サンタ・マリア・デル・カルミネ教会

Santa Maria del Carmine/サンタ マリア デル カルミネ

ルネッサンス美術幕開けの傑作の残る

  • 必見はブランカッチ礼拝堂の三方に描かれた連作フレスコ画。ルネッサンスの到来を告げる作品として、また、絵画史上の傑作。

13世紀の半ばに建設が始められたカルメル会の教会で、フィレンツェゴシックの様式で建てられていたが、18世紀の火災でほとんど消失してしまった。現在の建物はG.ルッジェーリらが設計したバロック様式(1771~75年)の物だ。火災を免れたのは聖具室やコルシーニ礼拝堂などで、なかでもマザッチョのフレスコ画Affreschiで飾られたブランカッチ礼拝堂Cappella Brancacciが残ったのは不幸中の幸いであった。

ルネッサンスの幕開けを告げる作品が残る、ブランカッチ礼拝堂
ルネッサンスの幕開けを告げる作品が残る、ブランカッチ礼拝堂

この礼拝堂は14世紀の末に造られた物で、後のバロック期に幾分手が加えられている。1424年にはマゾリーノにヴォールトとタンパンのフレスコが依頼されたが現存していない。その後マゾリーノがブダペストの宮廷に呼ばれてフィレンツェに不在だったため、彼の友人で若いマザッチョが代わりに壁面の装飾を引き受けることになった(1427年頃)と伝えられている。マザッチョはその翌年にはマゾリーノとともにローマに行き、その地で急死したため、ブランカッチ礼拝堂の装飾は未完成のままに残された。さらには注文主のブランカッチ家自体がコジモ・デ・メディチによってフィレンツェから追放されたため、礼拝堂の壁面は15世紀も後半になって、フィリッピーノ・リッピの手でようやく完成している。3人の画家によって描かれたフレスコ画のうち、マゾリーノとマザッチョの描いた部分を明確に区別するのは難しいところもあるが、この礼拝堂がフィレンツェにおけるルネッサンスの幕開けを告げる重要な作品として、ミケランジェロをはじめとする多くの芸術家に多大な影響を与えたことはよく知られている。

熱心に見学する人たちが多い
熱心に見学する人たちが多い

フレスコ画のテーマは『聖ペテロの生涯』で、祭壇に向かって右の端のマゾリーノによる『原罪』の画面から始まっている。それに相対する左の端上段の画面はマザッチョによる『アダムとイブの楽園追放』Cacciata dal Paradiso Terreste、その隣も彼の手になる『貢の銭』Pagamento del Tributoで、どちらも絵画史上に名を残す名画面である。さらに、祭壇右下の壁面『施しをする聖ペテロ』と左下の『自らの影で病人を癒す聖ペテロ』もマザッチョが描いた物だ。一方、祭壇のすぐ左隣上段の壁面はマゾリーノの『エルサレムで説教する聖ペテロ』である。右側の上段中央には同一壁面の中に、「使徒行伝」からの2場面がマゾリーノとおそらくマザッチョの手で描かれている。その下の壁面にも同様に聖ペテロの行いを描いたふたつの場面があるが、これはフィリッピーノ・リッピの作品だ。リッピは左右両端の下段の壁面に『牢獄の聖ペテロを訪れる聖パウロ』、『天使によって牢から解放される聖ペテロ』をも描いている。左側下段中央にもふたつの場面が描かれているが、そのうち左の『アンティオキアの王子を蘇生させる聖ペテロ』はマザッチョが未完のままに残したため、あとをF.リッピが完成させた。なお、祭壇に飾られた『カルミネの聖母』は13世紀後半の物である。

絵画史上に残る名画面『貢の銭』
絵画史上に残る名画面『貢の銭』
『アダムとイブの楽園追放』
『アダムとイブの楽園追放』
『施しをする聖ペテロ』
『施しをする聖ペテロ』

マザッチョの革新

 「ルネッサンス時代の幕開けを告げる記念碑的作」と呼ばれるブランカッチ礼拝堂。その意味はどこにあるか考えてみよう。
 絵画表現において数々の革新をなし遂げたジョット(1266~1337年)の時代から約1世紀。当時の絵画の主流は、そのジョットの色彩や装飾性に注目して発展してきたシエナ派や、国際ゴシック様式だった。たとえば、G.ダ・ファブリアーノの『三賢王の礼拝』が描かれたのは1423年、マザッチョがブランカッチ礼拝堂で制作を開始する直前のことである。マザッチョがジョットから受け継ぎ発展させたのは、必要な要素をえりすぐることで「描かれる事件」の精神的な緊張と造形的な調和を極限まで追求する、という姿勢だった。後にヴァザーリが書いた『芸術家列伝』では、レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロなどの大家も、若い時にこの礼拝堂に足しげく通ってマザッチョの画面を研究したと述べられているが、このことからも彼の革新がその後のルネッサンス美術にとってどれほど重要であったかがうかがい知れる。

行き方

サント・スピリト教会前の広場を抜け、右にサンタゴスティーノ通りVia Sant'Agostinoを通り、次の目的地のサンタ・マリア・デル・カルミネ教会へ向かおう。道は途中でセッラリ通りVia de' Serragliと交差するが、道を横断してサンタ・モナカ通りVia S. Monacaを進めば大きな広場へいたる。広場左側に建つのが、S.M.デル・カルミネ教会だ。

庶民的なサンタ・マリア・ デル・カルミネ広場界隈

駅やドゥオーモからもやや離れたS.M.デル・カルミネ広場周辺も地元っ子が多い、ちょっと庶民的な界隈だ。対岸のアルノ川沿いには高級ホテルが並ぶが、こちらは職人の工房が多い。高い館が並ぶ中世さながらの路地を歩くのも楽しい。

基本情報

住所
Piazza del Carmine 14
電話番号
055-2382195(切符売り場)
開いている時間
10:00~17:00 ㊐㊗13:00~17:00
閉まっている日
㊋、1/1、1/7、復活祭の㊐、7/16、8/15、12/25
料金
€8、㊏~㊊€10 入口は教会正面右隣
予約電話番号
055-2768224
原則として見学は要予約。予約料は無料。
最終更新 :

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