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【ベトナム】現存最古の城跡を訪ねてハノイ・コーロア村へ

土佐谷 由美

土佐谷 由美

ベトナム特派員

更新日
2025年7月18日
公開日
2025年7月18日
ベトナム最初の国、オーラック国を建国したアンズオンブオン(安陽王)<カオロー神社>

ベトナムの有名な古都と聞いて多くの方が思い浮かべるのは、フエでしょうか。19世紀初めに、ベトナム最後の王朝となった大越国阮(グエン)朝の都が置かれた場所です。ベトナムで最初に世界遺産に登録された「フエの建造物郡」としても有名な場所ですので、観光で訪れたことがある方もいらっしゃると思います。では、ベトナムで現存する最古の都はどこにあるでしょうか?

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田園広がる、ここもハノイ

答えは、ノイバイ空港、旧市街どちらからも近い、ハノイ郊外のコーロア村です。

今回は、観光客の方が多く宿泊する旧市街からバスに乗って、村を訪ねてみましょう。旧市街から程近い、ロンビエンバスターミナルが今回の旅の出発地です。17番のバスに乗車し、ロンビエン橋を横目で見ながら、ホン河を渡ります。
徐々に風景が変わり、バスに揺られること約40分、最寄りのバス停に到着です。車掌さんも周りの乗客も「コーロアに行くならここだよ」と教えてくれましたが、見渡す限り、田んぼだけ。不安な面持ちのまま、村を目指します。
ちょうど田植えの時期で、菅笠姿のおばさんが作業をしています。遠くに見える畦道に、これまた菅笠を被って自転車を漕ぐおばさんが。市街で菅笠を被っているのは、天秤棒を担いだ物売りのおばさんたちがほとんど。長い間被写体を待たず、ハノイ近郊でベトナムらしい風景を撮れるこの場所は、カメラ好きにとっても良い場所かもしれません。
バス停から10分ほど歩くと、露店が見えてきました。またその先は市場になっており、平日9:00にもかかわらず、多くの人でにぎわっていました。外国人にとっては観光地ですが、ここに住んでいる人たちにとっては、日常の風景。観光客慣れをしているのか、子どもたちも英語で元気に挨拶してくれます。

市場を抜けると急に静かになり、コーロア博物館が見えてきました。

ここもハノイかと驚くほど、のどかな田園風景が広がっている
道中、青空市場が立ち並ぶ

コーロア村を歩いてみる

コーロアは、紀元前3世紀頃にアンズオンブオン(安陽王)が建国したオーラック国の首都があった場所です。キムクイという金の亀によって造られた国ともいわれており、2つの有名な伝説があります。
1つは、城の建設時、キムクイの爪を使って弩(いしゆみ)を作り、悪霊を追い払ったという築城伝説です。もう1つは南越国の趙佗(ちょうだ)が、息子をアンズオンブオンの娘ミーチャウと結婚させ、それが元で後にオーラック国が滅びてしまうのですが、キムクイから裏切り者扱いをされたミーチャウを、キムクイのお告げをもとに父親であるアンズオンブオンは自分の娘の首をはねてしまいます。その後、自分のしたことを悔やんだ夫のチョントォイは井戸に身を投げるという悲劇が起こりました。ミーチャウの流した血が真珠になり、チョントォイが身投げした井戸で洗うと輝きを増すという、真珠伝説です。

コーロアの歴史を知るために、まずは博物館を見学しましょう。1階には全景がわかるジオラマが展示されています。2階に上がると、村内の遺跡からの出土品が展示されています。英語の解説も併記されているので、観光客でも理解しやすいのがうれしいです。博物館といっても、建物も日本の公民館ほどの大きさなので、ゆっくり見ても30分程でひと通り回ることができます。

大まかな歴史を学んだところで、今度は実際にゆかりのある場所を訪ねてみましょう。
まずは、カオロー神社。博物館の向かいにあります。ここはアンズオンブオンの側近、カオローを祀った神社です。ここの見所は、敷地の池にあるアンズオンブオンの石像(トップ画像)でしょう。弓を構えている姿がなんとも凛々しい。また近くには、実父に殺されてしまったミーチャウを祀った廟や同じ敷地内にあるバオソン寺も見学することができます。

