧にそれほど興味がなければつまらない展示だと思う方もいるでしょう。人気国で行列ができているから、と入館すると肩すかしをくらうパビリオンもありますので、自分の興味や渡航経験で選ぶことを最優先してください。
関西圏以外から訪れる多くの方は、万博会場訪問の日数を1日程度に設定し、ユニバーサルスタジオを訪問したり、市内観光を楽しんだりすることと思います。しかし万博は1日だけの訪問で満足するのは難しい場所です。
会場は広く、パビリオンの混雑具合も国や曜日、時間帯、天気によって変わるので、初めての訪問ではうまくペース配分ができません。「やたらと歩き回ったけど、入場できたパビリオンは少なく、食事も高かった」という感想を抱いたままの人も相当数いるのではないでしょうか。
「ああ、いろいろ見られてよかった」と思えるには最低でも2日間。さらに会場を下見するために、初日は夕方入場枠(夜間券)を使うことをおすすめします。夕方から入場することで、暑さもしのげますし、ざっと会場を見て回ることで、ゾーンの位置関係や会場の広さが把握できます。
2日目と3日目ですが、回るエリアを分ければ、トータルの歩行数を減らし、体力を温存することができます。筆者が訪問したときは2日目が雨、3日目が晴れの予報だったので、2日目は会場北側のリング周辺のパビリオンを中心に回り、3日目に南側のエリアを回りました。この結果、それぞれ1万歩にも満たない歩行数で巡ることができました。訪問当初の慣れないうちは1日当たり2万歩以上歩いていたので、かなり省力化できました。
滞在先とアクセス手段は、効率を優先して考えると、桜島(ユニバーサルスタジオ)周辺のホテルに泊まり、タクシーを利用するのがベストです。宿泊代は安くありませんが、時間を買うことができるのは大きなメリットです。
理想の訪問プランをまとめると、以下のようになります。
・宿泊先:桜島(ユニバーサルスタジオ)周辺のホテル
・会場へのアクセス:タクシーを利用
・入場ゲート:西ゲートのできるだけ早い入場枠を予約する
・退場ゲート:西ゲートからタクシー利用
初日の行動:
16:00から入場できる夜間券を利用。リングに上ったり、行列の少ない単独パビリオンに入ったりして、会場の雰囲気をつかむ。夜のショー鑑賞にもトライ。ドローンショーも見ておく
2日目、3日目の行動:
理想は9:00の予約枠で、9:30~10:00にゲートに向かう。訪問予定のパビリオンは、近隣エリアで複数候補を選んでおき、午前中はそれらのパビリオン入場を目指す。昼食は予約しておいたレストランへ。午後はリングの散歩やコモンズ館、行列の少ないパビリオンを訪問。夜はショーを見る時間を作りつつ、再び行列の短いパビリオンを訪問、できれば各国パビリオン併設のカフェで腹ごしらえ。ドローンショーが始まる前に退場すれば、帰路の混雑を少しは回避できる
万博の何に期待するかは人それぞれだと思いますが、限られた時間を使って訪問するなら、少しでも多くのことを体験し、万博ならではのさまざまな魅力(建築、発見、出合い……)に触れることをおすすめします。次の記事では、行列を少しでも回避するためのアクセス方法や巡り方、今回の万博の魅力のひとつであるスタンプラリーの楽しみ方を紹介します。
TEXT&PHOTO 小山田 浩明