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マーチソン・フォールズ国立公園はウガンダ北西部に位置する国立公園です。以前、出張帰りに同公園を横断する道路を使用したことはありましたが、せっかく同国に長期間滞在しているので、是非一度サファリにも参加したいと思い立ち、赴くことにしました。地球の歩き方編集室はウガンダのおすすめ観光スポット5選として「エンテベ動物園」、「カスビ・トーム」、「ジンジャ(ナイル川の源流)」、「ブニョニョ湖」、「シピ滝」を挙げていますが、マーチソン・フォールズ国立公園はそれらに勝るとも劣りません。10ある同国の国立公園の中で最大且つ最も多様性に富んだ地形を有し、高確率でアフリカ・ゾウ、キリン、ライオン等が見られることから、国内外の観光客を魅了しています。
首都カンパラから約230kmの距離を5~6時間かけて北上すると「キチュンバニョボ・ゲート」に到着します。ウガンダ野生生物保護庁(UWA:Uganda Wildlife Authority)の事務所で入園料を支払い、名簿に手書きで名前や入園日、滞在宿泊施設名等を記入します。入園料はウガンダ国籍者か外国籍者か、また、居住者か非居住者かでも設定料金が異なります。居住者の場合は、公的身分証の提示を求められることがあるため、携帯推奨です。
支払いを終えた後、自家用車で公園内に進入し、滞在するロッジを目指します。公園内を南北に縦断する主要道路沿いでは大小様々なサル、イノシシ、鳥類が見られるので、道中の景色も大変楽しいものです。運が良ければ道路を横断するゾウの群れに遭遇することもあるかもしれません。
マーチソン・フォールズ公園内には、数多くの宿泊施設が点在しています。価格帯もお手頃なものから、高級で質の高いものまで様々な選択肢があるため、予算や好みに応じて選択することが可能です。
筆者はウガンダ国外からの観光客が殺到する欧米の休暇シーズン前に同公園を訪問したため、宿泊施設の予約窓口を通じて、ゲームドライブ前夜にツアーガイド(公認のレンジャー)及び車両の予約をしました。宿泊施設によって保有するサファリ用車両の数にも限りがあるため、特定の日にゲームドライブを楽しまれたい場合は、宿泊が決まり次第極力早いタイミングで予約することを推奨します。ゲームドライブは日の出前と日の入り後の二択から選択するのが一般的です。日の出前に出発する場合は、活性の高い大型動物に遭遇できる可能性が高い上、夜が明けるにつれて、サバンナでは広範囲を見渡すことができるようになります。一方で、夜間のゲームドライブでは、視認性の低下は否めないものの、ライオンやヒョウ等、稀少な夜行性動物がありのままに闊歩する様子を観察できるなど日中とは異なる魅力があります。
言わずと知れた陸上最大の哺乳類です。ウガンダに生息する5,000頭余りのアフリカゾウのうち、約1,000頭がマーチソン・フォールズ国立公園に生息していると言われています。アフリカゾウは長老のメスが群れを率いることで知られており、同行したガイド曰く、これは最も賢く人生経験豊富な個体をリーダーにすることにより、群れの生存確率を最大限に保つためだそうです。女性の社会進出(支援)に未だ大いに向上の余地が認められる日本社会に関わる筆者としては、短絡的かもしれませんが「人間もアフリカゾウ・モデルを採用すべき」等という感想を抱いたりしました。
ウガンダに生息するキリンは「ヌビア・キリン(Nubian Giraffe)」として知られており、こちらも同公園では1,000頭前後が生息しています。国内屈指の個体数を誇っており、国内の異なる保護区にも同公園から再導入の試みが進められているようです。同種は四肢の膝下に斑紋がないのが特徴です。
所々にアフリカ水牛の群れも見られます。ライオンの捕食対象筆頭動物であるものの、現在同公園では健全な数の個体数が維持されています。
