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【南アフリカ】ジャカランダお花見ツアー inヒルブロウ

あんな

あんな

南アフリカ特派員

更新日
2025年10月27日
公開日
2025年10月28日

毎年10月ごろからヨハネスブルグではジャカランダの花があちこちで咲き始めます。町中が紫色に包まれて幻想的なこの時期のヨハネスブルグですが、残念ながら治安が悪いので歩いてお花見することが難しいのが現実です。そこで、ガイド付きで安心して外を歩きながらお花見ができるウォーキングツアーに参加してきたのでご紹介します。

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意外と難しい!ヨハネスブルグのお花見事情

ジャカランダは街路樹なので、ほとんどが道路沿いに植えられています。日本の上野公園のように満開の花を見ながら安全にピクニックできるような場所は、ほとんどありません。
この時期になると毎年、ドライブ中に満開のジャカランダを見つけては赤信号のタイミングで急いで車内から写真を撮る、そんな日々です。
治安が悪いので車の窓を開けるのも、綺麗だからといって路駐して車から降りるのも危険です。ジャカランダを見ようと車から降りた日本人が襲われたケースもあります。
でも綺麗なジャカランダを車内からじゃなく歩いてじっくり見たい!
そんな方のために、この時期になるとヨハネスブルグではジャカランダを見るためのウォーキングツアーや、マラソンイベントが各地で開催されます。
今回はダラニェというツアー会社が開催したジャカランダお花見ツアー、その名も『ジャカランダ・ウォーキングツアー・オブ・ヨハネスブルグ』に参加してきたので、その様子をご紹介します。

ダラニェ(Dlala Nje)

今回参加したのは、ヒルブロウ地区に特化したツアー会社『ダラニェ』主催のツアーです。日本からの観光客や日本人駐在員もよくこの会社のツアーを利用しています。観光客からの評判も良く、ツアーの料金の一部をヒルブロウの子供達のために使うなど地域貢献もしているので、地元民からも信頼されています。
オフィスはポンテタワーというヨハネスブルグのアイコン的存在であるタワーの中にあり、ダラニェが開催するツアーのほとんどはそのポンテタワーから出発します。
人気のツアーはヒルブロウという地域を歩いて探索する「ディスイズ ヒルブロウ(This is Hillbrow)」です。ヒルブロウは絶対にガイドなしで立ち入ってはいけない危険エリアですが、地元の人のリアルな暮らしや歴史が垣間見える、ヨハネスブルグの現在がよくわかるエリアです。
今回私が参加したのは『ジャカランダ・ウォーキングツアー・オブ・ヨハネスブルグ』ですが『ディスイズ ヒルブロウ』と歩くコースがほぼ同じだそうで、『ディスイズ ヒルブロウ』の参加者と合同で出発することになりました。最後にはランチもついています。

オフィスがあるポンテタワー

ポンテタワー内のツアーからスタート

まずはポンテタワーの内部を歩きながら、ここに長年住んでいるというガイドの方からタワーについての説明を聞きます。
ポンテタワーは1975年に54階建の富裕層向け超高層マンションとして建設されましたが、建設が途中で中断され放置されたことからスラム化し、一時期は『世界一高いスラム』『犯罪者の巣窟』などと呼ばれていました。
現在は犯罪者も廃棄物も一掃され、一般の人々が平和に住んでいます。
最近では観光地としても有名になってきていて、高層階にエアビーで宿泊することもできます。宿泊は「意外と快適、しかもインテリアがおしゃれ」と観光客に人気です。

ゲートを通って住民用のエレベーターに乗り込む
イベントスペース

51階にダラニェが保有しているイベントスペースがあります。ここからはヨハネスブルグの街並みが一望できます。上から見ると、ジャカランダがどこに咲いているかが一目瞭然です。
写真ではあいにく色が霞んでしまっていますが、遠くの方にギッシリ紫色になっているエリアが見えます。そこはジャカランダが多いことで有名なローズバンクというエリアです。ローズバンクにいかにジャカランダが多いかがよくわかります。

左奥がローズバンク。写真では色が霞んでいるが肉眼ではぎっしり紫色だった
上から見るヒルブロウ

高層階での景色を堪能したら、今度は下まで降りて『コア』と呼ばれる円筒の中心部にいきます。ここの雰囲気は圧倒的で、ヨハネスブルグを訪れる全ての方におすすめしたいほどです。
過去にはここに上層階からゴミや死体が投げ込まれ、15階部分まで廃棄物が積み上がっていましたが、現在は一掃されています。

ポンテタワーの共用部分を通ってタワーの出口へ向かいます。
共用部分には小さいスーパーや美容院、食堂など生活に必要なもの全てが揃っているので、住人はタワーから一歩も出なくても生活が完結するようになっています。

いよいよ町の探索に出発です。ジャカランダが綺麗な公園や住宅街を通りました。
ツアー中はスタッフが3名体制で付き添ってくれました。前、真ん中、後ろにひとりずつです。危険エリアと言われている地域ですが、安心して歩くことができました。ツアー中は近づいてくるような怪しい人もおらず、公園では子どもたちが楽しそうに遊んでいて、終始平和な雰囲気でした。

