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知らない土地を訪れるのはいつも楽しいものですが、そこが思っていたよりステキな場所だとなおさら楽しくなりますね。先日初めてスペイン北東部の町レウスを訪れ、短いながらも思い出深いひと時を過ごすことができたので、今回は日本のガイドブックにもほとんど顔を出さないレウスについてお話したいと思います。
レウス、と聞いてもどこにあるのかわからない人がほとんどでしょう。でも、ガウディに詳しい人なら知ってるかも。そう、あのモデルニスモの偉大な建築家アントニ・ガウディが生まれた町なのです。バルセロナからは車で100㎞あまり南西に行ったところに位置し、タラゴナ県の県都タラゴナからは内陸に15㎞弱の距離になります(タラゴナからはローカル電車で20分)。人口はおよそ11万人とそこそこ大きな町です。
18世紀に繊維業と蒸留酒の貿易で町は発展し、19世紀半ばから20世紀にはじめにかけてはカタルーニャではバルセロナに次ぐ第2の都市でした。当時はアメリカ合衆国やイギリス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、フランス、ポルトガルなどの領事館まであったそうです。
ガウディは1852年6月にレウスで生まれ、1873年に建築を学びにバルセロナに行くまでこの町で暮らしたといいます。ガウディがレウスに住んでいる頃は、町は繫栄を極めており、芸術や文化も花開いていました。多感な時期を過ごしたレウスがガウディの創作に与えた影響は計り知れないものだと思います。
ガウディの両親はどちらも銅細工師の家系だったそうです。今も残る生家は母方の所有で、1階には祖父の銅細工工房があったのだか。もともとものづくりの家系の生まれだったのですね。生家はサン・ビセンツ通り4番地(Carrer de Sant Vicenç, 4)に建っていますが、個人所有のため中には入ることができません(ガウディファミリーとは無縁の方が所有されています)。
残念なことにレウスはガウディの生まれ故郷にも関わらず、ガウディの建築物がありません。町にあるミセリコルディア聖堂のファザードのデザインを手がけたそうですが、実現にはいたらなかったとのこと。その代わりに町の中心にはガウディ・センターがあり、展示物や映像を見ながらガウディの一生と作品への理解を深めることができます。
ガウディ・センター(Gaudí Centre)
住所:Plaça del Mercadal 3, Reus
地図:https://maps.app.goo.gl/tC76sqviG8u73G5w5
WEB:https://www.reusturisme.cat/ciutat-de-gaudi/gaudi-centre
開館時間:月~土10:00~14:00、16:00~19:00、但し6月1日~9月30日は10:00~20:00、日祝10:00~14:00
休館日:1月1日、6日、12月25日、26日
入館料:11ユーロ
レウスが栄えた時代はモデルニスモ、いわゆるアール・ヌーボーの時代。現在レウスにはおよそ80のモデルニスモ建築が残っていると言われています。特筆すべきは、バルセロナのカタルーニャ音楽堂やサン・パウ病院をつくったルイス・ドメネク・イ・モンタネールが手掛けたカサ・ナバスとペレ・マタ研究所です。
市役所やガウディ・センターのあるメルカダル広場にあるカサ・ナバスは、20世紀初頭にお金持ちの商人家族の店舗兼住居として建てられました。モデルニスム建築では欧州一内装の保存状態がいい建物で、当時のままだとのこと。外装はと言うと、悲しいことに市民戦争で塔を失っています。ここの一番の見どころはステンドグラスです。
カサ・ナバス(Casa Navàs)
住所:Plaça del Mercadal 5-7, Reus
地図:https://maps.app.goo.gl/pm8KQwKYM4dcswyL7
電話:+34 977 010 670
WEB:https://casanavas.cat/ca/
開館時間:月~金11:00~14:00、16:00~19:00 土11:00–15:00、16:00–20:00 日祝11:00–15:00
ペレ・マタ研究所は19世紀末の精神病院でした。必見すべきは“名誉ある人々のパビリオン”で、ここは富裕層の患者が利用していたそうです。ここにしてもバルセロナのサン・パウ病院にしても、お屋敷のようなつくりであることに驚かされます。
ペレ・マタ研究所(Institut Pere Mata)
住所:Carretera Institut Pere Mata 6, Reus
地図:https://maps.app.goo.gl/VK7T6Kv5X6Ng1c25A
WEB:https://www.reusturisme.cat/joia-modernista/institut-pere-mata
開館時間:土11:00~14:00、16:00~18:00、日祝11:00~14:00(6月1日~9月30日は日祝のみ)
入館料:9ユーロ
ほかにもカサ・シエラ、カサ・マルコ、カサ・バルディなどがあり、毎週土曜日の午前中にはモデルニスム建造物をめぐる有料のガイドツアーが開かれているそうなので、興味がある方は観光案内所にお問い合わせください。
■レウス観光案内所
住所:Plaça del Mercadal 3, Reus
地図:https://maps.app.goo.gl/S2wHmYDP5GKFnups9
電話:+34 977 010 670
メール: infoturisme@reus.cat
WEB:https://www.reusturisme.cat/organitzat/oficines-turisme
営業時間:月~土9:30~14:00、16:00~19:00、日祝10:00~14:00
※ガウディ・センターと同じ建物です
ところで皆さんはベルムーをご存じですか? 食前酒として飲まれる ハーブやスパイス、フルーツなどを漬け込んだワインのことです。赤が主流ですが、白やロゼもあります。ちょうど昨年の今頃ここでベルムーの話を書いていました(https://www.arukikata.co.jp/tokuhain/260510/)。
レウスはベルムーの町としても知られています。最初に書いたように18世紀に繊維業と蒸留酒の貿易で栄え、蒸留酒の相場はロンドンとパリ、そしてレウスで決まっていたほどです。ベルムーの起源はドイツという説があり、その後イタリア北部で食前酒として広まったと言われています。人気に乗じて蒸留酒産業があったレウスでもベルムーを作りはじめ、当時は30もの生産者がいたとのこと。レウスで生まれ育った友人いわく、「できの悪いワインをさばくのに役立ったんだよ」と(笑)。Vermuts Miró(ベルムー・ミロ)、Vermut Yzaguirre(ベルムー・イサギレ)、Vermut Rofes(ベルムー・ロフェス)などなど、今でも昔ながらのベルムーメーカーが生産を続けています。
ヨーロッパらしい旧市街をぶらぶら歩くと、ベルムーを飲みに入りたくなるバルが何軒もありました。小さめのボトルで売っていることもあるので、お土産にもいいですね。レウスでは私も昼食、夕食ともにベルムーから始めました。
レウスへのアクセスはバルセロナからは車で1時間半弱、電車では2時間弱と日帰り可能な立地です。バルセロナ旅行の際は、ぜひガウディの感性を育んだ生まれ故郷を訪ねてみてください。その際はベルムーを飲むことをお忘れなく!