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美食の街として知られ、世界中から多くのフーディーが集うサン・セバスティアン。旧市街に軒を連ねるバルの数は100軒以上といわれており、ここでは小皿料理を1~2品(もちろんお酒も1杯)楽しんで次の店へと移動する“バル巡り”が人気です。こちらの記事ではサン・セバスティアンでぜひ訪れたい名店バルと、その店の定番メニューをご紹介。移動範囲も狭いので、お腹のすき具合によっては1日ですべて制覇することも可能です!
まずサン・セバスティアンまでのアクセスですが、日本からバスク地方までの直行便がないため、パリやアムステルダム、インスタンブールなどを経由し、国際空港があるビルバオを目指すルートが最短となります。ビルバオからはレンタカーやバスで所要時間1〜2時間ほど。そのほかスペインの主要都市であるマドリードやバルセロナから鉄道やバス、飛行機(国内線のみサン・セバスティアン空港へのフライトあり)から向かうルートもあります。
まず紹介するのは新市街(Centro)のベルガラ通りに立つ「アントニオ・バル」。看板に「バル・レストラン」と書かれているように、地下には小さなダイニングスペースがあり、そこでのレストランメニューも手が込んでいて非常においしいと評判のお店です。今回はバル巡りがテーマなので、店内1階orテラス席に陣取ります。ここでのマストイートはスペイン料理の超定番、スペイン風オムレツ「トルティージャ」。ぜひこちらをオーダーしてみてください!
「トルティージャなんてどこで食べても同じでしょ」と思ったあなた。正直、私もそう考えていたのです。しかし、いざ食べてみると卵の半熟具合やオリーブオイルの香り、甘くキャラメリゼされた玉ねぎ、ベーコンの塩加減など、トルティージャを構成するすべてが完璧にハーモニー!! ひと皿食べてさくっと次の店へと思っていたのが、まさかのおかわりをしてしまう(そして帰国後はネットでレシピを検索し再現を試みる)ほどハマってしまいました。
ちなみにアントニオ・バルは朝9時から営業しているので、朝ごはんのつもりで行くのも◎(ただし開店直後だと焼き上がりまで少し待つ可能性あり)。トルティージャとコーヒーの組み合わせも朝から非常に贅沢です。
アントニオ・バル
続いては、いよいよ旧市街へ。多くのバルが立ち並ぶフェルミン・カルベトン通りで、ひときわ行列の目立つボルダ・ベリを目指しましょう。バスク地方のバルは、基本的にはガラスケースの中に小皿料理が並び、それを指差しでオーダー(メインは看板やメニューからオーダー)するのが基本ですが、こちらのお店はすべて看板からオーダーするスタイル。看板には常時10〜15種類のフードメニューがスペイン語で並ぶため、初めての人はちょっと緊張するかもしれませんが、名物メニューを事前に把握しておけば大丈夫です。
ここでは8割のお客さんが頼んでいると言っても過言ではないイディアサバル(羊乳)チーズのリゾット「リゾット・デ・プンタレッテ(4.40ユーロ)」をいただきます。リゾットといってもお米ではなく、米粒の形をした小さなプンタレッテというパスタを使っており、濃厚なチーズの香りと、もちもちした食感がクセになるひと皿です。
ちなみにここでも一品だけのつもりでしたが、隣のお客さんがオーダーしていた骨付き豚肉「ケバブ・デ・コスティージャ・デ・セルド(5.50ユーロ)」と、ロブスターのラビオリ「ラビオリ・デ・ランゴスティーノ・イ・ベーコン(5.10ユーロ)」が気になったので追加オーダー。これが期待以上に大当たり! 予定よりだいぶ食べすぎてしまいましたが、それもサン・セバスティアンではご愛嬌。誰かがオーダーしたメニューを指差して「ケ・エス・エスト?(これはなに?)」と聞けば、店員さんも優しく教えてくれるはずです。
