特集「今、こんな旅がしてみたい!」
キーワードで検索
“音楽の聖地”として知られるテネシー州メンフィス。古くから多くの人々を惹きつけてきた地に再び、熱い視線が集まっています。リバーサイドを中心に進む都市開発、食とアート、そして雄大なミシシッピ川を舞台とした数々のアクティビティ——。アメリカ南部ならではの伝統・文化を受け継ぎながら、今も進化し続けるメンフィスから目が離せません。
テネシー州南西部に位置する都市、メンフィス。州都ナッシュビルに次ぐ第2の都市で、ミシシッピ川に面して町の中心部ダウンタウンが広がっています。リバーサイドには2023年に全面改装を終えたトム・リー・パークが広がり、地元の人々をはじめ、観光客たちの憩いの場となっています。芝生の丘と木陰が点在する公園は、日中は家族連れやランナーでにぎわい、夕暮れには川風に吹かれながらグラスを傾ける人々の姿も。まさに“都会のオアシス”といった雰囲気です。
2026年内にはミシシッピ川に突き出すように、全長約70mの大規模展望デッキ、フライウェイが誕生する予定です。川面を間近に感じられる設計で、川風に吹かれながら都市と自然が融合する景観を楽しむことも。渡り鳥の飛来ルート(フライウェイ)に面しているため、バードウオッチングにも最適です。
また、リバーフロントではカヌーやクルーズといったアクティビティが人気。ミシシッピ川に架かる全長1.6㎞の歩道橋、ビッグリバー・クロッシングを徒歩または自転車で渡ることもでき、都市と大自然のコントラストを全身で感じられます。
さらに車で20分ほど足を延ばせば、都市公園としてはアメリカでトップクラスの広さを誇るシェルビー・ファームズ・パークがあり、森や湖を舞台にしたさまざまなアクティビティが楽しめます。最近、新たに始まったナイトハイクやエコツアーといったイベントも人気を集めています。
リバーサイドを中心とした市街地では、注目店が相次いで話題を提供。ダウンタウンでは伝統的な南部料理で知られるフェリシア・スザンヌズ、エッジ地区ではボリュームたっぷりのサンドイッチが人気のハードタイムズ・デリや斬新なカクテルが楽しめるバー・リミナといった店が脚光を浴びており、最新のグルメトレンドが一堂に集まるエリアが形成されつつあります。
なかでも18世紀初頭の歴史的建造物を改装した古いレンガ造りのホテル、ホテル・ポントトック内にオープンしたバー、ザ・デイムは特筆する存在。趣のある重厚なカウンターの奥でジャズが静かに流れ、地元の人のみならず観光客たちを惹きつけています。
また、地元では「料理ではなく文化」といわれるほど人気のBBQですが、そんなメンフィスならではの味を堪能するためのBBQトレイルが登場。100以上もあるといわれるレストランの中から選りすぐりの15店舗を巡り、BBQ文化に触れることができます。事前に無料のパスを取得しておけば、無料ドリンクなどもサービスしてもらえるので要チェック! なお、毎年5月には世界最大級のBBQコンテストが開かれ、町全体が煙と香ばしい香りに包まれます。
■メンフィス・バーベキュー・トレイル
【URL】https://www.memphistravel.com/memphis-barbecue-trail
メンフィススタイルのBBQとは?
