ゾーリンゲンと刃物ミュージアム
刃物メーカーであるツヴィリング・J.A・ヘンケルスが本拠を置くことで有名なゾーリンゲンはケルンとデュッセルドルフからそれぞれ電車1本で20分ほどで行くことができます。
ゾーリンゲンはツヴィリング・J.A・ヘンケルスだけでなく、多くの刃物メーカーを輩出し、中世より刃物の街として発達してきました。もともと中世の頃に農民が武装を始めたのが刃物の街として発展したのが始まりです。
20世紀初頭にはなんと刃物の世界シェア80%を誇りました。しかしその後急速な工業化が進み、ゾーリンゲンは刃物の街としての絶大な力を失っていきました。1970年代にはそれまでの勢いは見る影もなくなっていたのですが、ゾーリンゲンでも工業化が進み、現在は世界シェアの30%をキープしています。
現在ゾーリンゲンではほとんどのメーカーが機械で刃物を作っており、商売あがったりで職を失った職人も多いようです。現在でも職人として刃物を作っている方はメーカーではなく、自営業として活動しています。工業製品としての刃物、手作りとしての刃物、それぞれ顧客が求めるものが違うため、棲み分けはできているようです。
ゾーリンゲンには現在も工業化していない刃物メーカーも存在します。「Windmühle」もそのひとつで、全ての作業を手仕事で行っています。普段「Windmühle」の工場に入ることはできないのですが、テレビ撮影のお手伝いで運よく見学できることがありました。残念ながら個人的な撮影は禁じられていました。
刃付け作業は六畳ほどの部屋に7,8人の若い男性たちが所狭しと行っているのが印象的でした。意外にもいわゆるマイスター然とした長老のような方はいなかったよう思います。また最後のキレ味の調整は違う部屋で行われているのですが、この作業のエキスパートはたった2人しかいないそうです。整えたあとはキレ味を確認するため必ず紙をサッと切っていました。なかなか原始的な方法だなと感心してしまいました。
Windmühleは日本の職人さんとコラボして、日本包丁も出しています。
現在、ゾーリンゲンには鍛冶屋の工房が集まる場所は存在しません。少し鄙びた街というのがゾーリンゲンの印象でしょうか。しかし駅前のセンター街へ行くとゾーリンゲンでしか見られないものが点在しています。円形の石なのですが、周囲に傷がついています。
その昔、刃物を研ぐために使われていたそうです。細かく入った線は刃を当てたあとです。
ゾーリンゲン駅からタクシーで20分ほどのところには刃物ミュージアムがあります。世界最大の刃物博物館で、保蔵する刃物の数は数万にも及ぶそうです。アフリカやペルシア、アジア各国の刃物も陳列される中、日本刀もあります。普段は展示されていませんが、日本の職人による刃物は日野浦司さんのもの一点のみだそうです。
一階に入ってすぐのところにはイランなど近代の刃物が展示されています。一階にはそれ以外に中世の頃の刃物や現在日常生活で使用する刃物を見ることができます。また実際に剣を持つことができるスペースも設けられています。
2階の左手にはいつも特別展があります。また常設展には20世紀初めにアメリカで行われた世界的な展示会で実際に展示したゾーリンゲンの栄華を表したはさみでできたクジャクの展示物を見ることができます。
こんなにたくさんのはさみを一度に見たことはないので、なかなか圧巻です。当時どれだけゾーリンゲンが刃物業界で力を持っていたかを垣間見ることができます。
刃物ミュージアムの裏手には第二次世界大戦で戦火を免れて、現在も18-19世紀のゾーリンゲンを垣間見られるGräfrathというエリアがあります。
ゾーリンゲンはベルギッシャーランドというベルグ家が統括した地の一部で、この鮮やかな緑の窓扉に、ここの地域で取れる石を壁に貼り付けたスタイルはベルギッシャーランド独特のもので、他で見ることはできません。地域によって違う建築物見るのもまた、ドイツの楽しみ方の1つです(ケルンやボンはまた違った領主がいたので、違う建物です)
【営業時間】
火−日:10時〜17時
【入場料】
大人:6ユーロ
子供:3ユーロ
学生:2ユーロ
筆者
ドイツ特派員
マリ・ミュラー
ドイツに約10年在住。
【記載内容について】
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