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ニューヨークのベスト・サンドイッチ4選!現地特派員が食べ歩いて厳選
2024.1.22
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物価が恐ろしく高くなっているマンハッタン。安くておいしいものが食べたいのなら、チャイナタウン(中華街)は欠かせません。現在、観光客もほぼコロナ渦前と同様に戻ってきていますが、コロナ発生直後は感染拡大の不安や、ヘイトクライムによりチャイナタウンはゴーストタウンになりました。なじみ客に別れの挨拶の張り紙をしてシャッターを下ろしてしまった店も少なくありません。コロナ禍以来、ニューヨーク市では4500以上のレストランやバーが閉鎖された(※)といわれています。今回はコロナ渦を生き残った、安価でおいしいメニューを提供している店を紹介します。旅行ガイドブックやウェブサイトに色々な店舗情報が掲載されていますが、ニューヨーク在住の筆者が実際に食べ歩いて「これはおいしい!」「しかもニューヨークじゃありえないくらい安い!」と思った店だけを紹介します。見た目は地味だったり、入るのに勇気がいる外観だったりしますが、訪れてみれば利用客でいっぱい、至福の味が待っていますよ。
目次
ニューヨークのチャイナタウンは足を踏み込むのに勇気がいる店もありますが、この「福州味中味家乡风味」もそのひとつ。マンハッタン・ブリッジの高架下にある、ほとんどテナントが入っていない寂れた中華系モールの地階にあります。ひと気がないモールを階段で下りていって、店が営業しているのを見ると「あ、まだやっている」とホッとします。
店名は「最もおいしい福建省福州市の郷土料理レストラン」を意味し、コロナ禍以前は約100種類のメニューがあったそうです。コロナ禍でチャイナタウンが大打撃を受けたあと、生き残るために現在の肉まんや水餃子など7品目の軽食メニューに絞りました。
オーダー窓口の横に貼ってあるメニューを見て、値段の安さにびっくり。小ぶりな肉まんが6個で4.5ドル、水餃子が8個で4ドル。テナント料が高騰しているチャイナタウンで、どうやってこの値段でやっていけるのか不思議です。
熟練のおばちゃんたちが作る手作りの肉まん。待っている間にあたりを眺めていると、小麦粉の業務用特大袋がありました。肉まんの味の決め手となるおいしい皮は、手作りだそうです。
オーダーごとに蒸してくれるので、いつ頼んでもできたて。粉物(小麦粉)でできているものは時間の経過とともに味が落ちるので、作り置きしないのが味を保つ秘訣。
有名店の一部では、事前に作り置きして客の着席と同時に人気の定番料理を出すところがありますが、ここは客のことを第一に考えて提供してくれます。
熱々の肉まん。小ぶりなので、女性や子供がかぶりつくのにちょうどよいサイズ。皮がむっちりして甘いのが印象的。中身もたっぷり詰まっており、味付けもよいです。1日に約3000個も作る肉まんは、長い時間をかけてレシピを完成させたそうです。
8個入りの水餃子。固くて厚い皮の餃子が多い中華系で、つるりとした食感とほどよい厚さの皮がうれしい。みっちりと中身が詰まった水餃子は肉まんに負けず美味。添えてくれる中国醤油ソースをかけて食べましょう。
入りにくい場所に気おくれしないで、ぜひ肉まんと水餃子を味わってください。
【在住者の本音コメント】
購入したもの:肉まん 6個 4.5ドル(税込)
水餃子 8個 4ドル(税込)
価格:$ ニューヨークではありえない安さ
実食評価:★★★★★(星5)
星5の理由:皮から手作りの肉まんは「ニューヨークのベスト肉まん」の称号を授けたいほど。ほとんどのテナントが出てしまっている中華系モールで、いつまで営業できるのか気になります。
