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雪景色の大徳寺・高桐院。
前回寄せて頂いたのは、11月の紅葉が始まる頃でした。
今は白い世界です。
参道も白い世界。
真っ直ぐに延びる参道は、約50m。
直線の参道の左右には楓の木々と竹林。
参道の竹の手すりは、高桐院でとれた孟宗(もうそう)竹。
高桐院は、戦国時代を生きた細川忠興と、その妻ガラシャが眠る
細川家の菩提寺。
高桐院の書院は、千利休の邸宅を移築したもの。
千利休は(1522年~1591年)、織田信長と豊臣秀吉に仕えて信頼を得ますが、
最後は秀吉の逆鱗に触れ、切腹を命じられています。
無駄な虚飾を避け、わびさびの世界を追求した利休と、桃山文化に見られる
絢爛豪華な世界を好んだ秀吉とでは、相容れないものがあったのかも知れませんが、
改めて戦国の厳しさを思います。
書院に入りました。
赤もうせんの向こうには、雪景色の楓の庭。
楓の庭には石も築山も白砂も池もなく、石燈篭が一基。
楓と竹林の潔い景色が広がります。
高桐院にはもう一基、灯篭があります。もう一基の灯籠は西の庭の奥にひっそりと佇んでいます。
この墓標の下には、細川忠興とガラシャ夫人が眠っています。
灯籠は、茶道の師匠である千利休の形見。
元々この灯篭は、利休の所有物でありましたが、秀吉に目を付けられます。
秀吉に渡したくない利休は、自ら灯籠の裏を砕き、「欠陥品を渡す事は出来ません」と断ります。
利休は切腹する際に、この灯籠を細川忠興に譲り、忠興も一部を砕き「無双」と銘を付けて
参勤交代の時にさえ携えたと言われています。
利休に対する敬意と共に、ガラシャ夫人と共に、この下で眠りたいと願う忠興の思いが伝わって来ます。
書院の初春を彩る盆栽に、見入ってしまいました。
高桐院は、参道から書院、
楓の庭から建物の隅々まで見事な設計に基づいて
作られています。
茶人・千利休の、素晴らしい感性が伺える世界。
利休が説いた茶道の心得は、「一期一会」。
『あなたとこうして出会っているこの時間は、
二度と巡っては来ない、たった一度きりのものです。
だから、この一瞬を大切に思い、
今出来る 最高のおもてなしをしましょう。』
高桐院は京都観光の中でも人気の寺院で、
年間約6万人が訪れる参拝者の1/3が、
11月の1ヶ月間に集中します。
冬の高桐院。
凛と冷え込んだ大気が、静寂と歴史を伝えてくれています。
こちらの詩は、柴山全慶老師の詩。
《花語らず》
「花は黙って咲き
黙って散ってゆく
そして再び枝に帰らない
けれどもその一時一処に
この世の総てを託している
一輪の花の声であり
一枝の花の真(まこと)である
永遠にほろびぬ生命の歓びが
悔いなくそこに輝いている」
雪の高桐院。
凛と冷え込む気温の中、美しい景色を頂きました。
《高桐院》
◎ 所 京都市北区紫野大徳寺町73-1
◎ アクセス 地下鉄北大路駅2番出口→徒歩15分。
市バス1・205・206系統で5分、バス停:大徳寺前下車、徒歩5分。
◎拝観 9~16時 400円