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ウガンダ人はアルコール飲料が大好きです。年間のアルコール摂取量は1人あたり約12リットル/年と言われており、これは文化的類似点の多いブルンジ、ルワンダ、ケニア、タンザニア等と比較しても群を抜いています。地方では家庭内で蒸留酒が醸造されることも多く、法による規制が及ばないため、健康問題をはじめとした多くの弊害も報告されています。当然ながら、お酒を楽しむ際には法を遵守の上、適量を見極める必要があります。
北米やヨーロッパに滞在していると、現地で入手できるビールはよりどりみどりです。余程珍しい国・地域に滞在していない限り「美味しいビールにありつくことができない」といった悩みとは無縁なはずです。「任地でお酒が入手できるのか」という点は、僻地での駐在を命じられた商社マンや筆者のような人道・開発分野で従事する人間にとっては、意外と大きな関心事なのです。
さて、ビールが好きな筆者はウガンダ及び東アフリカ共同体創設3か国(ウガンダ、ケニア、タンザニア)のフラッグシップ・ビールを試飲・比較してみることにしました。
その名の通り、ウガンダを代表するフラッグシップ・ビールです。1950年台にナイル川の源流ジンジャで創業を開始したNile Breweries Ltd(ナイル・ブルワリー社)の主力商品でアルコール分5.6%のクラシックなラガーです。ラベル裏面には”Uganda’s famous international award winning beer, brewed at the source of the great river Nile(国際的賞受賞のウガンダ有数のビール、ナイルの源流で醸造)”と記載があります。
グラスに注ぐと泡立ちが良く、液体は強く黄色みがかって見えます。(ウガンダで製造されている全ての炭酸飲料に言えることではありますが)個体差は見られるものの、比較的しっかりと炭酸を含有しているものが多いのも特徴です。香りは穀物を髣髴とさせる特有の甘味があり、味わいにも一貫性があります。グラスの半分程度は難なくすっきりと喉を通りますが、液体の温度が上がり炭酸が抜けた後は、口内にやや甘味の強い後味が残ります。
名称もコンセプトも独自性がありインパクトは強いですが、日常的に飲むビールとしては、やや甘味が強く、雑味を意識させられる1本かもしれません。
タイプ:ラガー
製造:Nile Breweries Ltd
アルコール分:5.6%
味・香り:爽やかですっきりとした後味のバランスの取れた味わい
East African Breweries Ltd(東アフリカ・ブルワリー社)が手掛けるケニアを代表するビールです。モルト大麦が100%使用されており、長時間低温熟成されているため、クリーミーで滑らかな味わいが楽しめるのが特徴とされています。その名の通りラベルには象のイラストが描かれており、味やアルコール含有量が異なるシリーズが存在します。
実際には、アルコール分5%のラガーにしてはやや味が薄く、人によってはやや物足りなさが感じられるかもしれません。東部アフリカで流通している市販のビールには糖分が添加されているものが多いため、不慣れな外国人にとっては味に違和感を覚えることがありますが、タスカ―・モルトはこの違和感は比較的少ない印象です。
タイプ:ラガー(アメリカン・ラガー)
製造:East African Breweries Ltd
アルコール分:約5%
味・香り:豊かで滑らかで洗練された味わい
タンザニアを代表するビールです。1996年にSerengeti Breweries Ltd(セレンゲティ・ブルワリー社)が製造を開始したばかりの、比較的若い銘柄です。セレンゲティは同国北部のマラ地域及びアルーシャ地域に跨る一帯を指し、セレンゲティ国立公園を含む複数の野生動物保護区があることで知られています。ラベルにも、同国立公園に生息するヒョウの上半身が採用されています。
タスカ―・モルトと同様に、やや味が薄く、炭酸が利いている割にモルトの風味がやや弱いのが印象です。
タイプ:ラガー(ペール・ラガー)
製造:Serengeti Breweries Ltd
アルコール分:4.8%
味・香り:優しいモルトの甘さと穏やかな穀物の風味
主力商品であるラガー自体、それぞれ良く言えば「すっきりとしていて、飲みやすく」、厳しく評価すれば「豊潤さに欠けて物足りない」との評価を下すことができるのですが、各社からはアルコール度数の低い「Lite」版も販売されています。いずれも主力のラガーと比較して、さらに味が薄く泡立ちも乏しいため、軽く1杯飲みたい時やビールが苦手な方向けと言えるかと思います。
味や香りベースで厳正に評価をするならば、いずれのビールも愛飲家にとって虜になる程のものとは言い難いのが現状ですが、自身の常識や普通に当てはまらない飲食物に目がない筆者にとっては素晴らしく貴重で有難い存在です。
そして、観光旅行やサファリの際にいただく1本としては風情もあり、最高の地元産ビールと言えるでしょう。ナイル川をクルーズしながらいただくナイル・スペシャルやセレンゲティ国立公園のゲーム・ドライブでいただくセレンゲティ・ラガーは格別です。忘れられない思い出の一部となることでしょう。
東部アフリカを訪問される際は是非ご賞味ください。
味わいに関する記述は筆者個人の主観です。