スペインで絶対見るべき世界遺産5選

公開日 : 2023年01月24日
最終更新 :

スペインは2022年8月現在49のユネスコの世界遺産を持つ世界遺産大国(1位はイタリアで58)。スペイン旅行の際には、世界遺産見学も楽しみたいものです。ここではスペイン在住の筆者が選んだ、おさえておきたい基本の世界遺産を5つ紹介いたします。

エキゾチックなグラナダのアルハンブラ、アルバイシン地区

アルバイシン地区から望むアルハンブラ宮殿
©iStock
アルバイシン地区から望むアルハンブラ宮殿
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突然歴史の話になりますが、イスラム勢力は711年にイベリア半島に侵入し、ほぼ全域を支配したものの、キリスト教徒は1492年までの長い時間をかけて徐々に国土を奪回していきました。グラナダはイベリア半島最後のイスラム王国だったためエキゾチックで独特な雰囲気があり、訪れる人を魅了します。

アルハンブラ宮殿はヨーロッパにありながら、イスラムの香りが漂う無二のモニュメントです。特に幻想的なナスル朝宮殿は当時のイスラム芸術を駆使した傑作で、アラビアン・ナイトの物語世界そのもの。敷地内のヘネラリフェやアルカサバも合わせると、見学に半日はかかるぎっしり実の詰まった世界遺産です。

まるでイスラムの世界に迷い込んだようなナスル朝宮殿の一角
©iStock
まるでイスラムの世界に迷い込んだようなナスル朝宮殿の一角
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アルハンブラの向かいの丘にあり白壁の家が並ぶアルバイシンは、敵の侵入を防ぐために迷路のような細い道が入り組んでおり、散策が楽しい地区です。サン・ニコラス展望台から眺めるアルハンブラ宮殿は絶景。ぜひとも足をお運びください。

グラナダへのアクセスは、マドリードからだとスペイン版新幹線のAVEで3時間半。駅から中心部へは4番の市バスが便利です。バスターミナルはさらに離れたところにあり、33番の市バスで15~20分かかります。

イスラム寺院の名残濃いメスキータがあるコルドバ歴史地区

イスラム文化とキリスト教文化が融合した類を見ないメスキータ
©iStock
イスラム文化とキリスト教文化が融合した類を見ないメスキータ
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ローマ帝国の属州だった頃から栄えていたコルドバは、イスラム教徒の支配下にあった10世紀には今より多い50万人もの人が住み、イスラム文化の花が咲く町でした。13世紀前半にキリスト教徒がコルドバを奪回した時に、大きなイスラム寺院を取り壊さずにキリスト教寺院に改修したのがメスキータです。中に入ると赤と白のアーチが無数に並び、圧倒されます。現在は大聖堂なのでキリスト教の祭壇がありますが、手の込んだ細工がすばらしいミフラーブ(聖地メッカの方向にある壁につくられた窪み)も残っています。ここもグラナダのアルハンブラ同様、ヨーロッパに位置しながらイスラム文化の影響を強く残す唯一無二の空間なのです。

メスキータ以外にも歴史地区には、花で飾られた白い家の間を細い道が縫うユダヤ人街や昔の王城アルカサル、ポトロ広場など訪れたいスポットがあります。広くないので、どこでも徒歩で行くことができます。5月にはパティオ祭りが開かれるので、それに合わせて行くのもいいですね。

コルドバはマドリードからAVEで1時間40分から2時間。セビージャからは45分~1時間20分の距離です。駅とバスターミナルは隣接しており、歴史地区にあるメスキータまでは歩いて20分ほど。

アントニ・ガウディの作品群

 今もなお工事は続き、完成が待ち遠しいサグラダ・ファミリア
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今もなお工事は続き、完成が待ち遠しいサグラダ・ファミリア
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日本でも大人気のカタロニア・モダニズム建築家ガウディの建築群は、まとめて“アントニ・ガウディの作品群”として世界遺産に登録されています。バルセロナ市内に6件、隣接する市に1件の計7件。その7件についてじっくり書くとひとつの記事でも収まらないくらいなので、ここでは不本意ながら簡単に紹介いたします。