ボルダ・ベリ
3店目は同じくフェルミン・カルベトン通りにて、ボルダ・ベリに負けず劣らずにぎわっているバル・スポーツへ。時間によってはあまりの混雑ぶりにカウンターまで辿り着くのもひと苦労。ですがスタッフの方々はとても気さくで、日本人とわかると「ウニ?」「カニ?」と陽気に話しかけ、日本語メニューも持ってきてくれます。
そう、ここでの名物はウニのクリーム「クレマ・デ・エリソ」。絶えずオーダーが入り、カウンターのショーケースに並んでは消え、並んでは消えを繰り返す超人気メニューです。注文を入れると一度厨房に運び込まれ、お皿の上で温めた状態で提供される一品。口に入れた瞬間、しっかりとウニの味覚が感じられるのはもちろんですが、上に乗った魚卵の塩加減もちょうどよく、クリーミー&プチプチした食感が同時に楽しめます。
ここで追加オーダーするのであれば、カニのオーブン焼き「チャングーロ・アル・オルノ(4.60ユーロ)」やフォアグラのソテー「フォア・ア・ラ・プランチャ(5.70ユーロ)」あたりがワインも進んでおすすめです。
バル・スポーツ
お腹もだいぶ膨れてきたところですが、バル巡りはまだまだ続きます。旧市街のサンタ・マリア・デル・コロ大聖堂の目の前にある「アタリ」は、今バスクでももっとも勢いのあるバルのひとつ。近年、同じ建物の上階に「ホテル・アタリ」やカジュアルレストラン「アママ」をオープンさせるなど、手広く展開している人気店です。
バルへと話を戻しましょう。店内はカウンターのほか、テーブル席、そして店外にテラス席もあり、サン・セバスティアンでも屈指の大型バルです。それでも人気ゆえ、テーブル席、テラス席ともに常時混み合っているので、できれば到着時間を計算して予約を入れておくのがベターです。
アタリに関しては「これが名物メニュー!」というより、「何を食べても当たり!」(失礼しました……)なバルで、全体的なレベルの高さに驚かされます。
そんな中でも感動したのが、牛ほほ肉の赤ワイン煮込み「カリジェラ・ギサーダ(7ユーロ)」でした。ナイフを肉の上に置いただけで、すっと入っていくほどの柔らかさ。マッシュポテトがたっぷり添えられボリュームたっぷりのひと皿ですが、肉は噛まなくとも自然と口の中でとろけていくので一瞬で平らげてしまいました。ちなみに、締めにご飯ものが食べたいという方は、季節のライス「アロス・デ・テンポラーダ(6.60ユーロ)」もアタリの人気メニューです。
アタリ
最後はデザートのご紹介! 8月31日通りにあるラ・ビーニャは、言わずと知れたバスクチーズケーキ発祥のお店として知られています。ただ、お店自体はバルとしても営業しており、アンチョビやタコなどクラシックなピンチョス料理もいただくことができるので、あまりバルとバルを移動したくないという方は、ここで小皿料理からデザートまでまとめていただくのもよいでしょう。
焦げ目がついた外側はサクッと、中はとろとろの食感で、クリームチーズの濃厚な味わいは一度食べたら忘れることができません。ほとんどのお客さんがこのチーズケーキを目当てに行列を作っており、イートインとテイクアウトの割合は半分ほどでしょうか(なかにはホールで購入していく地元客も!)。もちろん店内で食べる場合、コーヒーはもちろん、シェリー酒と合わせても相性抜群です。
バル巡りの締めとなるデザートにおすすめしたいラ・ビーニャのチーズケーキですが、21時頃前後に行くと既に売り切れということも珍しくありません。確実に食べたい方は早い時間に立ち寄り、テイクアウトしておいて部屋でいただくのもよいでしょう。
ラ・ビーニャ
TEXT&PHOTO:伊澤慶一
(取材協力:スペイン大使館観光部)