モン・サン・ミッシェルだけじゃもったいない、フランス北西部の見どころ7選

公開日 : 2022年12月02日
最終更新 :

フランス北西部の観光地というと、モン・サン・ミッシェルが有名ですが、それ以外にも魅力的な町や観光資源がたくさんあります。モネなど印象派画家が魅了された北西部ノルマンディー地方を中心とした見どころ7選をまとめました。

ノルマンディーの都として栄えたルーアン

旧市街にある大時計 ©iStock
旧市街にある大時計 ©iStock

ルーアンはその歴史をローマ時代までさかのぼることができる古都です。ノルマンディー公国の首府として栄えた旧市街には木骨組みの建物が立ち並び、パリとは異なった景観を楽しめます。また同所は15世紀に起きた英仏百年戦争でフランスを勝利に導いた少女ジャンヌ・ダルクの終焉の地としても有名。ジャンヌ・ダルクは魔女として断罪されて、ルーアンで火刑に処されました。

ルーアン観光のメインはまずノートルダム大聖堂(ノートルダム聖堂はパリだけではなく、いろいろな都市にあり、ルーアンの場合はフランス語で「カテドラル・ノートルダム・ド・ルーアン」)。この大聖堂はモネによって描かれた連作のモデルとなっており、印象派ファンの多くが訪れます。連作のうち『曇天』はルーアン美術館に所蔵されているので、大聖堂と美術館をあわせて訪れてもいいですね。大聖堂の大きさはヨーロッパ有数。ステンドグラスや尖塔は必見です。

旧市街のグロ・オルロージュ通りにあるルネサンス様式の14世紀の大時計もルーアンを象徴するシンボルです。時計台の門は16世紀の建物で、大時計は町のシンボルとなっています。

白亜の断崖絶壁が美しいエトルタ

エトルタの町とアヴァルの崖 ©iStock
エトルタの町とアヴァルの崖 ©iStock

ノルマンディーを代表する景色といえば必ず入ってくるのがエトルタです。パリから近い保養地として、夏などの観光シーズンには多くの人々でにぎわいます。

エトルタの象徴といえば、エトルタの町から海に向かって左手、白亜の断崖と岬の中央が穴のようにえぐれた「アヴァルの崖」、とその横に立つ「針岩」です。名前は知らなくても写真やポスターなどで見たことがある人は多いかもしれません。アヴァルの崖の逆側、エトルタの町の右手にはアモンの崖があります。アモンの崖の上は「エトルタの庭園」と呼ばれており、ここには現代アートが展示されています。

エトルタには、怪盗アルセーヌ・ルパンのシリーズを書いた推理冒険小説作家のモーリス・ルブランの家が「怪盗ルパンの家」として公開されています。アヴァルの崖は、このルパンシリーズの『奇巌城』にも登場。散策をしながら、名物の魚介類に舌鼓を打ち、ゆっくりと時間を過ごすには絶好の場所です。

Le Clos Lupin(怪盗ルパンの家)
住所
15 rue Guy de Maupassant 76790

現代建築ファンは必ずチェックしたい町ル・アーヴル

サン・ジョセフ教会の尖塔と現代建築群 ©iStock
サン・ジョセフ教会の尖塔と現代建築群 ©iStock

セーヌ川河口に位置するル・アーヴルという港町はフランスを代表する海の玄関口です。古来より主要な町であったことから、第二次大戦ではドイツとの戦争で甚大な被害を受け、かつての町並みが失われました。しかし、1945年から1964年にかけて行われた建築家オーギュスト・ペレによる都市計画により復興し、のちにそれら再開発によってできた現代建築群は世界遺産に登録されました。

このペレによる再開発地域には、サン・ジョセフ教会、集合住宅であるアパルトマン・テモワン・ペレやポルト・オセアンがあります。ただ、集合住宅は今も人が暮らす建物のためすべてを自由に見ることはできず、アパルトマン・テモワン・ペレのみ一室が見学用に公開されています。

またル・アーヴルは、ノルマンディーのほか地域の例に漏れず印象派画家たちの題材になった場所でもあります。市内にあるアンドレ・マルロー近代美術館は近代絵画が充実した美術館で、パリのオルセー美術館に次ぐフランスにおける印象派絵画のコレクションがあります。