ガウディ初期の傑作と言われる、自身のパトロンであった実業家のエウゼビ・グエルの住まいの『グエル邸』。1889年に完成しています。そして同じくエウセビ・グエルの都市計画から生まれた、バルセロナの町と地中海を見下ろす丘にある『グエル公園』。中にはカラフルな粉砕タイルが使われたベンチや壁、またお菓子の家のような建物があるファンタジーな一画も。『カサ・ミラ』は20世紀に初めに建てられた集合住宅で、にぎやかな目抜き通りパセオ・デ・グラシアに位置します。その外観から石切り場の異名があるものの、地中海の波をイメージした曲線が特徴的な建物です。同じくパセオ・デ・グラシア面した『カサ・バトリョ』も海にインスピレーションを得ており、ファザードにちりばめられた粉砕タイルや明かり取りの中庭の外壁タイルなどの色も海を彷彿させます。

『カサ・ビセンス』は初期に作品で、イスラム建築とキリスト教建築が融合したムデハル様式の影響を受けています。長いこと公開されていませんでしたが、2017年から見学ができるようになりました。そしてあまりにも有名な『サグラダ・ファミリアのご生誕のファサードと地下聖堂』。1882年に着工され、今なお建設が続いています。ガウディ没後100周年にあたる2026年完成予定でしたが、コロナ禍の影響で難しくなったとも言われています。どうなるのか気になりますね。以上6件は地下鉄を利用してアクセスできます。

バルセロナに隣接する市にある『コロニア・グエル教会地下聖堂』もエウセビ・グエルと組んだ作品ですが未完で終わり、完成したのは地下の礼拝堂だけでした。行き方は、スペイン広場からカタルーニャ鉄道FGCのS3、S4、S8、もしくはS9に乗りコロニア・グエル(Colonia Güell)駅で下車、徒歩約10分弱です。

ローマ時代の建築技術に感嘆! セゴビア旧市街と水道橋

水道橋を見ると先人の偉業にため息が・・・
©iStock
水道橋を見ると先人の偉業にため息が・・・
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セゴビアのローマ水道橋は今から2000年以上も前の紀元前1世紀頃につくられた全長728mにも及ぶ橋で、19世紀末まで15㎞以上も離れた川からセゴビアの町に水を運んでいました。現代のような機械が一切ない時代に、人力でこんなに美しく有益な設備をつくったことに驚きと感動を覚えます。初めて訪れた時には「これぞまさに世界遺産!」と思ったものです。

旧市街の見どころは、ゴシック様式の大聖堂と町の端にそびえるアルカサル。13世紀はじめに建てられたアルカサルは、ディズニーの白雪姫のお城のモデルになったことでも知られています。ちなみにセゴビアは仔豚の丸焼きが名物料理なので、ぜひご賞味ください。

セゴビアはマドリードのチャマルティン駅から高速列車で30分、ローカル列車で2時間の距離。鉄道駅は2つあり、中心部に出るにはどちらもバスかタクシーを利用することになりますが、バスターミナルだと水道橋まで歩いて10分弱です。バスはマドリードのモンクロアから出ており、所要時間は1時間20分~1時間45分。

歴史を感じる石畳の町並みを散策したい古都トレド

エル・グレコも描いた美しいトレドの遠景
©iStock
エル・グレコも描いた美しいトレドの遠景
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タホ川に囲まれた美しいトレドの町は、6世紀にはすでに西ゴート王国の首都として繁栄していました。一番の見どころは、15世紀末に完成したスペインのカトリック教会の総本山であるゴシック様式の大聖堂でしょう。また、16世紀にギリシャ人の画家エル・グレコがトレドに住み、数々の宗教画を残しました。エル・グレコの作品は大聖堂やサンタ・クルス美術館、サント・トメ教会、エル・グレコ美術館で見学することができます。ほかには昔はユダヤ教会だったトランシト教会やサンタ・マリア・ラ・ブランカ教会などもあるものの、トレドを魅力は歴史を感じる古い町並みです。石畳の旧市街の散策をぜひお楽しみください。

マドリードのアトーチャ駅からAVANTで30分、バスだとエリプティカ広場から1時間~1時間半。駅から町の中心部へ歩くと20分以上はかかるので、市バスの5、5D、6.1、6.2に乗ると便利です。バスターミナルからは旧市街の入り口ビサグラ門まで徒歩10分。

ここでは5つしか紹介できませんでしたが、スペインにはほかにも一見の価値がある世界遺産はたくさんあります。スペイン旅行の際には、ぜひチェックしてみてくださいね。

筆者

スペイン特派員

田川 敬子

東京生まれの東京育ち。オリーブオイル専門家としてスペインと日本で活動するほか、複数のウェブサイトにスペイン情報を寄稿。

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