キーワードで検索
サンフランシスコと聞けば、まず思い浮かぶのは坂道だ。そこにケーブルカーがゴトゴトと急な坂を上り下りする風景だろう。そして「世界一曲がりくねった坂道」として知られるのが、ロシアン・ヒルにある ロンバード・ストリート(Lombard Street) です。
しかし地元では、こんな声もある。「有名なのはロンバード・ストリート。でも、本当に“曲がっている”のは別」そのもう一つの坂が、ポトレロ・ヒルにある バーモント・ストリート(Vermont Street) 。
じゃ、“世界一”はどちらなのよ?
まずは、坂の急さ。これには二つの物差しがあります。
道路標識にある「%」これは勾配(こうばい)のことで、水平に100メートル進んだとき、何メートル上がるかを示す値です。一方「度」は、地面との角度。数学的には、勾配(%)=tanθ × 100 で表され、同じ坂でも“%”で語るか“度”で語るかで、印象は変わりますよね。
さらにややこしいのが、「曲がりくねり度」。急さではなくて、カーブの半径つまり”曲率(きょくりつ)”で決まります。
“世界一”の称号は、何を測るかで決まるわけですね。
ロンバード・ストリートがこれほど有名になった理由の一つは、完璧なまでの景観にありはしないか?億単位のお家が均整の取れた美しく並ぶ。趣のあるレンガのジグザグ道。細部にまで手入れされた花壇には、約2000本のアジサイをはじめさまざまな植物が植えられている。ゆっくりと下る車と、その様子を見守る観光客。まるで舞台装置のように整えられた坂道です。
1920年代、この区間の勾配は27%(約15度)という急坂だった。馬車も(車も)登れないほどの急勾配を解消するため、8つのヘアピンカーブを設け、現在の16%(約9度)まで緩和されました。
そもそも安全のためにできたカーブは、景観となり、やがてアメリカを代表するような観光名所になった。ロンバード・ストリートは、“見せるための世界一”なのだ。
が、「本当の曲がりくねり度」では、あるライバルに軍配が上がってしまうのです。
そのライバルとは、ポトレロ・ヒル地区にあるバーモント・ストリート。20th Stと22nd Stの間に位置するこの道は、観光地としての華やかさはまるで無縁。地味なコンクリート舗装。慎ましい住宅街の一角。観光客の姿は皆無。
この区間のジグザグ部分の勾配は約14.3%。数字だけ見ればロンバードより緩やかだ。しかし決定的に違うのはカーブの半径。ロンバードが8つのカーブを持つのに対し、バーモントは7つ。数は少ないが、一つひとつの曲がりが鋭角で、半径が小さい。サンフランシスコ公共事業局の測定でも、こちらの方が“より曲がっている”とされる。カーブの先が見えない。内側に傾いた路面。ここは、演出されていない坂、車道なのだ。
毎年イースターには「Bring Your Own Big Wheel」というイベントが行われる。大人がプラスチック製の三輪車で坂を滑走する、凄まじいが笑える催しがある。観光地ではない。が、この坂には地元愛に溢れ、ユーモアとサンフランシスコらしさがある。バーモントはまさに“測れる世界一”なのです。
▪️ Bring Your Own Big Wheel (BYOBW)
開催日: イースター・サンデー(復活祭の日曜日)
場所: バーモント・ストリート(ポトレロ・ヒル地区)
内容: 大人がプラスチックの三輪車にまたがり、世界一曲がりくねった坂道を一斉に下るという、シュールなサンフランシスコらしいイベント。
ロンバードでは、車がゆっくりと縫うように次々下りてくる。250段の歩道では人々は写真を撮り、車内から歓声が聞こえる。何から何まで計算された美しさだった。一方でバーモントでは、静寂が広がって、鳥のさえずりだけが聞こえる。遠くに101号線の車の音がする。どんなもんかとカーブに沿って歩くけど先が見えず、歩く足元に意識が向く。傾斜を身体で感じる。ここを三輪車で降りるのか…。と、一台の車が後方から追い越していった。そうだ、ここ車道だったのだ。誰もいないからつい気が緩んで車道を下りていた。しかし、秘密の道みたいでこれもこれで好きだな。
どちらがすごいか?答えは単純ではないなぁ。
(以下は、実際に移動したルートです)
いよいよ、この二つの坂道を踏破するルートは、旅行者には便利なユニオンスクエアから出発。ロシアン・ヒルの華やかな景色から住宅街のポトレロ・ヒルまで。車やライドシェアを使わずに、ケーブルカー&ミュニを乗り継いで、街の日常を眺めながら移動時間は約40分のコース。今回はノブヒルからケーブルカー乗車したので若干補足します。
まずは、ケーブルカーの「パウエル・ハイド線」に乗車します。途中からも乗れると何かであったので、今回は実験的に途中乗車の現状はどうなんだろうとノブヒルからケーブルカーを待ってみました。結論から言えば、やはりターミナル(始発)から乗車した方が時間が読める。特に繁忙期はほぼ満員で運行しているので、閑散期ならまだしも、始発の長い行列にはちゃんとした理由があった。
パウエル・メイソン線に乗ってロンバードを上がる強硬手段もあり、正直くじけそうになりながらもどうにかハイド線乗車できた。安心したのも束の間ロンバードで下車。階段を下りながら、美しい景色を堪能。
ハイドStを線路沿い下りきった場所にギラデリスクエアがある。ミュニバス19番の始発(Beach St&Polk St)、またはロンバードを下ったところでPolk St & Lombard Stから乗車。
↓
ポークガルチ〜シビックセンター〜ソーマ〜デザインディトリクト〜ポトレロヒルと街を縦断し「Rhode Island St & 20th St」で下車。乗車時に降りる場所を告げておけば、ドライバーさんは教えてくれる。
↓
徒歩約5分で、マッキンレー公園からバーモント・ストリートの頂上に到着。
「美しさ」のロンバードか、「数値」のバーモントか。どちらが本当の世界一曲がりくねった坂道かは、ぜひ皆さんの目で確かめていただきたいところです。
華やかなロンバードで記念写真を撮った後は、少し足を伸ばしてポトレロ・ヒルのバーモントへ。住宅街の静寂の中に現れる、まるで迷路のような急カーブ。そこには、ガイドブックには載っていない、坂の街サンフランシスコが隠れています。どちらも一方通行の下り坂。車で攻めるもよし、足腰を鍛えがてら歩いて下るもよし。坂道の街が持つ二つの個性を、ぜひハシゴしてみてくださいね。