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2024年6月7日公開の『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』の試写会が5月27日に行われました。上映後のトークイベントでは地球の歩き方旅の図鑑シリーズ『W29 世界の映画の舞台&ロケ地』を編集した清水真理子が映画評論家の森直人さんと映画の見どこにちなんだ旅の醍醐味を語りました。
物語は主人公のハロルド・フライに1通の手紙が届くところから始まります。
手紙の差出人はハロルドのかつての同僚クイーニーからで、ハロルドは彼女がガンを患い余命わずかであることを知ります。
手紙の返事をポストに投函しに行くハロルドですが、ある会話をきっかけに800km先のクイーニーが入院しているホスピスを目指して歩き始めることとなります。
800kmの道中で様々な風景や事情を抱えた人と出会うことでハロルドの心境もめまぐるしく変化し、妻のモーリーンや過去の自分とも向き合うきっかけとなり、やがてハロルドの行動はイギリス中を巻き込む一大旋風を巻き起こします。
ハロルドがクイーニーに伝えたかった想いとは何なのか? 何かを始める時のきっかけは最初の一歩を踏み出す勇気だということを教えてくれる作品です。
試写会上映後に行われたトークイベントでは、地球の歩き方旅の図鑑シリーズ『W29 世界の映画の舞台&ロケ地』の編集者、清水真理子が登壇し、映画評論家の森直人さんとともに映画を見ての感想や「旅」について語りました。
清水真理子(以下・清水):見終わったときに心が浄化されるというか、デトックスされるような作品でした。
清水:作品内ではあえてなのか、メジャーな観光スポットが出てこないことが新鮮でした。たぶん、イギリスの人にとっては馴染みのある風景なのかもしれませんが、日本人にとってはほぼ知らない場所ばかり。もし有名観光スポットが出てきたらそっちに気が行ってしまうかもしれませんが、そういう場所が登場しないことで、背景の場所がストーリーに勝たない。その土地の日常的な風景の中をハロルドが通っていくことによって、彼の旅が特別なものであることが強調されているように感じられます。
清水:時代ですよね(笑)。今は初めて訪れる場所でも事前に地図アプリで調べることができるので、旅行前の情報量がアナログ時代とは比較にならないほど多いです。今回、ハロルドは携帯電話も持たずに手ぶらで旅をしているので、90年代か2000年代初頭くらいまでのアナログな、昔の“旅行あるある”が詰まっていて懐かしさを感じました。例えば公衆電話でコインの減りを気にしながら早口で喋る様子など、あの独特の慌ただしい感じは懐かしさを感じました。
清水:思いますね。一人旅の場合は特に、移動の時間とかに色々な思いを巡らせるので、自分と向き合わざるを得なくなるというのはあると思います。ハロルドの場合、クイーニーに会うまでは全部移動時間なので、否が応でも自分の心と向き合うことになりますよね。家に居たら煮詰まってしまうような思考回路も、新しい景色を見たり人と出会ったりすることで、心の中の余計なものがそぎ落とされて、本当に大切なものがみえてくるというか。思考を前進させてくれる力が旅にはあるのかもしれません。
清水:現代ではインターネットやSNSが発達して、旅に出る前にかなりの量の情報を収集できますが、そういった情報は視覚と聴覚でしか得られませんよね。実際に現地を訪れてその土地の空気や匂い、光や温度、湿度など五感を使って体に記憶させることで、その土地への愛着って生まれると思うんです。あとはやっぱり現地の人との出会いが一番の醍醐味ですね。自分とは違う考え方や感覚の人と出会うことによって視野が広がります。
清水:ハロルドが旅をすることを決めたとき、たぶん見慣れているであろう田園風景を見て「美しい」と思わず言葉がこぼれるようにつぶやくシーンですかね。旅に出る前は色々あってもいざ旅立つと決めたら視界が開けて、いつもの景色が美しく見える感覚ってありますよね。ハロルドの場合は娯楽的なものではなく覚悟が必要な旅ですが、新しいことを始めようと思って一歩踏み出す時の高揚感は旅人として共感できます。
清水:旅好きとしてはとっても旅に出たくなる映画だと思います。観光名所ではないイギリスの日常感漂う風景を感じるために映画に出てくるそれぞれの街に行ってみたくなりました。作品内の旅のテーマが「贖罪と救済と再生」なので、心のデトックスにも最適な素敵な映画です。ぜひ多くの方に見ていただきたいと思います。
物語の舞台となった場所をメインに、一度は訪れたい絶景のロケ地などを紹介。観るとその国の文化や歴史の知識が深まる映画を422作品ピックアップし、舞台となった場所の、作品とからめた見どころを旅の雑学とともにご紹介。
W29 世界の映画の舞台&ロケ地
422作品の物語の聖地を旅の雑学とともに歩こう
旅の図鑑
2023/07/06発売422の映画作品の舞台やロケ地となった場所へご案内。アジアからアフリカまで、物語の世界を旅してみよう。
422の映画作品の舞台やロケ地となった場所へご案内。アジアからアフリカまで、物語の世界を旅してみよう。