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【米国・ポートランド】パール・ディストリクトひとり歩き。気負わず巡る午後のビール時間

美丸(Mimaru)

美丸(Mimaru)

アメリカ・カリフォルニア州特派員

更新日
2025年11月19日
公開日
2025年11月20日

ポートランド滞在中、仕事でブルワリーを訪れることが多かった。醸造家と語り、エッ!と思うような話まで聞けるいわゆるジャーナリストの訪問で、かなり刺激的なのだけれど、かなり緊張もありました。ただのビール好きとして歩きたい日もあり、この日はまさに、そんな一日でした。ホテルから半径数ブロック。スマホ一つで予約なし。ガイドブックに載っているような定番の街角を、ただの旅行者として楽しむため、パール・ディストリクトをひとりで巡ってみました。

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①Deschutes Brewery – パールの真ん中で、最初の一杯が“もう旅のハイライト”だった話

デシューツ外観

パール・ディストリクトの中心で、まず足が向いたのは デシューツ・ブルワリー(Deschutes Brewery)。オレゴンを代表する名門ブルワリーだけれど、重厚さよりも “静かな安定感” が伝わってきます。超人気地区のど真ん中なのにギラギラしたところがなく、元倉庫街だけあって天井も高く、ポートランドらしく木の温もりが漂いスタッフがゆったりとして迎えてくれる。カウンター席なら並ばず入れるのも嬉しいポイント。ひとり旅の手始めとして、これ以上心強い場所はないと思いました。

選んだのは、醸造家の気まぐれと遊び心がぎゅっと詰まった BREWER’S CHOICE TRAY($16)。
ラインナップはこの6種類:

  1. Succulent Punch
  2. Beelighful Honey Saison
  3. A Pleasant Disposition WC Pils
  4. FH Strut your Strata Hazy IPA
  5. Fresh Hoppin’ in Low Gravity Pale Ale
  6. FH Canals and Cascades WC IPA

木製のフライトボードの上に並んだ6杯が目の前に届いた時「今日はこれでしょ!」と背中を押されたような、不思議な確信が生まれた。飲み進めるうち、ホップの香りの奥にふっと“落ち葉の気配”が混じる瞬間があって、「あぁ晩秋のポートランドにいるんだなぁ」と胸の奥がじんわりほっこり。クラフトビールが街の季節感をこんな風に伝えてくる。やっぱポートランドは面白い。

ランチタイムだったので、 フィッシュフライサンド($18.50/スープ付き) を頼みました。半分くらいの人はハンバーガーを頼んでいたけれど、あえて魚の“はずし”が、サンプラーとの相性いいじゃないですか⭐︎お肉に疲れた日本人の胃袋にはちょうどいいです。揚げたてのフィッシュの香ばしさ、レモンの酸味、カレーキャロットスープ。ブルワリーでいただく料理のレベルの高さにも唸る。

最初の一軒目にここを選んだ自分。えらいぞ自分!ウォーミングアップのつもりが、もうここが“ザ・ポートランド”だった。

■デシューツブルワリー・ポートランドパブリックハウス

住所:210 NW 11th Ave, Portland, OR 97209

電話番号:503-296-4906

営業日:月〜木11:30〜21:00金〜22:00 土11:00〜22:00日11:00〜21:00

URL:https://deschutesbrewery.com/pages/portland-public-house

  • 醸造家の好みがわかる6種
  • 天窓から柔らかな光

②Backwoods Brewing – 森の入口でビールを飲むような、ほっとする寄り道

バックウッド外観

デシューツを出て道路を渡ると空気がフワリと変わる。バックウッズ・ブルーイング(Backwoods Brewing)は、名前の通り“森の入り口”のような佇まいで、昼下がりの店内には数人のお客さんが静かに過ごしていた。やはりここも天井が高いけど木の温もりを感じます。

ここでもサンプラー6種類($13)を注文。
メニューから自分で選ぶスタイルだけれど、迷うのは当然の楽しみ。好みを伝えて選んでもらうのもいいし、さらに迷う時は「あなただったらどれを選ぶ?」と一つだけ“お店の人の好きなビール”を聞いてみるのもおすすめ。そこから自然と会話が生まれる。せっかくなので隣の人にも聞いてみれば、もうカウンターでの“ぼっち感”は消えてしまいます。

