キーワードで検索
10月は生徒さんのホームステイを3回お手伝いし、この夏は私自身もホストの経験をしました。送り出す側と受け入れる側、その両方の貴重な体験を通して見えてくるものがありました。英語力よりも大切なのは、何にでも興味をもつことと、失敗を怖がらない勇気。
今回は、両サイドの体験したからこそ見えたホームステイのリアルをまとめてみました。
受け入れ側の代理で空港に迎えに行った時、出会った生徒たちの硬い表情がとても印象的でした。多分スーツケースには英和辞典とおみやげがぎっしり入っていると思われます。が、皆一様に笑顔は少なめ。長旅の疲れもあるかもしれませんが、初めての海外旅行という人もいて、逆にやたらはしゃぎ始めたり、何れにせよ緊張しているのが伝わってきました。
ホームステイは、旅と同時に共同生活でもあります。ホストファミリーに会う前にしておきたいのは、英語の練習よりも相手を知ろうとする姿勢の練習かもしれません。「ホストファミリーにはどんな話したらいい?」という不安もあるけれど、先ずあなた自身の話をしてみてください。
<おみやげよりも、話のネタを準備しよう>
▪️日本の文化や家の写真をスマホに何枚か入れておくと、会話のきっかけになる。
▪️英語が苦手でも、伝えようとする姿勢+笑顔+声の大きさは最強。
▪️持ち物よりも、相手に関心を持つ準備を。
▪️“Yes, please.” “No, thank you.” いえるかな。
この夏、学生さんを受け入れて再認識したのは、言葉よりも“音”が印象を決めるということ。同じ”I’m fine.”でも、笑顔で明るくいえばOKサイン。うつむいてぼそっといわれた時は、心配になりました。声のボリュームは、滞在の快適度を確実に左右します。そして、沈黙は必ずしも美徳ではありません。アメリカは多民族国家で、いろんなバックグラウンドを持つ人々が暮らしています。以心伝心は単一言語の国でしか通用しない。いわないのは、考えていない・感じていないのと同じです。
例えば、夕食でたったひと言「おいしい♡」と言葉にするだけで、食卓の空気が変わります。
そのひと言を何日目にいえるか──そこが鍵です。
英語の文法ミスよりも、“反応しないこと”のほうがもったいない。
<遠慮は美徳ではなく、無言は誤解を生む>
▪️お風呂や食事のルールは、「どうすればいい?」と必ず聞く勇気を。
▪️自室に閉じこもるのはNG。「ちょっと話す」「手伝う」で距離が近づく。
▪️食べられないものは”Sorry, I don’t usually eat this”の後に、”But thank you for making it”のひと言で印象が変わる。
▪️“Thank you” “That’s nice!”を口癖に。リアクションは文化そのもの。
送り出す側(代理ではあったけど)として見た生徒たち、受け入れた側(ホストファミリー)として見た留学生。
共通していたのは、“感じのよさ・愛嬌のある子”は愛されるということです。
決して語学力ではありません。
言葉のギャップを表情やジェスチャーでカバーできると、それだけでお互いの距離が縮まります。そして、感謝の言葉は世界中の人間関係をやわらかくするマジックワード。
<Good byeではなく、See you again!>
▪️メールやSNSでひと言でも「Thank you for everything!」を送ってみる。
▪️お礼のメッセージは翌日〜帰国後3日以内が理想。
ホームステイは単に語学留学ではなく、「他人の家で暮らす」という、いろんな意味での人間観察の旅かもしれません。
日本で生まれ育つと、他人(ルームメイト)と暮らす経験はなかなかありませんが、ホストもコーディネーターも、結局は“感じのいい人”には手を差し伸べたくなります(笑)。
私がホームステイしていた数十年前は、スマホもなければ携帯電話を持っている学生も少数。気軽に電話をかけられるような環境ではありませんでした。
そんななか、ホストマザーのケルダさんは、庭先のハーブを一緒に摘んで料理をしたり、日本では珍しい料理をいろいろ教えてくれました。「え〜!そーなの?」「うわ〜すごい!」と、時折日本語になりながらの毎日。でも、その素直なリアクションが彼女には楽しかったのかもしれません。気づけば、どんどんカリフォルニアスタイルのレシピを教えてくれるようになりました。
あの時間が、今の私の食生活や食育活動のベースになっている気がします。
びっくりしたことはびっくりした、嬉しいことは嬉しいと伝える。
たったそれだけのことが、心をつなぐ第一歩。
ホームステイは「学び」よりも「暮らし」の旅。
英語が通じても、心が通じなければ面白くない。
結局のところ、世界のどこに行っても通じるのは“感じのよさ”と“ありがとう”のひとこと。
それさえあれば、アメリカのお父さん、お母さん、兄弟姉妹は、いつでもドアを開けて待っていてくれますよ。