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教育機関でありながら、トラベルガイドに観光スポットのひとつとして
紹介されることも多い"北海道大学札幌キャンパス"。
"Poplar Avenue in June, Hokkaido University Sapporo Campus"
夏の"北大ポプラ並木"や秋の"北大イチョウ並木"は写真やニュースで見たことがある人もいると思います。
広大な敷地を大学生が自転車で移動するなかを歩くと、
北大生になりきった気分で散策を楽しめるのですが、
"The Hokkaido University Museum since 1999"
さらに北大生気分を満喫できる施設が「北海道大学総合博物館」。
400万点もの標本・資料がある同博物館は2017年7月にリニューアル、入場料無料で一般に開放しています。
"Entrance doors of the Hokkaido University Museum"
博物館建物は1929年に完成、キャンパス内の本格的コンクリート建築では最古のものだそう。
現在も同じ建物内で理学部学生が授業を受けており、キャンパスの雰囲気を肌で感じられます。
写真は↑歴史を感じさせるエントランスの扉。
博物館の見学始めには、札幌キャンパスのジオラマと北大の象徴、"クラーク博士"が出迎えてくれます。
"History of Hokkaido University; Commemorative exhibition room which shows the research of Hokkaido University Emeritus Professor Akira Suzuki as the winner of The Novel Prize in 2010"
続いて、近年、日本にとっても大きなニュースとなった"ノーベル賞"関連のコーナー。
2010年にノーベル化学賞を受賞した鈴木章名誉教授の記念展示室や過去にノーベル賞にノミネートされた研究者の展示があります。
鈴木名誉教授の功績はもちろん、札幌農学校以来の歴史や、過去ノミネートされた研究者の功績がわかり、
さまざまな分野における北大の貢献度に驚きます。
"Exhibitions of Cutting-edge HU on the first floor"
1階・2階では「北大のいま」を紹介。
民間企業とのコラボレーションなども行いながら活動を行う
「フード&メディカルイノベーション推進本部」「北極域研究センター」の研究等を紹介するほか、
総合大学"北大"の全12学部が展開する研究を紹介。
文系から理系まで、各学部が現在進めている研究を紹介しています。
"Medical devices as the exhibitions by School of Medicine and School of Dental Medicine"
医学部・歯学部↑は、実際に触れることができる医療機器の展示も。
"Exhibitions by Schoool of Science"
理学部においては、まさにわくわくする科学博物館です。
"Two-dimensional code by hand, on the board"
展示内容を毎週のように更新する学部もあるそう。
写真↑は、とても印象的だった"手書きの"二次元コード。
実際にスマホで読み取ると、目的の画像が出てきました。
工学部のエリアですが、手書き二次元コードはアート作品に見えました。
そのまま通路をたどっていくと、1階から2階へ学部の研究紹介が続きます。
途中、階段へ続く通路の床に文字が続いています。
これは?!
