特集「今、こんな旅がしてみたい!」
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2025年、日本映画最大のヒット作『国宝』。吉沢亮や横浜流星をはじめとする俳優陣の熱演や映像美で多くの観客を魅了しました。この映画がきっかけで歌舞伎に興味をもち、歌舞伎座へ足を運ぶ人も増えているそう。歌舞伎の源流をたどると、室町時代に庶民の間で流行した「風流踊り」や、江戸時代初期に京都で流行した出雲の阿国(おくに)による「女歌舞伎」へと行き着きますが、それがどんなものであったのか知る人は多くありません。しかし、その面影が今なお残る伝統芸能が、新潟県柏崎市に伝わる「綾子舞」。映画をきっかけに歌舞伎に注目が集まる今こそ、その原点に触れる旅へ出かけてみませんか?
綾子舞が伝わる新潟県柏崎市鵜川地区女谷は、柏崎市街から南へ16km、黒姫山の麓にあります。この山あいの村に綾子舞が伝わった起源には、ふたつの説があります。地元で広く伝わっているのは、室町時代に越後国守護・上杉房能が家臣の長尾為景に攻められ自刃したのち、房能の妻・綾子が女谷に落ちのび綾子舞を伝えたという説。もうひとつ、北国武太夫という武士が、京都北野神社の巫女・文子の舞を伝えたという説もあります。
綾子舞は、女性が踊る「小歌踊」と、男性が演じる「囃子舞」、「狂言」によって構成され、この3つをまとめて「綾子舞」と称されます(囃子舞と狂言は、江戸中期に京都の狂言師が伝えたとされています)。綾子舞の華といえるのが、小歌踊。女性たちの扇子の手振りと足捌きが見どころの優雅な舞です。現代の歌舞伎とは趣が異なるものの、振袖やだらり帯といった衣装、ユライと呼ばれる赤い布の被り物は、出雲の阿国による女歌舞伎の面影が残っているといわれています。
綾子舞はその芸能史的価値の高さが認められ、1976年に重要無形民俗文化財に指定、さらに2022年にはユネスコの無形文化遺産にも登録されています。この綾子舞を脈々と継承してきたのが女谷集落の「座元」。かつては4つの座元が存在したそうですが、明治時代に入り途絶えてしまった座元もあり、現在は「高原田」と「下野」のふたつの座元がその伝統を伝えています。今はこの座元の下で、地元の中高生たちが日々綾子舞の研鑽を積んでいます。
残念ながら綾子舞はいつも見られるものではありません。もともとは稲の刈り入れが終わったあとに行われる秋祭りに踊られていたもので、かつては黒姫神社の境内で踊られていました。1999年、女谷に綾子舞の継承と後継者の育成を目的として「綾子舞会館」が完成。現在は、ここで毎年9月の第2日曜日に現地公開されています。
綾子舞会館の詳細情報
柏崎市には、伝統芸能の綾子舞のほかにも見どころが点在しています。柏崎市で訪れるべき観光スポットをご紹介!
江戸時代の大庄屋・村山家の庭園。雪国に京都の風情を持ち込むべく作庭されたもので、小堀遠州の手法を取り入れ、池の周りに茶室を配した桂離宮にも似た回遊式庭園となっています。11.5ヘクタールの敷地は「真」、「行」、「草」の3区に分けられています。
「主石賓木」(石が主役で樹木は脇役)の思想に則っており、佐渡の赤玉石と緑の苔のコントラストが美しく、特に雨上がりが色鮮やか。国の名勝庭園に指定されています。
貞観園の詳細情報
佐渡弥彦米山国定公園にも指定されている柏崎市の海岸線・福浦海岸は日本海の絶景が楽しめるエリア。8つの名所があり、「福浦八景」と称されます。
そのひとつが「鴎が鼻」。鴎福浦海岸を一望でき、霊峰・米山や晴れた日には遠くに佐渡島も望めます。ここからの日本海に沈む夕日の美しさは抜群。別名「恋人岬」とも呼ばれ、恋愛成就のパワースポットとして知られています。設置された柵にふたりで鍵をかけると将来幸せに結ばれるそう。
恋人岬(鴎が鼻展望台)の詳細情報
JR信越本線の無人駅。駅のすぐ下が海岸線となっており、海から一番近い駅ともいわれています。プラットフォームからは遮るものなく日本海が広がっており、特に夕日は絶景。『高校教師』(出演:真田広之、桜井幸子:1993年)や『ストロベリー・オンザ・ショートケーキ』(出演:滝沢秀明、深田恭子:2001年)など、ドラマのロケ地としても知られています。
上越妙高駅〜十日町駅間には、車内で新潟の地酒や地元の食材を使った料理が味わえる観光列車(臨時快速)「越乃Shu*Kura」が運行していますが、この青梅川駅も停車駅のひとつとなっています。
青梅川駅の詳細情報
日本海に面した柏崎市は、新潟県有数の鯛の水揚げ量を誇ります。このおいしい鯛をもっと手軽に味わってほしいということで考案されたのが「柏崎鯛茶漬け」。鯛めしの上に鯛の香り揚げ、なめろう(鯛の薬味付きすり身)、いくら、岩のりなどをのせた豪華なお茶漬けです。2013年には「第4回全国ご当地どんぶり選手権」でグランプリを獲得。柏崎市内のレストランなどで味わえます。
推薦者:松岡宏大(地球の歩き方新潟編 編集担当)