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【ウガンダ】通過するだけで楽しめるマーチソン・フォールズ国立公園

村中 千廣

村中 千廣

タジキスタン特派員

更新日
2024年12月13日
公開日
2024年12月13日
@chivillain

マーチソン・フォールズ国立公園はウガンダ北西部に位置する同国最大の国立公園です。首都カンパラ市からの良好なアクセスと「アフリカのビッグ5(The Big Five of Africa)」と称されるアフリカ大陸を象徴する大型哺乳類(ライオン、ゾウ、ヒョウ、水牛、シロサイ)の内4種が生息していることから、一大観光スポットとなっています。国立公園内には比較的リーズナブルなものから高級なものまで大小さまざまなロッジが点在しており、利用料を支払うことで昼夜問わず滞在が可能です。あいにく筆者はウガンダに半年以上滞在しながらも未だサファリの経験はありませんが、同国北部へ出張する機会があったため、マーチソン・フォールズ国立公園を横断する道路を使用することになりました。道路は国立公園内を南北に横断しますが、道路を逸れて公園内に立ち入らなければ入園料は発生しません(「カンパラ-グル高速道路(Kampala-Gulu Highway)」の通行止めによる一時的措置であり今後変更の可能性があるため、公園立ち入り前に要確認)。

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グル-アルア道路

©︎chivillain グル-アルア道路(左手がマーチソン・フォールズ国立公園)

同国の南北を結ぶ最重要経路「カンパラ-グル高速道路(Kampala-Gulu Highway)」が、通過点ナイル川に架かるカルマ橋に安全上のリスクが認められたため一定期間通行止めとなっています(2024年12月10日現在)。近日中に再度開通する予定である旨報道されているものの、工事は応急処置に過ぎないため、新たな橋が建設されるまでは大型車両の通行は規制されます。結果的に南北を行き来する人々は距離にして100km程の迂回を強いられることとなり、同国の物流に少なくない影響を及ぼしています。

そのような背景がありマーチソン・フォールズ国立公園内を横断する迂回路を通行することになりましたが、追加で1時間以上を要する迂回に文句を垂れる同僚をよそ目に、「野生のゾウやキリンが見られるかもしれない」という期待を抱いた筆者は一人興奮が収まりません。

©︎chivillain 公園の敷地に見える動物

グル-アルア道路を西部に進み左手に国立公園の敷地が見えるようになると、間もなくインパラのような動物が遥か遠くまで点在しているのが目に入りました。

マーチソン・フォールズ横断道

©︎chivillain マーチソン・フォールズ国立公園北ゲート

北部ゲートで入園の登録を行います。横断道路を通行するだけの場合、料金は無料です(2024年11月時点)。公園敷地内だけでも距離にして約90kmある上、園内の走行には速度規制が設けられているため、横断には2時間以上を要します。入園前のお手洗い休憩は必須です。

  • ©︎chivillain 速度計測システム
  • ©︎chivillain 時速40km未満の場合、笑顔が表示される。

公園内には数10kmおきに速度計測装置が設置されており、運転手に速度超過の警告を行っています。道路の両脇にはフェンスなどの障害物が一切設けられておらず、野生動物は自由に道路を横断することができるようになっています。「動物が優先的に安全に道路を横断できること」が大前提の仕組みですが、大変残念なことに、制限速度を度外視して猛スピードで公園内を走行する車両は後を絶ちません。

筆者が乗車していた車の運転手も制限時速を守らない車の背後にぴったりと寄せながら、速度計測システムで検知されないよう通過するという姑息な真似をしていたため、「頼むから安全走行してくれ」と懇願する筆者と押し問答をしながら最初の数10kmをやり過ごしました(移動時間に余裕があったことから、急く必要はないことを最終的にご理解いただけた)。

生息動物

キリン

©︎chivillain

誰もが知る大型哺乳類のキリン。野生で闊歩している様を目にすると、想像していた以上に感動的です。ウガンダ野生生物省(UWA:Uganda Wildlife Authority)による懸命な保全活動の効果もあり、現在マーチソン・フォールズ国立公園では推定1500頭以上の個体が生息しているとされています。

イノシシ

©︎chivillain イノシシ

沿道には数多くのイノシシが見られました。

水牛

©︎chivillain 水牛

草原地帯では水牛の群れが一望できます。

ヒヒ

©︎chivillain ヒヒ

日本では動物園しか拝むことができない大きな霊長類が間近で見られます。自動車への恐怖心が薄れているのか、道路上で寛いでいる個体も見られました。

ゾウ… が横断した痕跡

©︎chivillain ゾウが好んで横断するとされる場所

大草原を抜けて緑が生い茂る山林地帯に入った後は沿道に座るヒヒやイノシシ以外の動物を視認することは困難になりましたが、所々にゾウの横断地帯である旨を運転手に警告する標識が立っていました。ゾウが見られなかったのは残念ですが、僅か数時間前に野生のゾウの群れが横断したという場所を通過し、ゾウの存在を感じられたことには大きな喜びを感じました。

おわりに

©︎chivillain

残念なことに、園内で定められた制限速度を違反する運転手は後を絶ちません。2024年11月には道路を横断中に大型トラックに衝突されたゾウが命を落としました。野生のゾウによる襲撃で田畑を荒らされたり、人間が死傷する事例も度々報告されるウガンダでは、必ずしもゾウの死亡事故に対して同情的ではないものの、遠くない将来の絶滅が危惧されているアフリカゾウの個体数保全は国際社会全体の課題であると言っても過言ではありません。また、かつてマーチソン・フォールズ国立公園にも生息していた「アフリカ・ビッグ5」の1種であるシロサイは、人間の干渉も決定的な要因となり、同公園からは姿を消してしまいました。東部アフリカの国立公園を訪問する際は、その感動を一過性のものとせず、大型哺乳類が個体数を減らしている背景や保全のために何ができるのか考える機会にもできたら素敵だと思います。

■ マーチソン・フォールズ国立公園(Murchison Falls National Park)

URL:https://ugandawildlife.org/

入園料(非居住外国人)1人あたり:45米ドル

入園料(居住外国人)1人あたり:35米ドル

入園料(EAC居住者)1人あたり:2万5000ウガンダ・シリング

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