現在は3代目が家業を継ぐ、3世代にわたって家族経営の「新金興 カムヒン・コーヒーショップ」。チャイナタウンで最も観光客が降りる地下鉄駅キャナルストリート(Canal Street)から徒歩2〜3分ほどで、アクセスがよい場所にあります。
知る人ぞ知るスポンジケーキの名店で、自分たちだけで味を守るチャイナタウンにおいてラテン系スタッフを雇用している珍しい店。筆者も、ずいぶん前に訪れたことがありました。
久しぶりに訪れてみると、店内は広くなり中で飲食もできるようになっていました。
種類はオリジナル(プレーン)のほかに、日替わりの「マンゴー」「チョコチップ」「バタースコッチ」「緑茶」などが増えました。以前はオリジナルのスポンジケーキだけを売る店でしたが、コーヒーやミルクティーも注文でき、その場でスポンジケーキを味わうことができます。
一般的にイメージするスポンジケーキに比べて地味な見た目ですが、油断するべからず。予想外のおいしさに衝撃を受けますよ。
一番おいしいのはシンプルなオリジナルですが、チョコチップもおすすめ。中にチョコチップがいっぱい入っています。
たまに販売される、バタースコッチも好きです。
見た目が地味なのであまり期待せずにいましたが(失礼)、かぶりつくとやわらかいながらも弾力がある生地はほどよい甘さで、何個でも食べたくなる至福の味。何度買っても飽きることなく、毎回さらにおいしくなっているような気さえします。
購入するとき、店のスタッフに「いつもおいしいね」と伝えると、「何も特別なことはしてないんだよ」と謙遜していましたが、ロングセラーのおいしさには何か秘密がありそうですよ。
【在住者の本音コメント】
購入したもの:スポンジケーキ(オリジナル) 1個 1ドル(税込)
スポンジケーキ(チョコチップ) 1個 1.25ドル(税込)
スポンジケーキ(バタースコッチ) 1個 1.25ドル(税込)
価格:$ ニューヨークではありえない安さ
実食評価:★★★★★(星5)
星5の理由:クオリティが安定しており、いつも裏切らないおいしさ。いろいろな味を試した結果、オリジナル(プレーン)とチョコチップ、バタースコッチがお気に入りです。
1ダース(12個)買うと割引になるので、日本へのおみやげにもどうぞ。味が落ちない新鮮なうちに食べてください。
チャイナタウンの名店は、観光客で混雑する通りにはなく、観光の中心地から離れたディープな場所にあります。チャイナタウン最強のチャーシュー丼が食べられる「華豊快餐店」もそのうちのひとつ。
こちらも長く続いている店で、行列のできる店として有名。
筆者が通っていた頃の店主は先代(トングを持った後ろ姿)で、現在は後継者(ご子息だと思われる)のフォローをしています。
ごはんの上に湯がいたキャベツをのせ、タレの染みたチャーシューを目の前でカットしてのせてくれます。先代は寡黙ながらパフォーマンスが上手で、注文ごとにチャーシューを切り、チャーシューをこれでもかと山盛りにして、ギューギューな状態で絶妙に蓋をするのにうっとりと見惚れたものです。
写真は、小サイズで5.5ドル(このメニューだけ、5ドルを50セントオーバーしています)。タレの染みたチャーシュー、ごはんとの間を取りもつキャベツとの相性が抜群です。
ずっしりと重いので、自宅で重さを確認したら500g以上ありました。ボリュームがあって、筆者は一度では食べきれませんでした。お気に入りはチャーシュー(ポーク)ですが、チキンやダックもあります。
ニューヨークの有名レストラン「ジャン・ジョルジュ」の料理人たちもお気に入りのランチだったという、保証付きのおいしさとボリュームです。
参照:The 25 Essential Dishes to Eat in New York City The New York Times Dec. 17, 2021
Updated Oct. 24, 2022
