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「静岡といえばお茶」。そう聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、茶畑の風景やおみやげの煎茶かもしれません。けれどいま静岡では、“お茶を飲む”だけでなく、“お茶の時間そのものを楽しむ”体験が広がっています。
駿府城公園内・紅葉山庭園の茶室で体験する点茶と、老舗茶問屋が手がけるお茶カフェ「雅正庵」で提供される「するがヌーン茶(ティー)」。伝統と新しさが共存する、ふたつのお茶スポットを訪ねました。
訪れたのは、駿府城公園の一角に広がる「紅葉山庭園茶室」。
庭園の奥には美しい茶室があり、点茶(てんちゃ)の体験ができます。多くの人にとって、お茶を点てる体験は初めてかと思いますが、ご安心を。まずは先生がお手本となってお茶の点て方を教えてくれます。ひととおり説明を聞いたら、いよいよ本番!
「本来はこういった作法ですが、今日は楽しんでいただくのがいちばん」と、正式な方法を示しつつ、初心者でも真似しやすい方法を教えてくれるので、茶道の一連の流れを学びながら、自分の手でゆっくりと体験できます。
そうして教えてもらいながら点てたお茶がこちら。
筆者が点てたお茶(左の画像)は大きな泡ができており、仕上がりにムラがあります。一方で先生の点てたお茶(右の画像)は均一に混ぜられており、ふんわりとした仕上がり。こころなしか緑色も鮮やかに見えます。
同じ道具を使って、同じように混ぜたはずなのに、ここまで仕上がりに違いが出るとは!
伝統技術の深さとプロの技の美しさに圧倒されました。
この日供されたお茶は「安倍の花」。苦味がまろやかで飲みやすく、抹茶の香りもしっかりと感じられる、バランスが心地よい味わいでした。
静岡といえば緑茶や抹茶などのお茶のイメージがありますが、実は静岡で本格的な抹茶づくりが進んだのは比較的近年のことだそうです。ここ数年でどんどんレベルが上がっているとのお話もあり、静岡茶の進化に今後も期待がふくらみます。
取材時の11月のお菓子は、色づく秋の山を彷彿とさせる「秋の嶺」。栗と羊羹が重なった一品で、羊羹はしっとり、小豆の風味がすっと広がります。お菓子は季節によって変わるそうなので、お楽しみに!
お茶はもちろん、茶室から見えるお庭や、日が燦々と差し込む廊下にできる影の形、欄間の細やかな細工など、部屋からの景色や内装も楽しむことができます。
このように美しく職人技が光る茶室、気軽に入りづらいように感じてしまいますが、なんと服装はカジュアルでOK(靴下を履いてくることだけ、お忘れなく!)。茶室だけの利用もできます。
肩肘張らずに体験できるのに、きちんとした技術や工芸の美しさにも触れられる……そんな絶妙な距離感が魅力です。
紅葉山庭園があるのは、駿府城公園の一角。「紅葉山庭園」という名前も、かつて徳川家康の本丸にあった庭園の名に由来しており、格式ある名を受け継ぎながらも、どこか親しみやすい庭園です。
四季折々の草花はもちろん楽しみのひとつですが、特に注目してほしいのは、静岡県の名所を再現した四つの庭。約3,000坪の敷地に、静岡の名所をぎゅっと凝縮したような景観が広がり、歩くだけで“静岡の旅路”をたどっているような気持ちになります。
たとえば、「山里の庭」は、富士山と茶畑をイメージした山の景。サツキを等高線のように植え、茶畑の段々を表したという繊細な庭づくりです。
そして「海の庭」は、中央の池で“駿河の海”を表現した海の景。対岸の白い岩は、世界遺産・三保松原の白砂を思わせ、右手の岸は伊豆半島、中央に配された岩は、「伊豆七島をぎゅっとまとめた」という遊び心ある設計になっています。
このように、まるでミニチュアの絶景を覗き込むような感覚を楽しめるのが、「紅葉山庭園」の魅力のひとつです。
