トルコ共和国大使館・文化広報参事官室
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白い衣装に身を包み、くるくると回り続ける男性たち。イスラム神秘主義の一派、メヴレヴィー教団のセマー儀式です。ユネスコ無形文化遺産に登録されたこの儀式は、毎年12月17日を最終日とする10日間、トルコ国内で盛大に催されます。筆者は2023年12月で750回目を迎えた特別な儀式に参加してきました。今回は参加レポートを通して、王道のトルコ旅から一歩進んだ、イスラム文化に触れられる特別な旅をご提案します!
冒頭で触れたセマー儀式(以下、セマーと表記)とは、イスラム神秘主義(スーフィズム)の一派、メヴレヴィー教団による旋回舞踊の儀式。13世紀に、首都アンカラから約250kmのコンヤという街で教団を設立したメヴラーナ・ジェラーレッディン・ルーミーの教えを表しています。
旋回舞踊という名の通り、セマーでは白い装束を来た踊り手(セマーゼン)が左足を軸にして右足でくるくると回り続けます。この行為は宗教的・精神的な意味合いを持っており、回ることで一種のトランス状態になることによって神との一体感を追求しているのです。また、回転は神(イスラム教の唯一神、アッラー)を象徴するため、半回転は「アッ」、もう半回転は「ラー」を表しています。
右手を上に、左手を下に向けているのは、右手で神からの啓示や導きを受け取り、左手で地上の人々にそれらを与えることを象徴しているからです。
メヴレヴィー教団の設立者、メヴラーナ・ジェラーレッディン・ルーミーは、1207年にベルフ(アフガニスタン北部)で生まれ、1273年にコンヤで亡くなった学者・イスラム神秘主義者です。
逝去してから750年以上経っているにも関わらず、メヴラーナ、またはルーミーという愛称で世界中の人々から愛され続けています。コンヤ市内にあるメヴラーナ博物館にはメヴラーナが眠る棺があり、今でも多くの人々が足を運んでいます。
メヴラーナがこれほど多くの人々に愛されているのには、彼の思想が大きく影響しています。メヴラーナはイスラム神秘主義者でしたが、誰がどんな宗教を信仰し、どんな思想を持っていても平等に助言を与えました。彼が残した数々の詩は今も人々に勇気を与え、多くのアーティスト、たとえば歌手のマドンナも彼がつくった詩に感化され楽曲を制作したといわれています。
メヴラーナは亡くなるとき、神の愛に触れ、そして神と預言者ムハンマドのもとへと還ったといわれていることから、命日の12月17日は「婚礼の夜(shab-i arus)」と呼ばれ、毎年セマーによって祝われているのです。
今回、筆者は2023年12月17日、メヴラーナが亡くなって750回目の命日である特別な日にセマーを見に行くことができました。場所はコンヤ市内のメヴラーナ文化センター。開演時間が近づくにつれ、人がどんどん集まってきます。特別な日だからか、開演前から厳かな雰囲気が漂っていました。
19:00になるとトルコの政府関係者によるスピーチが始まりました。スピーチが終わると神秘的な音楽とともに黒いローブを身にまとった踊り手であるセマーゼンたちが舞台に現れ、会場の空気が変わります。
並び終わると、セマーゼンたちはいっせいに黒のローブを脱ぎ捨てて白い装束姿となります。このローブを脱ぐ行為は、物質的な束縛から解放と霊的な世界へ入り込むことを意味しています。
準備ができると、会場左手のセマーゼンからひとりずつくるくると回転を始めます。会場全体を覆い尽くすセマーゼンたちによる儀式は神秘的な美しさがあり、この独特な世界に引き込まれていきます。
また今回は、会場の指定座席からだけでなく、特別に舞台の端まで降りて目の前で儀式を見ることもできました。近くで見てみると、舞台の上から見た際の美しさとは対照的に、荒々しさと迫力も感じました。セマーゼンたちは神との一体感を追求し、回ることでトランス状態に陥っているので、回りながら声をあげたりうなったりするのです。ずっと見ていると、その独特な雰囲気に飲まれてしまうような感覚に陥りました。