【在住者の本音コメント】
購入したもの:チャーシュー(ローストポーク)丼 小サイズ 5.50ドル(税込)
価格:$ ニューヨークではありえない安さ
実食評価:★★★★★(星5)
星5の理由:甘辛いタレがたっぷりかったチャーシューとご飯の間に敷いたキャベツがよくあう。小サイズでもボリューム満点。冷めると米の味が落ちるので、なるべく早く食べることをおすすめします。
前述のチャーシュー丼「華豊快餐店」とは、サラ D. ルーズベルト・パークを挟んで反対側にあります。この付近は激安グルメ店の宝庫で、以下の「ニューヨークのベスト・サンドイッチ4選!現地特派員が食べ歩いて厳選」で紹介した北京ダックサンドイッチの「ヴァネッサズ・ダンプリング・ハウス」も近くです。
公園内はホームレスの方がいるなど、あまり治安がよいとはいえないので、中には入らない方がよいでしょう。
メニューを眺めると、いずれも安いです。
オーダーは店内奥にあるレジで行います。グーグルレビューによると、人気メニューは4Aの豚とニラの水餃子と6のピーナッツバターソースの麺。初めて訪れたので、そのメニューをオーダーしてみました。
ランチ時は混み合うので、早い時間に出かけました。セルフサービスの店内はまだ利用客も少なく、店内は綺麗に清掃済み。レジはテキパキと早く、オーダーしたら番号が呼ばれるまで待ちます。職場の同僚のランチを代表で買いに来たのか、5〜6人前の持ち帰り用を受け取っている人もいました。
そこまで期待しないで食べたら、びっくりするほどおいしかった豚とニラの水餃子。皮のツルツルさと薄さ、肉あんのおいしさ、全てのバランスがよく心の中で「NYベスト水餃子」の称号を進呈したほど。中国醤油と店オリジナルのチリオイルをかけて食べるとさらにおいしくなりますよ。
日本人には馴染みがない、ピーナッツバターソースのヌードル。中華系の飲食店では軽食メニューとしてよくあるようです。筆者も今回初めて知りました。
パンに塗るピーナッツバターを使った麺類というとギョッとしますが、甘くはありません。筆者は食べてみてゴマだれを思い浮かべました。日本ではそばやうどんをゴマだれで食べることもありますが、この麺もゴマのコクと近いです。もしかすると好き嫌いが分かれるかもしれませんが、不思議とあとからまた食べたくなる味です。一度は試す価値あり。
ニューヨーク・マンハッタンで、この価格で食事ができる店があることに驚き。しかも、味がきちんとしています。チャイナタウン最強のコスパ店といえるでしょう。
【在住者の本音コメント】
購入したもの:豚とニラの水餃子 6個 3ドル(税込)
ピーナッツ麺 3ドル(税込)
価格:$ ニューヨークではありえない安さ
実食評価:★★★★★(星5)
星5の理由:筆者の心の中で「NYベスト水餃子」の称号を進呈! この低価格でこのクオリティはありがたい。サービスは素早く、店内は清掃されきれいなので、できたてを店内で食べるのもよい(セルフサービスのためチップはかからない)。
チャイナタウンでは、エッグタルト(中国語で「蛋撻」)は人気のあるスイーツ。どこのパン屋(中国語で「餅屋」)でも売っていますが、ここはという店はなかなかありません。筆者のお気に入りだった店はコロナ禍以降味が変わってしまい、おいしい店を探していた時に見つけたのが「ハーパース・ブレッドハウス」。
焼きあがったばかりの新鮮なエッグタルトが、山盛り並んでいます。パイ皮はサクサクで、カスタードは甘さ控えめ。2〜3口ほどで食べられるサイズもよく、いくつでも食べられそう。
こんがり焦げ目がついたポルトガル風タルトも美味。
一緒に並んでいたココナッツタルトも目を引きました。こちらも2種類のエッグタルトに劣らずおいしいので、おすすめ。
【在住者の本音コメント】
購入したもの:エッグタルト 1個 1.25ドル(税込)
ポルトガル風タルト 1個 1.25ドル(税込)
