パリの新スポット「パリ解放博物館」でレジスタンス運動と地下施設を見学しよう

第二次世界大戦のパリ解放から、今年で75年目になりました。
パリが解放された8月25日には、今年もパリ市内では記念イベントがいくつか行われましたが(過去記事「第二次大戦「パリの解放」75年記念パレードが8月25日に開催される」)、その中の1つがパリ解放博物館(パリ解放博物館 - ルクレール将軍博物館 - ジャン・ムーラン博物館)の、モンパルナスからパリ市内ダンフェール・ロシュローへの移転リニューアルオープンです。
8月25日夕方にプレオープン、そして同27日より一般向けの開館がありましたので、早速見学に行ってきました。

場所はダンフェール・ロシュロー広場の中央。カタコンブ・ド・パリ(市営納骨堂)入口の、道路を挟んで向かい側です。なぜ同所でのリニューアルオープンになったかというと、ここにはかつて、ドイツ占領軍に対して展開されたレジスタンス運動の活動家アンリ・ロル・タンギー大佐が、作戦本部とした地下遺構があるためです。
元々、パリの地下には採石跡が地下空間として広がっていました。その一部を利用して、カタコンブになっていたりするのですが、その迷路のように入り組んだその地下空間が、第二次大戦のドイツ占領下においては、ドイツに対抗するための活動場所でした。

ドイツ軍によってパリが陥落したのは1940年6月30日。連合国軍によって、再びパリが解放されるのが1944年8月25日です。ドイツのフランス侵攻後は、独仏休戦協定に基づきフランスの北半分をドイツが、南半分はフィリップ・ペタンを首相とするヴィシー政府(当初の首都はボルドー、後にヴィシー)が治めました。ペタンはドイツと協調していくことで、フランスの地位を確保し続けていこうと考えました。

ちなみに、ドイツ軍がパリでの本部にしたのがル・ムーリス。現在もパラスホテルとしてや、ミシュラン3つ星を獲得しているレストランとしても有名ですね。すぐ隣にはサロン・ド・テのアンジェリーナもあります。そう聞くと、歴史が苦手な人も少し親近感も湧くのではないでしょうか。
一方で、もっと強固にドイツに対して抵抗姿勢を見せたのが、海外へ亡命したシャルル・ド・ゴールなど自由フランス軍であり、パリなどでのレジスタンスでした。フィリップ・ルクレール(フィリップ・ド・オートクロク)やジャン・ムーラン、ロル・タンギーなどは、その中心となった軍人や活動家でした。ドイツに抵抗し、パリの解放を実現したド・ゴールらの名前は、現在ではフランス各地で通りや広場など地名になっています。パリの空の玄関口も"シャルル・ド・ゴール"空港ですね。

パリ解放博物館は、地上階と地下の2層で陳列されており、地上階にはルクレール将軍に関連した展示が中心となっています。ドイツ軍のフランスへの侵攻、ヴィシー政府のことなど、当時の政治的情勢や、市民の生活などを順に追いながら進みます。
当時の物資の配給切符の他に、ドイツ軍兵士が百貨店プランタンで買い物をする写真などもあり、現在のパリとの接点を比べながら見学しても、興味深いです。

続いて階段を降りて地下へ行くと、ジャン・ムーランはじめレジスタンス運動をした活動家たちのことについての説明に入ります。ここにはパリ市内に広がる地下通路の、当時描かれた全体図などもあります。

地下の展示部分を終えると、地上階と地下がつながる吹き抜け部分に至り、そこではパリ解放の様子が展示されています。シャルル・ド・ゴールがパリ解放後のシャンゼリゼ通りで、凱旋パレードをする有名な映像などが流れています。
すべての展示の終わりには、鉄扉が取り付けられた地下空間へつながるスペースがあります。そこがロル・タンギー大佐の司令室への入口です。

ここから100段の階段を使い、地下20mまで下ります。司令室へは自由に出入りできるわけではなく、決められた時間ごとに1回の入場が18人までと人数が決まっているため、混み合う場合は入れないことがあります。

パリとフランスの近現代史をより重層的に知ることができる博物館です。
【データ】
住所:Place Denfert-Rochereau 4 Avenue du Colonel Henri Rol-Tanguy 75014 Paris
開館時間:10〜18時
定休日:月曜
入館料:無料
最寄り駅:地下鉄4、6号線/RER B線Denfert-Rochereau

筆者
フランス特派員
守隨 亨延
パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。
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