公園
健康器具が揃っていた

実は良い木ではないジャカランダ

ジャカランダは南アフリカで有名な花ですが、実は南アフリカの在来種ではありません。19世紀末に南米から観賞用として大量に持ち込まれた外来種です。
ジャカランダは繁殖力が強く、この国の貴重な水源を大量に吸い取ってしまいます。南アフリカの在来種に水が行き届かず育たなくなってしまうなどといった悪影響を危惧して、政府はジャカランダを『侵略的外来種』に指定しました。
そのため現在では新たにジャカランダを植えることは禁止されています。基本的には保護もされません。死にかけていたら、そのまま死なせる、それが南アフリカのジャカランダ事情だそうです。

綺麗なのに保護されないジャカランダ

最上階の小さい窓の正体

ヒルブロウにある建物の多くはアパルトヘイト時代からある古い建物です。そのため、当時の面影が残っています。
最上階の窓だけ小さいアパートがあちこちにあります。これは、アパルトヘイト時代に多くの家で最上階がメイドの部屋として使われていたためです。メイドが家の主人と同じように景色を楽しむべきではないとして、窓は小さく作られました。
最上階である理由は、家の主人とメイドの住居空間を完全に分離して生活できるようにするためです。また、アパルトヘイト時代、黒人は夜の18時以降に外に出ることを禁止されていました。そのため、外に出にくくさせる効果もあったそうです。
ちなみに、先ほどのポンテタワーもよく見ると最上階は窓が小さくなっています。現在はポンテタワーの最上階は使用されていません。

ポンテも最上階とその1つ下の階だけ窓が小さい
ここも窓が小さい

ハイジャックされた建物と廃墟

ヒルブロウには現在もハイジャックされた建物があります。ハイジャックされた建物は賃貸に出され、ハイジャックした犯罪者は住人から賃料収入を得ます。実際に今ハイジャックされていると言われている家の前を通りました。その物件は月R600(5000円弱)だそうです。
その隣には、最近火事で燃えてしまった家もありました。

数週間前に火事で燃えてしまった家

こちらは廃墟です。窓ガラスやドアは全て盗まれて、なくなっています。盗んで売却して得たお金は『ニャオぺ』と呼ばれるドラッグに使われることが多いそうです。
ニャオぺとは、ヘロインを主成分として、殺鼠剤などあらゆるものを混合せた非常に危険で安価なドラッグです。南アフリカの貧困エリアでいまだに広く使用されています。ドラッグを使った人の血液を注射器で採取し、その血液を自分に注射器で入れることでその人にもドラッグが入りハイになれるそうです。血液型が合っていなかったり、病気が伝染したりとかなり危険な行為ですが、貧困エリアでは日常的に行われています。

この中に女性がひとり座っています。見つけられますか?

最後にポンテタワーの51階のイベントスペースに戻り、ツアーは終了です。ツアーにはランチが含まれているのでここでランチを食べて解散です。
ツアー開始時には10名ほど参加者がいたのですが、みなさん海外からの観光客だったので忙しく、ツアーの途中に1組、また1組と帰ってしまいランチが出てきた時には私ひとりだけになってしまいました。
ポンテタワーのあるこのヒルブロウ地区はヨハネスブルグの市内からアクセスしやすいので、スケジュールが詰まった旅行中でも予定に組み込みやすいようです。

白いものは南アフリカの主食、パップ

ツアー会社詳細

ダラニェの各ツアーの申し込みは、以下の公式WEBサイトより申し込みます。今回私が参加したジャカランダツアーは、毎年この時期に1日限りで開催されています。しかし、10月中旬〜11月上旬ごろにディスイズヒルブロウのツアーに参加すれば今回のようにお花見しながら散策できるはずです。ディズイズヒルブロウは年間を通して常時開催しています。

◾️ダラニェWEBサイト https://dlalanje.org/

ジャカランダ・ウォーキングツアー・オブ・ヨハネスブルグ
料金:大人R550

ディスイズヒルブロウ
料金:大人R480

ヒルブロウは危険な地域ですが、ダラニェはそのイメージを払拭することを目的のひとつとして掲げています。ヒルブロウが危ないと言っているのはほとんどがこの地に足を踏み入れたことがない人たち。実際に来て、街やここで生活する人を見てイメージを変えてほしいとのことです。
とはいえ犯罪率が高いのも事実。もちろん観光客が一人で歩くことはダラニェも勧めていませんが、ヨハネスブルグに来たら是非ツアーに参加してリアルな街並みを見てみませんか。

今回のツアーで見学したポンテタワーを、階段で54階の最上階まで登る『ポンテチャレンジ』というレースが3ヶ月に1度のペースで開催されています。こちらもダラニェが主催しており、チケットが売り切れるほどの人気イベントです。
気軽にポンテタワーに入れるチャンスなので、最近では日本人駐在員の間でもじわじわ人気が出てきています。次回は2025年12月7日に開催予定です。

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