博物館から徒歩5分ほどの場所にあるのが、コーロア古跡群のメイン、アンズオンブオン神社です。門をくぐると境内、その先に本殿があり、オーラック国を建国したアンズオンブオンとキムクイ(金の亀)が祀られています。

また、神社の目の前には池の中ほどにはチョントォイが身投げをしたとされる井戸が残っています。この池の周りには、青空カフェが並んでおり、私も散歩途中にココナッツジュースを注文。70代のおばあちゃんから「どこから来たの?」と聞かれたので、「ハノイの市街に住んでいます」と答えると、「あら、オーラックじゃないのね?」と、笑顔で返されました。今はハノイ市ですが、地元の人の古都への誇りと地元愛を感じます。

◆コーロア博物館(Bảo Tàng Trưng Bày Cổ Vật Thành Cổ Loa)
住所:4V6F+H9F khu di tích, Cổ Loa, Đông Anh, Hà Nội
開館時間: 8:00〜17:00
入場料:無料
アクセス:ロンビエンバスターミナルより、バスと徒歩で約1時間

◆カオロー神社(Đền thờ Cao Lỗ)
住所:4V7F+29W, Xóm Chùa, Đông Anh, Hà Nội
開門時間: 7:00〜17:00 ※ただし12:00〜13:30は閉門
入場料:無料
アクセス:コーロア博物館より徒歩2分

◆アンズオンブオン神社(Đền thờ vua An Dương Vương)
住所:4V7C+6QV, Cổ Loa, Đông Anh, Hà Nội
開門時間: 7:00〜17:00 ※ただし12:00〜13:30は閉門
アクセス:コーロア博物館より徒歩5分
入場料:30000ドン

まずはコーロア博物館から
コーロアを象徴するアンズオンブオン神社。記念写真を撮るならここがおすすめ
本殿にはアンズオンブオン(安陽王)とキムクイ(金の亀)が祀られている

ちょっと寄り道、マッチャン村

博物館でコーロアの人たちの伝統的な食べ物で、「マッチャン春雨」というものが紹介されていました。聞くと、その村は徒歩15分ほどのところにあるそうなので、帰りのバス停に向かう途中で立ち寄ることに。
村の中心地にあるマンチャン神社を訪ねると、石碑に神社と村の歴史について書かれていました。ここはコーロア三層の城塞の外に位置しますが、オーラック国の食料倉庫として、重要な役割を持っていたそうです。この神社で注目すべきは、何と言っても拝殿・幣殿・本堂の彫刻でしょう。きらびやかに輝く金色と透かし彫りの技術やストーリー性を感じるデザインは装飾としてだけでなく、美術品としても価値がありそう。

家に帰ってから、ベトナム語のサイトでこの神社のことを調べてみました。18世紀後半、木彫、金箔の職人が全国から集まり、この神社の建設に携わり、1997年に国の歴史的建造物に指定されたとありました。ふらっと立ち寄った先でのお宝発見も、旅の楽しみのひとつですね。

◆マッチャン神社(Đình Mạch Tràng)
住所:4V56+WMH, Mạch Tràng, Đông Anh, Hà Nội
開門時間: 7:00〜17:00 ※ただし12:00〜13:30は閉門
アクセス:アンズオンブオン神社より徒歩15分

外観は普通の古い神社にしか見えないが…
中の彫刻は素晴らしかった

まとめ

いかがでしたでしょうか? 毎年旧暦の1月6日には、オーラック国の建国やアンズオンブオンと国の発展に貢献した側近たちを讃える「コーロア祭り」が開催されます。今回マッチャン村で食べたかった、マッチャン春雨など、この土地の伝統的な食料も献上され、来場者も食べることができます。お祭りに合わせて訪ねるのも、きっと楽しいことでしょう。ハノイ市街から近いので、ぜひ訪れてみてください。

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