印象派が愛した港町オンフルール

オンフルールの旧港 ©iStock
オンフルールの旧港 ©iStock

ル・アーヴルが港町として整備される前に、セーヌ川河口にある海の玄関口だったのがオンフルールです。見どころはフランス最古で最大の木造教会であるサント・カトリーヌ教会。英仏百年戦争によって被害を受けた教会を再建する際に、経済的な理由から石材を使えず木材を使ったことから、この独特な教会が生まれました。

サント・カトリーヌ教会を中心としたエリアはオンフルールの旧市街になっており、木骨組みの建物が連なるノルマンディーらしい町並みを見ることができます。

オンフルールは、モネの師である画家ブーダン、そして作曲家エリック・サティの生まれ故郷でもあります。市内にはブーダンを中心とした19世紀印象派の絵画を集めたウジェーヌ・ブーダン美術館やサティの生家があります。絵や音楽に興味がある人はあわせて訪問することをおすすめします。

フランスの北の高級保養地ドーヴィル

ドーヴィル名物のビーチパラソル ©iStock
ドーヴィル名物のビーチパラソル ©iStock

ノルマンディー随一の高級リゾートといえば、ビーチにカラフルなパラソルが並ぶ風景が印象的なドーヴィルです。町は上流階級の社交場である雰囲気をまとっており、最寄り駅前であるドーヴィル・トゥルーヴィル駅から西側に広がるドーヴィル市内には、エルメスやルイ・ヴィトンといった高級ブランド店、競馬場、カジノなどがあります。また季節によっては映画祭、馬の競売会、クリケットなどのイベントも行われます。

ドーヴィルはクロード・ルルーシュ監督の映画『男と女』でも知られています。ビーチでは名物のキャビンとパラソルを借りてゆっくりと過ごしてみましょう。

ドーヴィル・トゥルーヴィル駅から東側もリゾート地になっています。こちらはトゥルーヴィル・シュル・メールという町で、ドーヴィルよりカジュアルな雰囲気。同じく白い砂浜が広がる人気の保養地なので、好みに合わせて滞在を使い分けてみましょう。

ノルマンディー公ギヨーム2世が城を構えたカン

カンのサン・ピエール教会 ©iStock
カンのサン・ピエール教会 ©iStock

世界史に興味のある人なら一度は訪れたい町カン。1066年にイングランドを征服したノルマンディー公ギヨーム(英名ウィリアム)2世の居城で有名な町です。カン城は、今は城壁が残るのみですが、敷地内にはカン美術館とノルマンディー博物館があります。カン美術館では15〜20世紀のヨーロッパ絵画を、ノルマンディー博物館では先史時代から現代までのノルマンディー地方の歴史を知ることができます。

またカンは、第二次大戦では激戦地のひとつでした。そのためサン・ピエール協会をはじめ、町なかの多くの建物が破壊されました。現在カンに建つサン・ピエール教会は戦後に再建されたものです。ただし男子修道院と女子修道院というふたつの修道院は幸いにも戦禍を逃れたため、当時からの姿を現在も見ることができます。

戦争の悲惨な歴史を持つカンで必ず訪れたいのが平和記念館。第二次大戦でフランスを含む連合国軍が、ナチス・ドイツに対する形勢を逆転させたノルマンディー上陸作戦などについて展示されています。平和記念館を訪れることで、カンの町や各観光スポットがより重層的に見えてくるはずです。

モネの名作『睡蓮』が生まれたジヴェルニー

『睡蓮』のモデルとなった池 ©iStock
『睡蓮』のモデルとなった池 ©iStock

モネが晩年を過ごした村がジヴェルニーです。今も残る家と敷地には、世界的名画『睡蓮』のモデルとなった庭と池があり、モネのファンが世界中から訪れます。庭園内は睡蓮の花だけではなく、季節ごとに花々が咲き乱れ、美しく手入れされています。

家の中は当時のまま残されており、またジヴェルニーの村内にある教会墓地にはモネの墓もあります。ゆっくりした時間のなか、モネの印象派の世界観をじっくりと噛みしめて滞在したいです。

ジヴェルニーを訪れる前後には、パリ市内にあり『睡蓮』が飾られているオランジュリー美術館もあわせて訪れることをおすすめします。

筆者

フランス特派員

守隨 亨延

パリ在住ジャーナリスト(フランス外務省発行記者証所持)。渡航経験は欧州を中心に約60カ国800都市です。

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