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国連開発計画(UNDP)対外関係・アドボカシー局ジャパン・ユニット
パートナーシップ専門官 水上貴裕
「地球の歩き方Web」愛読者の皆さん、グッドモーニング! 2025年の春からJICAの連携協力調査員として、米国ニューヨークにある国連開発計画(UNDP)本部に出向している水上です。今回は、私が所属しているUNDPという組織についてご紹介するとともに国連本部周辺の様子や、日本の支援で実施されている地域開発に関するUNDPの最新プロジェクトまで、2月のアメリカから幅広く紹介したいと思います。
ニューヨークに国連の本部があることは、多くの人が知っていると思いますが、その目の前にある私の出向先、UNDPのことはご存じでしょうか?
国連機関といえば、コロナ禍の保健対策などで注目を浴びた世界保健機関(WHO)、世界遺産の登録や保護を行っている国連教育科学文化機関(UNESCO)、国際金融と為替相場の安定化を担う国際通貨基金(IMF)などが有名ですが、私のいるUNDPもそのひとつ。国連による発展途上国への開発援助をリードする機関で、人道支援や社会開発、災害対策などのさまざまな分野における協力メニューを通じて全世界での持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指しています。“国連版のJICA”といえるかもしれません。
ちなみに、国連を構成する組織の大部分は米国外に本部を置いている(例えばWHOの本部はスイスのジュネーブ、UNESCOの本部はフランスのパリにある)のですが、UNDPは国連本部ビルがあるのと同じニューヨークに本部を置いており、そのビルはまさに国連本部の真正面にあります。
UNDPを含む多くの国連機関ビルには、職員と招待された来客者しか入れませんが、国連本部ビルは観光目的でもWebで事前予約すれば無料で見学することができます(カフェや国連の郵便局、オリジナルのお土産が買えるギフトショップなど盛りだくさん!)。
また有料になりますが、有名な総会ホールや安保理会議場などの内部施設を見学できるツアーも、英語や日本語など各種言語で提供されています(参考:ニューヨーク市のマンハッタン、ミッドタウンにある国連本部を訪れてみませんか? | 国連広報センター)。
普段は開かれた雰囲気で観光にもおすすめな国連本部周辺ですが、注意したいのは年に1度、9月中旬に開かれる国連総会のタイミング。この時期は全世界から大統領や首相などの首脳が一堂に会するという事情からセキュリティレベルが大幅に引き上げられ、一般見学ができないどころか、周辺のストリートがすべて地元警察や国連の警備員によって“超”厳重に守られ、立ち入り禁止になるというガチガチの体制。
この時期に観光に来ることは(珍しい景色ではあるけれど)まったくおすすめしません……ホテルもかなり高騰します。
私の所属しているUNDPの対外関係・アドボカシー局の職員にとって大事な仕事のひとつが、国連に出資している多くの国々とのパートナーシップを強化すること。日本担当として、日本のニーズやトレンドを踏まえたUNDPの新しい連携事業を関係部署と一緒に相談・企画したり、メディア発信や事業の現場を通じた日本による支援の“見える化”を強化したりすることが私の主な仕事です。
UNDPが実施しているプロジェクトには、日本政府の拠出予算により実施されているものが数多くありますが、そのなかで街づくりにも関係するプロジェクト3つをピックアップして紹介します。
Digital Xは、UNDPと日本政府が連携し、途上国・新興国の「デジタル変革(DX)」を後押しするプロジェクトです。
例えば、人口爆発や未整備な社会インフラなどが原因で、医療や教育、ビジネス関連などの行政対応が追い付いていない新興国の都市で、オンライン行政システムやデータ活用を通して、効率よく公的なサービスが人々に行き渡るような解決策を紹介します。
この取り組みを通じて、新興国が生活や経済活動により適した場所に生まれ変わることが期待されるほか、日本生まれの技術を含むデジタル化のアイデアが世界に展開されていくことを支援する役割もあります。
(詳細:Digital X、undp.org/sites/g/files/zskgke326/files/2025-12/dx30-jpn_1.pdf)
津波被害のリスクが高い地域において、自治体・学校・住民などが地域ぐるみで命を守るための連携を強化するこのプロジェクトです。
日本が東日本大震災などの経験を通じて蓄積してきた、防潮堤整備や早期警報システム、避難訓練の仕組みづくりでの多くのノウハウをUNDPとともに共有し、東南アジアなどの沿岸コミュニティの防災力を底上げするため、日本でもおなじみの集団避難訓練の習慣を広めたり、災害発生時の対応マニュアルや避難ルート、注意看板などの整備をしたりしています。
日本の強みを世界に活かすこの取り組みは、地元住民だけでなく、こうした国々に渡航する旅行者の安心にも直結。ビーチリゾートで安心してのんびり過ごせる背景のひとつには、こうした地道な防災協力があるといえます。
(詳細:Regional Tsunami Project | United Nations Development Programme)
最後に紹介するのは、内閣府の支援を受けてUNDPが実施している、日本の民間企業や団体と連携して、新興国の社会課題を解決するイノベーション支援プロジェクトです。
世界91カ所に設置されている「UNDPアクセラレーター・ラボ」(開発課題の解決につながるビジネスを手掛けるスタートアップ企業などを支援するUNDPの一部門)が日本の民間企業と連携し、途上国の開発課題の解決策を創案する取り組みをしています。自社・自団体の強みを課題解決に活かしたい企業・団体や、SDGs達成に貢献したい企業・団体へ向けた公募で、その事業化支援を行います。
例えば、日本の一般社団法人が手掛ける住民参加型デザインを活用したトルコにおける公共スペースの整備などの実例があり、本連載のテーマである街づくりの分野でも活用されている取組です。(詳細:Japan SDGs Innovation Challenge | United Nations Development Programme)
今回はニューヨークの国連本部周辺の様子や、日本が関わっているUNDPのプロジェクトについてご紹介しました。ここ最近、国連関係者の間でもっとも重要なトレンドとなっているのが、80周年を迎えた国連における大規模な組織改革。
トランプ政権が国連向け拠出予算を大幅にカットしたことなどの影響もあり、国連はかつてない経営のピンチを迎えており、様々な国連機関の統廃合や移転など、経営合理化に向けたドラスティックな改革の真っただなかにいます。そのような情勢のなか、私たちパートナーシップ担当に求められるのは、国連というシステムを各国が支えることが、単に世界のためになるだけでなく、予算を出して支援しているその国自身にとってどんなメリットに繋がるのか、相手の立場になってしっかりと考え、分かりやすく説明できるようになること。
“情けは人のためならず(人に親切にすることは、相手のためになるだけでなく、巡り巡って自分に良い報いとして返ってくる)”ということわざを体現できるように、国連職員としての目線と、ひとりの日本人としての目線、そのふたつをバランスよく持って日本と国連の橋渡しという任務を果たしていきたいな、と毎日思いながら仕事をしています。
大寒波が来ていたニューヨークもだんだん暖かくなってきています。皆さんもぜひ、国連本部にも遊びにいらしてください!