間近で見られる機会は限定的ですが、稼働中の他のレンジャーから目撃情報を入手できたため、辛うじて木の上で水牛を観察しているメスのライオン1頭を見ることができました。「アフリカのビッグ5(The Big Five of Africa)」と称されるアフリカ大陸を象徴する大型哺乳類(ライオン、ゾウ、ヒョウ、水牛、シロサイ)の中でも個体数が少なく、予断を許さない状況が続いています。密猟者による殺害の他、家畜への被害を防ぐために牛飼いらによる毒殺も頻発しているようです。
ライオン自体を見ることができなくても、赤土の大地を観察すると、足跡が見られます。
アルバート湖に向けて1時間半ほどサバンナを西進すると、アルバート湖に到達します。湖の対岸は間もなくコンゴ民主共和国の領土です。カバやナイルワニの楽園になっているので、残念ながら遊泳には適していません。同公園内のカバの個体数は過去に数回激減したことがありますが、必ずしも密猟による影響ではなく、ナイル川に沿ってコンゴ(民)領土に移動していたという見解も報告されました。ナイル川のような大河が生息地となっていると、個体数の把握にも一苦労です。
アルバート湖を眺めていると、その辺にいたおじいさんが「後はお前が仕上げろ」と、描きかけのキリンの絵を手渡してきました。やや雑なアプローチと感じましたが、おじいさんなりのおもてなしだったのかもしれません。
偶蹄類の動物で、記憶力が極めて低い生き物です。どれくらい記憶力が低いかと言えば、ライオンに追われて走り出すものの、すぐに襲われかけた事実が記憶から抜け落ちてしまい、「何故、自分は今は知っているのだろう」と疑問を抱き止まってしまう程だそうです。
シカに似た姿をしているものの、ウシ科の動物だそうで、ガゼルやヌー等とは近縁です。首都カンパラではインパラ含む、同国に生息する様々なウシ科動物のブッシュミート(古来より地域住民が貴重なタンパク源としていた野生動物の肉)を賞味する機会があります。日本で直に見る機会は早々ありませんので、是非目でも、舌でも楽しみたい動物の一つです。
大人1人あたり35米ドルで、川辺の動物を眺めながら、マーチソン・フォールズ(マーチソンの滝)手前まで往復3時間程度のクルーズが楽しめます。
このような小規模の群れが1~2km程の間隔毎に見られます。数えてゆくとかなりの数になります。
ウガンダ野生生物保護庁(UWA:Uganda Wildlife Authority)によると、2021年から2023年の僅か3年間で3,000人を超える密猟者(及び違法的な野生動物の保有容疑)が逮捕されています。ただ、これは氷山の一角に過ぎず、実際には牙や毛皮、臓器目当ての密猟の他、獣害対策として毒餌や罠を濫用した野生動物の殺傷が横行しています。これらに対応するためには、同庁の管理体制強化のみならず、地域住民との共存を確立するためのアプローチは不可欠です。地域住民へのアプローチに関しては、これまで国際機関も様々な試みを実施していましたが、昨今は資金繰りが難航しており、諸外国による対ウガンダ援助方針の転換による影響は必至です。
サファリに参加する外国人観光客に対して、これら負の側面を積極的に話す地元ガイドは少ないですが、紛れもない事実です。野生動物の観察を楽しむと同時に、現実世界の問題にも目を向ける機会にもしていただけますと幸いです。
■ マーチソン・フォールズ国立公園(Murchison Falls National Park)
URL:https://ugandawildlife.org/
入園料(外国人非居住者)1人あたり:45米ドル/1日
入園料(外国人居住者)1人あたり:35米ドル/1日
入園料(東アフリカ共同体(EAC)居住者)1人あたり:2万5000ウガンダ・シリング(約7米ドル)/1日
自動車乗り入れ: 1台あたり20,000ウガンダ・シリング(約5.61米ドル)/1日
記載価格は2025年7月19日時点、OANDA(148.62円=1米ドル=3,559.19シリング)発表の両替レートに基づいて算出しています。
入園料は予告なく変更される可能性がありますので、訪問を予定される場合、事前にご利用のツアー会社やウガンダ野生生物保護庁にお問い合わせください。