アメリカ南部を代表するBBQのひとつ。ポークリブが主流で、スモーキーな香ばしさとジューシーな食感が特徴です。おもに「ドライリブ」と「ウェットリブ」の2タイプがあり、オニオン、ガーリック、パプリカなどブレンドしたスパイスミックスをたっぷりすり込んで長時間燻製したドライリブは、香ばしい燻製の香りと肉のうま味を存分に楽しみたい人に人気。一方、軽く燻製させたリブにトマトベースの甘辛いソースをたっぷり塗って焼き上げたウェットリブは、キャラメルのような口に絡みつくような濃厚さが魅力です。
ダウンタウンのすぐ東側に広がるエッジ地区は、アートの発信地として注目のエリア。かつては工場や倉庫が集まっていたエリアで、近年の再開発によってクリエイターやアーティストたちの拠点へと変貌を遂げています。街路には鮮やかな壁画群や個性豊かなギャラリーが点在。ダウンタウンとミッドタウンをつなぐ“境界の街区”にはコーヒーショップやバーなども立ち並び、今やメンフィスの新たなカルチャーハブとしてにぎわいを見せています。
2024年にはアートギャラリー、アグリー・アート・カンパニーがオープンし、“創造コミュニティ”の拠点としてさまざまなアートシーンを展開しています。アート作品の展示だけでなく、地元アーティストたちを巻き込んださまざまなイベントや音楽を取り入れた没入型インスタレーション展示なども開催。アート好きだけでなく、地元文化やクリエイティブコミュニティに興味がある旅行者にとっても魅力的な場所となっています。
■アグリー・アート・カンパニー
【URL】https://theuglyartco.com/
ブルース、ソウル、ロックンロール誕生の地として知られるメンフィス。町なかにはロックンロールの聖地「サン・スタジオ」やソウルの殿堂「スタックス博物館」といった音楽ファン必訪の場所が点在し、夜はいたるところでライブ演奏を聴くことができます。その音楽遺産が再び注目を浴び、2025年にはMusic Cities Eventsが主催する国際的なアワード「2025 Music Cities Awards」で観光賞を受賞しました。
そんなメンフィスでは、2026年もさまざまな音楽フェスティバルがめじろ押し。ブルースからヒップポップまで、数々のイベントが町を彩ります。
世界最大のブルースの祭典。世界各国から予選を勝ち抜いたブルース・アーティストが一堂に集い、競演を繰り広げます。
リバーサイド空間を生かした“体験型”の大型野外フェス。複数のステージや音楽ライブで盛り上がります。
ロック、カントリー、ブルース、ソウルなどさまざまなジャンルのアーティストが出演する大型音楽フェス。自然に囲まれた野外ステージが魅力。
また、エルヴィス・プレスリーの豪邸「グレースランド」に「プレスリー・フォー・ア・デイ」と題した体験型ツアーが登場。通常立ち入ることのできないプライベート空間で夕食を楽しんだり、かつてプレスリーが愛した場所を巡ったりと、“キング・オブ・ロック”を身近に感じながらの特別な1日が過ごせます。
■プレスリー・フォー・ア・デイ
【URL】https://www.graceland.com/presley-for-a-day
独自の食が息づく文化都市、メンフィス。2026年は多くの施設が何十周年という節目を迎える年でもあり、さまざまなイベントや特別企画が開催される予定です。
2026年に節目を迎える文化施設
・ハッティルー・シアター Hattiloo Theatre―20周年
・国立公民権博物館 National Civil Rights Museum―35周年
・バレー・メンフィス Ballet Memphis―40周年
・ディクソンギャラリー&ガーデン Dixon Gallery&Gardens―50周年
・オペラ・メンフィス Opera Memphis―70周年
・オーバートン・パーク・シェル Overton Park Shell―90周年
2026年に35周年を迎える国立公民権博物館では、春から新たな展示「レガシー・ビルディング」が公開予定。キング牧師の“未完の使命”に焦点を当てた体験型展示で、対話を通じて正義・平等といったテーマを深求します。
■国民公民権博物館
【URL】https://civilrightsmuseum.org
同じく2026年初頭、リバーサイドに9000点以上のアート作品を誇るメンフィス美術館(MAM)がオープン予定。美しい景観と歩いて楽しめる空間が魅力で、ミシシッピ川沿いという立地を生かした屋上の彫刻ガーデンをはじめ、「リバー・ウインドウ」「リバー・ステップス」といった川との一体感を意図したさまざまな仕掛けも話題となっています。
■メンフィス美術館
【URL】https://www.memphisartmuseum.org
2026年9月には、メタルを素材とした工芸品やアートを扱った世界でも珍しい美術館、メタルミュージアムの新館がミッドタウンのオーバートン・パーク内にオープン。こちらは、展示室に加えてワークショップやデモンストレーションなども行われるスタジオ、オーディオルーム、カフェなども併設される予定です。
■メタルミュージアム(本館)
【URL】https://www.metalmuseum.org/
“音楽の聖地”だけでなく、最新グルメ、都会のオアシスを擁したお洒落スポットとして進化し続けるメンフィス。新たに“都市とアートが交わる風景”が加わり、文化都市としての特徴が色濃くなってきています。南部の風とリズムを感じに、今まさに旬のメンフィスへと出かけてみませんか?