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フィルムカメラや「写るんです」、ケーブル付きイヤホンなど、アナログ文化が再注目されている昨今。ニューヨークでも2024 年の春夏頃から、フォトブースが若者を中心に関心を集めており、町角にある人気機種には、常に数組が順番を待つ光景が見られます。デジタル化が加速するなかでも、あえて“古き良き”体験を求める人々のために、2025年10月、あるミュージアムがオープンしました。
「AUTOPHOTO」は、ニューヨークのローカルカルチャーが集まるエリア、ローワーイーストサイドに位置する、フォトブースに特化したミュージアムです。約100年にわたるフォトブースの歴史を展示でたどりながら、実際に当時使用されていたヴィンテージ機種を体験できる没入型スポットとなっています。
館内には、現代では珍しい3枚構成の大判フォーマット紙を使用した「Model 12」(1959年)や、1990年代に登場したポラロイド用インスタントフィルムの「Polaroid」(1993 年)など、年代や撮影技法の異なる7台のフォトブースが設置されています。
来場者は曜日や時間帯にもよりますが、約20〜30 分ほど列に並び、入館後はそれらのフォトブースを自由に撮影できます。1回の撮影につき8〜12ドルの料金はかかりますが、来場者の様子を見る限り、その体験はプライスレスなようです。
ニューヨーク在住の20代2人組に話を聞いてみると、「何枚撮ったか? 偏見を持たないでね・・・」といいながらバッグのなかを見せてくれました。そこには10枚近くの写真が入っており、「まだまだ撮る予定よ」とニコリ。
ほかの来場者も1 枚だけ撮るのではなく、平均して3〜4 枚以上を撮影しており、7 台のフォトブースを撮りべるようにミュージアム内を楽しんでいました。
その様子は、日本のゲームセンターにあるプリクラコーナーのようで、「どの機種が盛れるのか」「満足するまで撮り続ける」といった雰囲気とよく似ています。フォトブース、そしてプリント倶楽部は、国境を越えて人々を楽しませる存在なのかもしれません。
ただひとつ、日本と大きく異なっていたのは「誰と撮影するか」という点でした。
ヴィンテージのフォトブースは、撮影後すぐに写真が出てくるわけではなく、印刷後もインクを乾かす時間が必要になります。そのため館内中央には大きな丸テーブルが置かれており、撮影後の写真はまずそこで乾かします。
そのテーブルに並ぶ写真を見てみると、半数以上が「ソロ写真」でした。日本では、証明写真など特別な理由がない限り、ひとりで写真を撮る機会はあまり多くありません。しかしニューヨークでは、フォトブースでのソロ撮影が主流のようです。
実際に筆者も友人とこのミュージアムを訪れたのですが、「一緒に撮ろう」と声をかけると、「私はひとりで撮るわ。今の自分を可愛く残したいんだ」と断られてしまいました。さすがは自己表現の町、ニューヨークです(笑)。
とはいえ、楽しみ方は人それぞれ。友人同士のツーショットやスリーショット、縦に印刷される3〜4コマを活用して、順番に入れ替わりながら撮影するグループもいれば、カップルがカーテン越しに親密な瞬間を残す姿も見られます。
同ミュージアムの魅力は、そうした多様な時間を、同じ空間で共有できる点にあると感じました。スマートフォンひとつで、指1本あれば他人の“楽しい出来事”を眺められる時代。そんな時代だからこそ、この場所に足を運び、写真を撮り、テーブルに並ぶ写真に「それいいね」と声をかけ合い、実際に印刷された写真を手元に残す体験が、より特別なものに感じられます。
日本でも最近「平成風」のプリクラが撮れる機種が復活し、再び人気を集めています。少し不便なくらいのほうが、思い出はより濃く刻まれるのかもしれませんね。
■ AUTOPHOTO
住所:121 Orchard St,New York, NY
電話番号: (212) 655-4615
アクセス:ディランシー・ストリート & エセックス・ステーション(Delancey
St– Essex St)、またはバウリー(Bowery)より徒歩3分
営業時間:12:00〜22:00(月曜定休)
入館料:無料
URL:https://www.autophoto.org/museum