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エストニアの首都タリンにある世界遺産「旧市街」。ここでは毎年冬になるとクリスマスマーケットが開かれます。その起源は非常に古く、1441年にタリン(当時はレヴァル)の市庁舎広場に立てられたクリスマスツリーは「世界で最も古い公共のクリスマスツリー」として記録されています。もちろん今年も市庁舎広場(ラエコヤ広場/Raekoja plats)にも大きなクリスマスツリーが設置され、訪れる人々の心を温めてくれました。
「ヨーロッパ・ベスト・クリスマスマーケット2019(European Best Destinations)」に選ばれたこともあるタリンのクリスマスマーケットには、木製のかわいらしい小屋が立ち並び、グローギ(ホットワイン)や燻製のお肉、ソーセージ、蜂蜜菓子といった食べ物のほか、ニット帽や手袋、木工製品、クリスマスオーナメントなどのクラフトが所狭しと売られていました。
2025年のタリン・クリスマスマーケットは11月22日から12月28日までの全37日間、休みなく毎日開催されました。会場ではアドベントの始まりに合わせ、合唱団によるクリスマスキャロルや民族音楽の演奏、子どもたちによるダンスなど、さまざまなイベントやセレモニーが行われ、ステージプログラムは週末を中心に充実していました。
サンタの家にはサンタクロースがいつもいます(休憩時間等を除く)。1組ずつサンタさんと会えるようになっていて、サンタの家に入るとサンタさんはハグをしてくれ、記念写真を撮ってくれ、ちょっとした会話の後、お菓子をくれます。自然と「サンタさんは本当にいたんだ。やっぱりいたんだね。」という気持ちになると思います。待ち時間は短ければ10分ほど、混雑時には1時間を超えることもあるため、時間に余裕をもって訪れることをおすすめします。
そしてクリスマスの本番は12月25日と26日。日本では24日と25日が最もにぎわいますが、ここエストニアではこの2日間を家族と静かに過ごす人が多く、マーケットも少し落ち着いた雰囲気になります。クリスマスを過ぎると今年最後のメリーゴーランド、今年最後のグローギ、今年最後の記念写真をと人々は名残惜しそうに最後の日々を丁寧に過ごします。
クリスマスマーケットでぜひ見ていただきたいのが、クリスマスツリーのまわりに集まる子どもたちの姿です。子どもたちは家から準備してきた色とりどりのリボンや小さなカードをツリーの枝に結びつけていきます。これはエストニアで親しまれている風習のひとつで、カードには新年の幸せや家族の健康、自分自身の願いごとが書かれています。その様子は日本の七夕を思わせます。願いを心の中に留めるだけでなく、文字という形にして木に託すことは世界のあちこちで行われているのかな?と思いました。
商業的・娯楽的な要素が強いクリスマスマーケットの中、家族に見守られながら子どもたちが枝にカードや手紙を結びつける姿は美しく、見ているこちらまで心が和らぎました。すぐそばでは屋台のにぎやかな声や音楽が響いているにもかかわらず、ツリーの足元には厳かで神聖な空気が流れていて、そこにはエストニアの人々が大切にしてきた「家族」「祈り」「自然」といった価値観が今も静かに息づいているように感じられました。
ヨーロッパ各地で開かれるクリスマスマーケットは国や街ごとに表情が異なり、それぞれに魅力があると思います。その中で私が一番好きなのはタリンのクリスマスマーケットです。にぎわいの中にも静けさがあり、人々の暮らしや価値観が自然な形で感じられるからだと思います。世界遺産の旧市街を舞台に、歴史あるクリスマスツリーを囲み、家族とともに祈りや願いを分かち合う時間は、この街ならではの冬の風景です。
屋台の温かな料理やグローギ、子どもたちの笑顔、ツリーに結ばれた小さな願いごと。そのひとつひとつが、旅人にも優しく寄り添ってくれると思います。穏やかで心を整えられるような時間がここには流れています。来年の冬、ヨーロッパのクリスマスマーケットを訪れる計画があるなら、ぜひタリンをその旅程に加えてみてください。きっと、旅の記憶に静かに深く残る、あたたかい思い出になると思います。