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帰るだけなので、時間に追われず移動そのものも楽しみたい…。毎度の思いから今回もアムトラック。バンクーバー発、シアトル経由、サンフランシスコ行き。「コースト・スターライト#11」で陸路の国境越え、西海岸縦断の列車旅で、不思議な体験や国境越えの実感、アメリカの習慣を発見する旅となりました。
バンクーバー〜サンフランシスコはアムトラックで帰ってみる事にしたのですが、前日。「国境を越えるので国際線と同様余裕を持って駅に行ってください。以前乗れなかった方がいましたので…」と滞在先のスッタフに言われました。早朝5:30出発。始発電車もなくタクシー(CA$15)で駅に行きました。
真っ暗な中にライトアップされた駅舎は素敵!しかしいるはずの乗客は誰もおらず、玄関には鍵がかかってました。道路の向こうで人が叫んでいる。タクシーもすでに去ったし、あと1時間半こうして待っているのかとも思うと正直恐怖以外ありませんでした。
高い窓から爪先立ちして中を覗き込んだら、幸いベンチに人が寝ていました。とにかう窓を叩いてみました。遠くでFワードの連呼、こっちにきたらどうしようかと恐怖はほぼMAX。とにかくコンコンとたたき続けました。
静まり返った駅舎に響く窓を叩く音に、さすがに気がつきキョロキョロし始め、こちらをみた。思わずジャンプしながらこっちこっちと手を振る様はきっと遭難者が救助隊を見つけたのと一緒。窓に近づき私の顔を覗き込んでくれました。明らかに寝ぼけた表情でしたが、正面玄関を指さし”オープン、オープン”と何度もジェスチャーで繰り返しました。ショッピングカートを引きずる音とFワードがどんどん近づいてくるし一刻を争う状況でした。
寝ぼけた君は寝ぼけたまま正面玄関を開けてくれました。
助かった!(ドアは内側からは開けられるが、外からは開かないようになっていました)。救助してくれた感謝を何度も言いました。どこに行くのか聞いたらシアトルに行くといい、寝ぼけた君はまたベンチで寝始めました。
誰もいない駅舎。英仏両語で書かれている”カスタム(Customs/Douanes)”。ここに並ぶんだなと思いながらベンチに座って待っていました。5:00駅舎のセキュリティルームから制服を着た小柄な女性が鍵の束を持って各所の鍵を開け始めました。寝ぼけた君にその事を言いにいきましたが、熟睡…。正面玄関を開ける前に私に気がついた職員さんが、目玉が落ちるんじゃないかと思うほどギョッとした形相で「なぜあなたはここにいるのですか?」決して冷静ではない声で聞かれたので、状況を話し、寝ぼけた君を指さしましたが、
不思議な事に今声をかけたばかりの寝ぼけた君の姿はありませんでした…。
「この玄関が開くまで誰もいないはずになっています。」と言い、玄関のドアを開けました。待ちかねた旅行者数組が入ってきました…
話は逸れていますが、5:00過ぎにしか入れない事(おそらく始発の30分前)。昼間はどうか分かりませんが、暗いうちはやはり十分気をつけなければならないと思いました。
シアトル行きのバスはカスタムのドアとは別のドア前にスタンバイ、シアトル行きを確認、チェックインしました。やはり寝ぼけた君は乗っていませんでした。
コネクティングバスのドライバーさんは、慣れた手順で次々に乗客を案内し、テキパキを荷物を積んでいく様子に安心し、朝日を浴びながら定刻に出発しました。この日は40分ほどでボーダー(国境)をこえる予定だそうです。
DUTY FREEのお店が出てきて、ボーダーラインの実感が湧いてきます。初の陸路国境越え、検査官がスタンプ持って乗り込んでくと考えていたら荷物を全て持って全員下車するように指示がありました。すごい量の荷物の人もいてまるで集団移民みたいで否が応でも緊張しました。「皆さんキープスマイルね、通過したらまた会いましょう」と微笑むドライバーさんでした。
入国審査の建物は殺風景で、審査官はニコリともせず淡々とこなしています。私ら10人ちょっとなのであっという間に次の部屋に通され、これで審査終了無事アメリカに帰ってこれました。笑顔つくる間もなく呆気なく終わりました。荷物を持ってさっさとバスに乗り込みました。30分後、バスはシアトルに向けて発車。
フリーウエーに乗ってから「一人は後から来ます(つまりこのバスには乗車していない)」とアナウンスがありました。思わず誰がいないのか見渡してしまいました。隣席のインド人親子とお互い安堵の表情を浮かべていました。アメリカ・カナダ間は問題なさそうにも思えるのですが、国境越え現実を知りました。バスはシアトル行きの1便目なので問題解決できたら次の便に乗れるでしょうけど、最終便だったらどうなっちゃうんだろう…。
コネクティングバスは、ほぼ定刻にシアトル・キングス&4th Street駅に到着。共に国境越えした皆さんはそれぞれ散っていきました。これからいよいコーストスターライト#11にチェックイン。
否が応でもワクワク!鉄道旅の始まりです。
都市部をちょっとすぎるとボーイング社の組み立て中の飛行機とAmazonのロゴだけの長い貨車が見えました。シアトルといえばこの2社。空港にはAmazon専用チェックインカウンターがありましたね。列車は徐々に山間部に入っていきました。
アムトラックの山越えは、ゆっくりと力強く登ります。スピード感は新幹線とは違いますが、その様子は列車本来の勇姿な気がしました。
山越えはトンネルもたくさんあり、明るかったのが急に暗くなりOhhhというざわめき声もしました。
私の隣テーブルにおじいちゃん・おばあちゃんとお孫さん二人でテーブルゲームをしていたらトンネル。突然おじいちゃんが、立ち上がり人差し指を天井に向けました。何それ!反射的に私もつられて立ち上がり人差し指を天井に、後ろでテーブルでほろ酔いの4人組が何だそれ?と言った瞬間トンネルは抜けました。しかし次のトンネルで真似をしましたら、その次のテーブルの親子が次のトンネルで真似をして、トンネルを越えるごとにラウンジ全体がまるでスイッチが入ったように立ち上がり指を指す…。
おじいちゃんなんで指さすの?と聞いたら、トンネルに入った瞬間に人さ指を上に向け願い事をするんだよと教えてくれました。
かなり長いトンネルから抜け出した時「俺3っつも祈ったぜ!」いい大人がまるで子どもみたいに自慢する、真面目に願い事する光景は飛行機ではない遊びです。柱状になって風景が見えるところでは「これはどっちなんだ?」とおじいちゃんに向かって聞く律儀者もいました。
どこの風習なのか誰もそのおじいちゃんに聞くことはなく、ただただはしゃいで指さしていました。ググったりチャットGPTに聞くことがバカバカしく思えるアムトラックの旅です。
真っ暗なバンクバーの駅舎で謎のティーンエイジ寝ぼけた君に危機を救ってもらい、早朝出勤の駅員さんにどこから侵入したのか詰問され、ビビりながらバスに乗り込んで、緊張の陸路集団国境越え。その後シアトルまでは安堵のあまり睡魔に襲われ爆睡、シアトル駅ではスタッフ右往左往する混雑だった夏休みのコーストスターライト#11。気になったトンネルのメイクウィッシュは何処の習慣や?飽きそうで飽きないジャーニーでした。おやすみなさい。