ココナッツタルト 1個 1.50ドル(税込)
肉でんぶ(乾燥したポーク)のパン 1個 1.75ドル(税込)
玉子巻き肉でんぶ(乾燥したポーク)のパン 1個 1.50ドル(税込)
価格:$ 安い
実食評価:★★★★★(星5 満点)
星5の理由:あれこれ買っても10ドルでお釣りがくるコストパフォーマンスのよさ。パンやおにぎりの種類が豊富で、目移りするほど。タルトがベストで、3種類買うのをおすすめします。
パンや胡麻団子などいろいろと買ってみましたが、パン生地はイマイチだと感じました。この店ではタルトに集中した方がよさそう。次回は日本人の発想にはない具のおにぎりを試してみたいです。
外から一見すると何の店かわからないので、観光客が立ち寄ることはまずないであろう「46ベーカリー」。ベーカリーといってもパン屋さんではなく、伝統的な広東省スタイルの軽食を販売しており、人気商品は豆腐とちまきです。
チャイナタウンでは、日本のおぼろ豆腐のような柔らかい豆腐を「豆腐プディング」と呼び、甘いシロップをかけデザートとして食べます。甘い豆腐に抵抗がある方は、冷奴のように醤油をかけて食べてみてください。
こちらの店の豆腐はひと口食べると、大豆のよい香りが口いっぱいに広がり、新鮮でやさしい味が身体を癒します。黒糖生姜のシロップもレベルが高く、一つひとつに手抜きがありません。
「中華は油っこい」と思い込みがくつがえされ、「医食同源」という言葉が思い浮かびます。アメリカのピザやハンバーガーで胃がもたれたら、胃腸を休めるためにぜひ食べたい味です。
人気商品のちまきは3種類ありました。ずっしりと重いほど、中身が詰まっています。
ちまきは注意を払って作っているのがわかる、繊細な味です。ほんのり塩味がするもち米と、チャーシューの味加減、柔らかいピーナッツが絶妙のバランス。失礼ではありますが、この地味な外観の店にこんなおいしいものがあるとは、とびっくりしました。
この小さな店はコロナ禍の折、2021年4 月までに近隣の低所得住民に7万食の食事を提供しています。
【在住者の本音コメント】
購入したもの:豆腐プディング 1個 3ドル(税込)
ちまき(豚肉、チャイニーズソーセージ、ピーナツ) 1個 3.5ドル(税込)
価格:$ 安い
実食評価:★★★★★(星5 満点)
星5の理由:素材を活かした味で、完成度が高い。味のバランスが計算されており絶品。女性スタッフの接客が感じよく、英語も堪能(チャイナタウンでは一般的にぶっきらぼうな応対が多い)。
コロナの感染率が世界で最も高かったニューヨーク市では、アジア系に対するヘイトクライムもあり、最も回復が遅かったのがチャイナタウンでした。今回ご紹介した6店の多くが一時はシャッターを下ろし、苦境を乗り越えて再開しています。ニューヨークらしい派手さもおしゃれさもありませんが、インフレのニューヨークでは庶民にありがたい安価で、誠実においしいものを提供してくれる名店ばかり。手を抜くことなく味を守っているのが感じられ、B級グルメといっても味はA級。それぞれ客の顔を見てから肉まんを蒸し、チャーシューをカットし、温かい豆腐をすくってくれました。作り置きではなく、一人ひとりの客に向き合って、おいしいものをおいしい状態で出してくれたのです。ぜひ、ニューヨークへいらしたら足を延ばしてくださいね。
なお、チャイナタウンの安価な店の支払いは、現金のみ(クレジットカード不可)が多いので、現金を用意してお出かけください。
TEXT・PHOTO:ニューヨーク特派員 青山 沙羅
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監修:地球の歩き方
※掲載している値段は2023年4月時点の情報です。価格や商品構成などは変更になる場合がありますので、事前に必ず公式サイトで最新情報をご確認ください。