木製のボードにずらりと並んだ小さなグラス。
自らのチョイスの行方を試されるようなちょっとした緊張感と、“好きなものだけを集めた”満足感が入り混じり、つい「では、いただきます」と手を合わせてしまった。すると隣席の男子が「日本では飲む前にそうするの?」と真顔で聞いてきて、思わず肩の力が抜けて笑ってしまった。こんなささやかなハプニングがあると、心もゆるむ。

手書きしたビールリストは、ポッケにはいる土産にもなるし、一言メモを添えれば、それは旅の覚書にもなります。

すっと飲める軽やかなホッピー系から、後味にほんのり甘さを残すものまで、どれも主張しすぎず日常生活に溶け込む味わいがする。派手さはないのに、表情は豊かで飽きない。ここは、特別な派手さではなく、“ちょっと寄り道したくなる”空気を感じました。パールディストリクトの街角に、自然にくつろげるブルワリーがあるとは思っていなかった。歩き疲れたらここで一杯いいかもしれない一軒です。

■バックウッドブルーイングカンパニー

住所:231 NW 11th Ave, Portland, OR 97209

電話番号:503-327-8588

営業日:毎日11:30〜20:30 金土〜21;30

URL:https://www.backwoodsbrewingcompany.com/portland-menus

  • 迷うのも楽しみな自分チョイス
  • 木を感じる空間。静かな空間

③10 Barrel Brewing – パールの“いま”を飲む、スタイリッシュな10種類

10バレル外観。ルーフトップパテイオあり

3軒目は、今回のサンプラー巡りで最も“都会の顔”を感じさせてくれた10 バレル・ブルーイング(10 Barrel Brewing)。ここではもちろん、看板メニューである10種類のサンプラー($16)一択(どんだけ飲むんじゃい!)。ステンレストレイにずらりと並んだ10杯は、もはやアートのパレット。午後3時の斜光を受けて透けるアンバーやゴールドのグラデーションは、パールディストリクトの洗練をそのまま液体にしたような眺めだ。

まずは順番に一口ずつ。10杯目までくると、この街の“現在地”がじわじわと感じてくる。軽やかに喉を駆け抜けるラガー、ホップ香が折り重なる多層的なIPA、クラシックなスタイルを丁寧に仕上げた1杯、そして最後にしっかりと余韻を残すダーク系。ひとつひとつの個性は明確なのに、全体として妙な統一感がある。まるでポートランドという街そのもののようで、思わず“奥が深い…”とつぶやいてしまった。

このフライトは“飲み比べ”というより、小さなストーリーを味わいながら進んでいくのがちょうどいい。クラフトビール文化の厚みと、パールディストリクトらしい遊び心。その両方が、目の前の10個の小さなグラスにぎゅっと詰まっている。

三軒目にして、この日のサンプラー巡りが一気にスタイリッシュに締まった気がした。
隣席のお兄ちゃんが、じーっと私を見つめている。思い余って声をかけてみたら、返ってきたのは「そのビール、写真撮っていい?」の一言。どうやら興味があったのは私ではなくビールの方だったらしい。

■10バレルブルーイング・ポートランド

住所:1411 NW Flanders St, Portland, OR 97209

電話番号:503-224-1700

営業日:月〜木12:00〜21:00金土11:00〜22:00日〜21:00

URL:https://10barrel.com/pub/portland-brewery/

 

  • 順番は気にせず好きに飲んでみた
  • 3時のお茶ならぬ。3時のビアタイム

④感想・まとめ

数年ぶりの晩秋のポートランド。朝までの雨が上がり、濡れた落ち葉(腐葉土になっていく途中)の匂いに、乾いたカリフォルニア暮らしの身には新鮮な発見があった。昼には薄日が差したものの、午後4時にはもう夕暮れの気配。この街の人々は冬小物の使い方が本当に上手で、サンフランシスコでは着こなせないようなコートに何度も見とれてしまった。ビール三昧の一日だったけれど、季節も、人も、匂いも、ちゃんと“秋から冬へ”を感じさせてくれる街。ポートランド、次の再訪は来年もう決めています。

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