日本最大級のビオトープ~響灘ビオトープ
こんにちは。「地球の歩き方」福岡特派員のDukeです。今日は、北九州市若松区の響灘ビオトープを紹介します。
ビオトープとは「生物が生息するための空間」を意味する概念で、生態系維持や環境保全の観点から全国でさまざまな試みが行われています。響灘ビオトープは、かつては北九州市の産業廃棄物処分場でしたが、埋め立て後20年以上放置された結果、凹凸のある地形に雨水が溜まって湿地や池、草原となりました。そこにさまざまな生物が生息するようになったのだそうです。これを北九州市が、生物の多様性を確保するためビオトープとして整備し、自然環境の保全に関して楽しみながら学べる施設として2012(平成24)年から一般に公開しました。
この建物は、散策のベースとなるネイチャーセンター。鳥や風が運ぶ種子が発芽することによって自然な屋上緑化となるよう、屋根に植生基盤が設置されています。
ネイチャーセンターでは、ここに生息する生きものの写真や説明資料を展示しているほか、生物の多様性に関する情報発信などが行われています。中央のガラスケースは、ビオトープに暮らすカヤネズミの飼育室です。
残念ながら見えるところに出てきてくれなかったので、パネルの写真をアップで。カヤネズミは温和で平和主義者。かわいらしい表情をしていますね。
ビオトープが出現した経緯やその自然環境について学ぶことができます。響灘ビオトープには、環境省が絶滅危惧Ⅰ種に指定しているベッコウトンボなどをはじめ、500種以上の動植物が生息しているのだそうです。
ネイチャーセンターは無料で見学できますが、ビオトープに立ち入る場合は、ここで入場チケット(100円)を購入します。
それではゲートをくぐって、ビオトープの中を歩いてみましょう。
入ってすぐ正面に湿地帯の展望所があります。園内各所にある展望所には、そのポイントの見どころなどを説明する解説板が設置してありますので、それらを見ながら散策しましょう。
突然、ヨシの間からバサバサっという音とともに、水鳥が飛び立っていきました。喉が黄色味を帯びたカワウのようです。
湿地帯に設けられた観察デッキ。湿地には、水鳥やトンボ、メダカ、ゲンゴロウなどが生息しています。絶滅危惧Ⅱ類に指定されているメダカは、池にやってくる水鳥が運んだ卵が孵化してここに生息するようになったものです。
観察デッキの手すりを歩き回っていたハクセキレイ。
遊歩道を挟んで観察デッキの反対側には、広大な湿地にやってくる野鳥を観察するための施設があります。
湿地に生息する野鳥を驚かせないよう、壁に開けられたのぞき窓から静かに観察します。
水面に浮かんでいたのはカワウ。
遊歩道のそばで見つけたナナホシテントウムシ。子供の頃はどこにでもいましたが、近ごろは見かけることが少なくなりましたね。
遊歩道を南に歩いていくと、ビオトープ全体を見渡せる見晴らし台が見えてきます。
見晴らし台から北東、ネイチャーセンター方向の眺め。ネイチャーセンター正面の湿原までは広く草原が続いています。
こちらは北西方向。写真左側に見える白い部分は、コアジサシが営巣できるよう、礫層の上に砂層を設け表面に貝殻を散布したもの。かつては響灘埋め立て地でも営巣していた絶滅危惧Ⅱ類のコアジサシをビオトープに呼び戻すための試みです。
写真中央に見えるのは、高さ7mのポールの上に直径2mの籠を載せたミサゴポール。突出した樹木や鉄塔、海岸の崖や岩場など、周辺が開けた場所に巣をかける習性があるミサゴの繁殖を助けるために作られた人工の巣です。
見晴らし台を過ぎてもう少し南に進んだところがビオトープの南端の淡水池。水鳥などが飛来するため、ここにも野鳥観察施設が設置されています。
ちょっと距離が遠くてわかりにくいですが、小型のカモなどが群れていました。
産業廃棄物の処分場だった土地が、長い年月を経て自然に戻り、多くの命を育む生物の楽園となった響灘ビオトープ。特筆すべき点は、この中の生物は人為的に持ち込んだものではなく、すべてが自然発生(水鳥によって卵が運ばれたり、その糞から植物が生育)または移動してきたということ。つまり、こういう環境を作ったら、一旦はいなくなった生きものが帰ってくるということを証明したビオトープなんです。
響灘ビオトープはヤフードーム6個分に相当する41haの面積がありますが、生態系保護のため一般に公開されているのは7haとごく一部です。それでも十分見ごたえがありますので、いろんな生きものや植物を探しながら、のんびり歩いてみてはいかがでしょうか。
【響灘ビオトープ】
〇場所:福岡県北九州市若松区響町1丁目
〇開園時間:9時~17時(入園は16:30まで)
〇休園日:毎週火曜日(ただし、火曜日が祝日の場合は翌日)
〇問合せ:093-751-2023
〇入園料:一般100円(年間定期券400円)、小中学生無料
ネイチャーセンターのみの利用は無料
〇駐車場:65台(無料)
筆者
特派員
Duke
縁あって福岡県北九州市に落ち着いて、はや15年。県外の方はもちろん、地元の方にも楽しんでいただけるよう、福岡・北九州の旬な情報を発信していきたいと思っています。
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