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新潟県は山脈と日本海に囲まれ、海側から吹く冬の季節風が山々にぶつかる独特の地形と気候を持つ地域です。本記事では新潟県に受け継がれてきた「豊かさ」の理由や2025年に決定した観光ブランドロゴ、そしてその豊かさを体現する食の企画「新潟ガストロノミーアワード」について紹介します。
国境の長いトンネルを越えると雪国であった──(川端康成『雪国』)。新潟県は、文豪のこの名文でも広く知られるように豊富な降雪があり、雪解け水が川となって肥沃な水田地帯、里山を形成しています。山や里山からの養分を含んだ水が日本海に運ばれ、豊かな食や独自の産業が生まれました。
こうした自然の循環こそが、新潟の“豊かさ”の源です。
新潟県は2025年7月25日、新たな観光ブランドロゴを発表しました。県民投票を経て決定したロゴは、新潟の根源的価値である「大地と雪の恩恵」を表現。「新潟がつむいできたもの」として、2本の糸を織り上げるように新潟の風景を描いています。山々に降る雪が雪解け水となり、肥沃な大地や豊かな海を育み、食や産業、人々の営みへとつながる循環を象徴しています。雪の水色、山や田の緑と黄金、水の青やエメラルドグリーンなど、多彩な色が織りなすデザインが特徴。新潟が旅人に約束する“豊かさ”を体現するロゴとして、新潟観光のブランディングに活用されています。
その豊かさを最も実感できるのが、新潟の食でしょう。「魚沼コシヒカリ」で知られるお米や日本酒は、その代表格。山菜・根菜、伝統野菜、芋類、蕎麦、そして日本海で取れる魚介類といった食材も豊富。新潟の人々は、自然を生かし雪と共生しながら、地域に根ざした農水産物の生産に取り組んできました。新潟の食文化は、自然と気候、人々の知恵と技の調和がもたらした独自のものです。
多様な歴史と文化、豊かな自然に恵まれた新潟は、まさに「ガストロノミー※」に取り組む先進県です。新潟が考える食体験は高級料理だけではなく、地域の暮らし・文化・観光と結びついたもの。その思いの具体的な取り組みとして「新潟ガストロノミーアワード」が始まりました。
ガストロノミーとは:“美食学”とも訳される概念で、料理と文化の関係性をひもとく考え方です。単に「おいしい」にとどまらず、食を通して地域の風土や歴史、人々の営みまで感じ取る体験を意味します。
米どころとして名高く、海・山・里それぞれの恵みに支えられてきた新潟県。その豊かな食材が注目されてきましたが、いま焦点が当たっているのは、その魅力を引き出す「数々のレストラン/飲食店」の存在です。地域の風土や歴史をどう料理や商品に表現するのか――。その挑戦を顕彰し、広く伝える取り組みが「新潟ガストロノミーアワード」です。飲食店や宿泊施設、酒蔵、食品事業者など、新潟の食を支える人々を発掘し、その活動を表彰・発信しています。
2026年で3回目の継続開催となる本アワードは、料理のおいしさやレストランのクオリティだけを評価するものではありません。地域の食や食に携わる関連産業との連携・取り組み、サステナビリティへの姿勢、そして作り手の哲学までを含めて総合的に審査します。自薦・他薦による応募の中から、県内外の食の評論家や美食家、県外シェフなどで構成される審査員が厳正な審査を行い、受賞者を決定します。
重視されるのは、一過性の話題性ではなく、地域に根差した継続的な実践です。食に携わる人々の姿勢や挑戦を可視化し、県内外へ発信していくことによって、新潟のブランド価値を具体的な物語として伝えていく――それがこのアワードの本質なのです。
新潟ガストロノミーアワード 総合プロデューサーは、岩佐十良さん(いわさとおる/クリエイティブディレクター・編集者)。岩佐さんはこう述べています。
「新潟を含めた日本海側は、明治中期まで、まさに“表日本”でした。なかでも函館、横浜、神戸、長崎とともに開港五港であった新潟には、国内外から質の高い文化が流入しました。新潟には本来の日本文化、そして食文化が、タイムカプセルのごとく封印されていたのです。作り手と食べ手、そして生産者で大きな輪を作り、“食”による地域経済循環を目指しましょう」
審査員長の中村孝則さん(美食評論家・コラムニスト)は、以下のようにコメント。
「新潟県は、日本を象徴する米どころであり、日本海の豊穣な海の幸そして、名峰を多数有する山の幸はもちろん、雪国の発酵食品からユニークな鮭の保存食まで、新潟県でしか味わえない固有の食文化は数知れません。加えて酒の文化圏であり、ひとりあたりの日本酒の消費量は、上位を誇っています。近年は秀逸な日本ワインの産地としても注目されています。なにより若手料理人たちによる、すばらしいレストランの数々には、舌をまくはずでしょう。スキーリゾートや個性豊かな温泉郷も揃っていながら東京から近距離にある、というのも見落としがちな利点です」
過去の受賞者として、2024年度 若手シェフ部門30 大賞の受賞者を紹介します。
O-35(35歳以上)部門大賞【審査員コメント(抜粋)】
燕三条駅からタクシーで20分ほどの店舗は、遠くに弥彦山を望む美しい田園地域の中にある。モダンなデザイン設計の店内は、10席ほどの大きなカウンターのほか、個室席もあり居心地がいい。料理の技術や味付けのレベルは高く安定感もあり、カウンターでの居心地の良さにもつながっている。食材のほとんどは新潟県産を使う。大口れんこんや寄居かぶなどの地元伝統野菜など、ここでしか味わえない味覚に出会えるのはうれしい。また、魚沼の名水で養殖されているスッポンを、新潟名物のかんずりでマリネして唐揚げにするなど、創意に富む。提供される地酒は厳選され、料理を引き立てる。国内外の人に自信をもってすすめられる店である。
■公式Instagram
https://www.instagram.com/nihonryouri_uoyuki/
U-35(35歳未満)部門大賞【審査員コメント(抜粋)】
新潟市の西堀通にある、シェフのミドルミス怜と、サービスマネージャーの齊藤陽介が、2023年6月にオープンさせたばかりのレストラン。店内はこぢんまりしているものの、カウンターと客席と調理台が一体となり、自作の薪台のぬくもり感もいい。料理は、9品のコースのみで、薪焼きを駆使した料理を織り込み、新潟県の豊穣な食材を使って、温度帯の緩急も多彩な味覚表現を試みる。齊藤のドリンク・ペアリングも楽しく、二人の息のあったもてなしも含め、ポテンシャルを存分に感じられる。季節ごとに味わいたいと思わせる余韻と色気のある店である。
■公式Instagram
https://www.instagram.com/saison_niigata/
そして今回は、どんな“新潟の一皿”が選ばれるのか? 2026年の新潟ガストロノミーアワードは近日発表。3月13日に新潟市内で授賞式が開催される予定です。発表後には、本記事の更新により結果を紹介・発信します。
新潟県では、村上・新発田/新潟・阿賀/弥彦・燕三条/長岡・柏崎/湯沢・魚沼/妙高・上越・糸魚川/佐渡、の7つのエリアでガストロノミーが楽しめます。
食事をするときに食材の生産現場やその料理の生まれた背景を知ることで、同時にその土地の風土や歴史まで味わうことができます。また、それが人々=生産者やその土地の歴史文化を尊重することにもつながるはずです。
これからも進化し続ける、“食の王国”新潟のガストロノミーを楽しみに、新潟を訪れてみてはいかがでしょうか。