静岡の風景と、お茶の文化をやさしく味わう贅沢なひと時。観光の途中にひと息つくにも、じっくり時間を過ごすにもぴったりの癒しスポットです。
「静岡といえばお茶」。しかし実は、“お茶を主役にした体験”ができる場は、まだ多くありません。その現状を変えようと生まれたのが「するがヌーン茶(ティー)」です。
「するがヌーン茶」とは2種類以上の静岡茶と、スイーツを組み合わせたアフタヌーンティーのこと。するが地域(静岡県中部)では各エリアで気候風土に適したお茶づくりが行われているため、産地の違いによるお茶の魅力や、高い合組技術による味わいの違いを楽しめるようにという目的で2022年から企画が始まり、地元でもファンが増加中なのだそう。3回目の企画となる今回は2025年11月1日~2026年2月28日を開催期間とし、32店舗が「するがヌーン茶」のメニューを提供しています。
そのなかのひとつ、静岡市の「雅正庵」では、和菓子、洋菓子、そしてしょっぱい系のセイボリーもお茶でできた、“本気の抹茶づかい”が光るラインナップの「するがヌーン茶」を楽しむことができます。
雅正庵は、茶問屋「小柳津清一商店」直営のお茶カフェです。半円の美しいトレイに載せられて登場したのは、雅正庵のするがヌーン茶メニューである「アフタヌーンティー プレミアム雅」。雅正庵の「雅」の名を冠するだけあり、圧倒的な上品さを感じさせてくれます。
12個のお品書きの中から、特に印象的なものを紹介します。
一つ目は、自分で作るモナカサンド。皮の軽やかな香ばしさに、好みの餡やクリームを合わせるワクワク感も楽しめます。「ただ食べるだけでなく、体験を楽しんでほしい」という思いからうまれたメニューです。
そして、雅正庵の人気No.1スイーツである『鞠福』の「濃い抹茶」味。鞠福はカフェに併設の店舗でも購入ができるので、気に入ったら自宅用に買うことも可能です。
抹茶モンブランは、タルトにしのばせた爽やかな柚子ジャムがアクセントになり、食べ飽きないおいしさ。抹茶パウンドケーキは、「雅正庵史上、一番抹茶を使った」という渾身の一品。深くて濃厚な抹茶の味わいの虜になること必至です。
また、セイボリー系も侮れません。
抹茶パスタのボロネーゼ、抹茶ガーリックトースト、さらに抹茶の風味が最も引き立つ配合で仕上げた 抹茶ポタージュ まで。「抹茶」という素材の引き出しの多さに驚かされます。
アフタヌーンティーのクライマックスには “自分で点てる抹茶”。さまざまな抹茶メニューを楽しんだ締めくくりに、本物のお抹茶をいただくのは趣があります。
他にも、苺ブリュレと抹茶わらび餅、抹茶ティラミスに抹茶ソフトクリームなど、豊富なラインナップ。抹茶づくしであるにもかかわらず、和洋のメニューであるからか、まったく飽きがこないのが不思議です。
ペアリングで提供されるのは、『静の誉』。「安価なお茶では2煎目が限界。でもこれは3煎目でも味が落ちない」と語られるほどの実力派です。
2026年1月5日(月)~3月31日(火)の期間限定で、抹茶と苺のアフタヌーンティーメニューも実施!こちらは静岡県焼津市で1979年に創業した、地元で愛される菓子屋ミラベルとのコラボスイーツです。
抹茶ティラミスや抹茶モンブランなど、「プレミアム雅」の抹茶スイーツに苺がのっているほか、ブロック型のバタークリームケーキ「抹茶と苺のダミエ」は、このコラボでしか食べられないメニュー!そしてペアリングのお茶が和紅茶になります。
静岡の老舗お菓子屋のスイーツも一緒に味わえる嬉しいコラボ。期間限定なので、この時期に行かれる方は要チェックです。
静岡の“お茶の新名所”として注目を集める、紅葉山庭園の茶室と、雅正庵の「するがヌーン茶(ティー)」。抹茶を点てる所作や、丁寧につくられた一杯と向き合う時間は、忙しい日常からそっと心を切り離してくれます。観光の合間にひと息つきたいときも、静岡らしい体験を深く味わいたいときも。次の静岡旅では、「お茶の時間」を目的にしてみてはいかがでしょうか。
TEXT&PHOTO : 奥津結香