動画で見ても神秘さを感じることができますが、実際に見てみると美しさと圧倒的な迫力を体感でき、感動もひとしおです。セマーを見てみたい! という方は、ぜひコンヤを訪れることをおすすめします。
それでは、セマーを見ることができる場所をご紹介します。メヴレヴィー教団発祥の地であるコンヤから2ヵ所、イスタンブールから1ヵ所ピックアップしています。
また、コンヤ市内にある「パノラマ博物館」ではセマーやメヴレヴィー教団、メヴラーナについて詳しく学ぶことができます。セマーは夜に行われることが多いので、日中にパノラマ美術館に訪れて知識を深めるのもおすすめです。
パノラマ美術館
今回筆者がセマーを見に訪れたメヴラーナ文化センター。2004年に開館したこちらの施設には、収容人数3000人を誇る世界最大のセマーハーネ(セマーを行う場所)があります。12月17日を最終日とする10日間は盛大にセマーが行われますので、ぜひこの期間に訪れてセマーを見てみることをおすすめします。
この期間以外にも、毎週土曜日19:00からセマーが行われています。
コンヤに来たらまずここを訪れるべし!といわれるメヴラーナ博物館。メヴラーナの霊廟として広く知られています。ほかにもセルジューク朝時代、オスマン朝時代の工芸作品やクルアーンの写本、メヴラーナの著作が展示されており見どころがたくさん。建物自体にも歴史的な価値があり、トルコブルーの美しい塔は13世紀末、そのほかの部分は16世紀までに造られました。
こちらでも、6月~8月の間は博物館内の中庭で毎週木曜20:00よりセマーが行われています。2024年2月現在、博物館の入場料は無料なので、ぜひセマー開催時刻に合わせて訪れてみてください。
イスタンブールでもセマーを見ることができます。市内中心部にあるホジャパシャ文化センターは、550年前のオスマン朝時代の浴場をもとにしたユニークな施設です。
こちらでは毎日19:00よりセマーが行われています。こちらのセマーは、儀式というよりもショーといったほうがイメージが近いかもしれません。当日だとチケットが売り切れになる場合があるようですので、見に行く日が決まった段階で事前に購入しておくのがよさそうです。
多くの場合、セマーは神聖な儀式として催されるので、見に行く際は以下の点に注意しましょう。
トルコ国内、特にコンヤではセマー(セマーゼン)をモチーフにした雑貨が多く売られています。セマーを見たら、記念にセマーモチーフのおみやげを購入してみてはいかがでしょうか?
コンヤであれば旧市街に多くのみやげもの屋や雑貨店が並んでいるので、ウィンドウショッピングをしながらおみやげを物色するのがおすすめです。旧市街へ行く時間がないという方は、メヴラーナ博物館の出口近くにある屋台エリアものぞいてみてください。
また、おみやげを買う際は値段交渉をお忘れなく! できる限りまとめて買うのが値引きのポイントです。セマーモチーフのもの以外にも、トルコでどういうおみやげが買えるのか気になる方は以下のサイトで確認してみてくださいね。
イスラム神秘主義、メヴレヴィー教団のセマーについて、歴史や見られるスポット、参加レポートをまとめてみました。セマーを見る場合は、以下のポイントを押さえてみてください。
トルコで観光といえば、イスタンブールのグランドバザールや美しいモスクの数々、カッパドキアでの気球ツアーを思い浮かべる方が多いかもしれません。コンヤは日本人にはあまりなじみがありませんが、イスタンブール以上にイスラム文化が感じられる、素朴で美しい町です。トルコのどのエリアに行こうか迷っている方、2回目以降の旅行を検討している方は、ぜひコンヤ、そしてセマー鑑賞も選択肢に加えてみてください!
2024年2月現在、1ドル:148円、1トルコリラ:約4.9円です。
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