"Gravity Station in Sapporo, on the first floor of The Hokkaido University Museum"
床の文字をたどっていると、階段手前にも何か設置物があります。
これは「札幌GS」といわれる札幌の"重力基準点"だそう。
国内に定められた一等重力基準点のひとつだそうで、意外な場所にありました。
突如、階段下に現れた札幌GSと"重力の基準"という概念に少なからず感銘を受けました。
日常では触れることがない未知の世界が次々と現れる北大総合博物館です。
博物館内、特に階段は、しばし学術的な空気を離れ、歴史的建造物の趣きを感じるとき。
1階の床から続いていた文字の正体は、階段の踊り場で判明しました。
北大名物(?)のひとつ、歴史ある"恵迪寮(けいてきりょう)"(寄宿舎)の寮歌「都ぞ弥生」です。
(恵迪寮とその寮歌は、道産子にとっては北大同様に有名です)
"Exhibitions by School of Fisheries Sciences, School of Veterinary Medicine and School of Agriculture"
1階に引き続き、各学部の展示です。写真↑は水産学部・獣医学部・農学部。
写真のマンモスは、ロシアのサハ共和国で馬の毛40頭分を使って再現した世界にふたつしかないうちのひとつだそう。
雄ホルスタイン牛の骨格(雄の成牛はほぼ見る機会がないので)を目の当たりにし、その大きさに驚きました。
意表をつく展示内容もあり、思わず笑みがこぼれることも。
"Exhibitions by Hokkaido University's various Resarch Centers"
2階では、部局で行っている北大ならではの研究も紹介しています。
アイヌ文化や旧樺太関連の展示物など、北海道に密接に関連する内容です。
アイヌ・先住民研究センターでは、40歳代以上の道産子にとっては懐かしく感じる、
かつては一家にひとつといってもいいほどポピュラーだった"木彫り熊"や、
なじみ深かったアイヌの木彫り人形も多数見られます。
"Collections in the Interactive Zone"
同じく2階にある「感じる展示室」では、鉱物・岩石や砂など、実際に触れられる展示品が並びます。
個人的には北海道各地の「砂」にロックオン。
鳴き砂で有名な室蘭・イタンキ浜の砂(写真)や、根室・納沙布岬灯台下の砂がありました。
納沙布岬灯台下の砂は磁石に吸い付く砂鉄です。
子どもの頃以来、何十年か振りに"砂鉄"に触れました。
ここからは、3階「収蔵標本の世界」エリアへ。
"Seaweed specimens from Hokkaido on the floor of Storehouse"
目に飛び込んできた通路沿いの展示「北海道の海藻」です。
海藻は浜に行くとよく打ち上げられているので身近な存在と認識していましたが、
改めて展示を見ると、そのサイズ感や種類の豊富さに驚きます。
壁に展示された海藻は、手で触れてよい展示です。
「収蔵標本の世界」は、「地質学」「生物分類学」「考古学」「科学技術史」「医学」に分かれています。
なかでも「医学」のムラージュ(ロウで作った皮膚病模型)は、
写真がない時代、医学を学ぶ際に使った模型で、現在は必要がないために製作技術が失われ、
今後も再現できないであろうといわれる貴重な資料で、展示しているとケースもほとんどないという
北大の総合博物館ならではの展示だそう。
"Collections of Biology"
「生物標本」のエリアでは、アザラシのはく製2頭がこちらを見上げています。
「オホーツク文化中期の集落復元模型」。
学術的観点以上に、ただただ、見るほどに楽しくなってきました。
"Collections of Archaeology"
「古生物標本」エリアは、恐竜の復元骨格模型がずらり。
北海道で発掘されたものもあり、時を超え、恐竜が身近に感じられます。
そして3階奥の「鉱物・岩石標本の世界」。
"Deep-sea coral from Shimamaki Village in Hokkaido"
夜空を背景にした白く美しい枝ぶりの樹木アート!と思ったら、これはサンゴだそう。
まるで宮沢賢治の世界のようで、ほっとする雰囲気です。
樹木と思ったのは、北海道島牧村沖の海底に生えていた"オオキンヤギ"という深海サンゴとのこと。
美しい深海サンゴの容姿に見とれますが、なぜ、サンゴが鉱物・岩石標本に?
それはサンゴも分類法によっては鉱物の一種に分けられるからだそうです。
そういえば、ジュエリーに"宝石サンゴ"がありますね。
"Collections of Mineralogy and Petrology"
このエリアは、光り輝く鉱物に癒されそうな空間です。
見聞きしたことがある鉱物(宝石)もあります。
これまでの展示や標本以上に、ぐっと親近感が出てきました。
"Handmade gravimeter for clear quartz, green olivine and red ruby"
そして次第に学術的観点から鉱物を感じ始めました。
写真↑はこのエリアの展示用に製作したオリジナル「手作り比重計」。
水槽の底から噴き出す水とともに噴き上げられる水晶・かんらん石・ルビーの舞い方を見ると、
それぞれの石の比重が目で見てわかります。
"Peridotite from Samani Town in Hokkaido"
先の比重計にも出てきた"かんらん岩"ですが、ここでは北海道様似町(さまにちょう)産の世界一のかんらん岩を見られます。
さらに一角には、巨大水晶があったりもします。
見覚え、聞き覚えがある"宝石"を含む鉱物を見たのち、
隣の部屋に入ると視界に入ってくるのは、100万分の1のスケールの地球断面図パネル。
"Peridotite xenolith"
気が付けば鉱物・岩石への興味が増し、写真↑の「マントル捕獲岩」が目に留まりました。
地球の固体部分の80%以上を占めるといわれる岩石層の一部だそう。
この岩石層は、地球のなかで最も巨大かつ、つながったひとつの岩石と考えられ、
その証拠に、世界中で採取されたどのマントル捕獲岩も色が同じだそう。
こちらでは、世界各地で採取されたマントル捕獲岩が同じ色であることを実際に見て確認できます。
(この時点で、意識のスケールが少しずつ地球や宇宙規模に変わって行きつつあることに気付きました。)
"Mt. Fuji on the board, Magnitude of the Earth"
そして「地球断面図パネル」。
地球を構成する核から地表の富士山、ハワイのキラウエア火山まで表されています。
"Inner structure of the Earth, with mercury, olivine, quartz, water and air"
パネルや鉱物・岩石を見るうちに"宇宙のなかの地球"という意識が高まっています。
そのなかで見たこの装置(?)は、目からウロコの体験になりました。
コンパクトに見えて、これは地球の層構造を表しています。
ぜひ、手に取ってみてください。「ナルホド!」と思うことがあるかもしれません。
"Einstein Dome with the four reliefs, on the third floor"
鉱物・岩石標本の世界を抜けると、そこは中央階段の「アインシュタインドーム」でした。
半円球の天井と大理石の柱、そして四方に掲げられたレリーフが印象的です。
レリーフは、それぞれ朝・昼・夕・夜を意味するデザインによって、4つ合わせて24時間を表し、
24時間、寸暇を惜しまず研究に励みなさい、という意味が込められているそう。
館内のほかの場所とはまた少し違ったおごそかな気持ちにもなるアインシュタインドームの雰囲気も
ぜひ北大総合博物館で感じてみてください。
"Cembalo, which is made of the fallen poplar trees of the famous Poplar Avenue, suffered by the typhoon in 2006"
最後にもうひとつ紹介したいのは、今回、特別に見せていただいたチェンバロ。
ピアノの元になった楽器です。
2006年、札幌に台風が直撃した際、倒れてしまったポプラ並木のポプラで作ったそう。
チェンバロそのものも見る機会はそうありませんが、北大のポプラで作ったチェンバロとは!
ときどき、館内で夕方にコンサートが開かれることがあるそうなので、
タイミングが合えば、チェンバロの音色を聴くチャンスがありそうです。
"Coin-operated lockers on the first floor, near the entrance"
"Barrier-free facilities in the Hokkaido University Museum; a nursing room on the second floor and barrier-free entrance"
博物館には、100円コイン(使用後返却)で使用できるロッカー(1Fエントランス付近)のほか、
授乳室(2F)・エレベーター・多目的トイレ・バリアフリー玄関が整備され、バリアフリー環境が整っています。
"Miniture Hokkaido University Museum as a collection box for the museum"
さて、普段、触れることが少ない分野にまで足を踏み入れ、
満足感いっぱいで博物館を後にしようと出口(エントランス)へ行くと、目に入ったのがこの北大博物館模型。
実はエントランスを入ったすぐ左手にありました。
入館料無料の北海道総合博物館への寄付金箱なのですが、
お金を入れると、博物館模型に何か楽しい変化が起き始めます。
ぜひ、こちらも最後まで見届けてみてください。
建物を出るまで、間断なく意表をついた"発見"があった北海道大学総合博物館。
もっと若い頃に見ていたら、人生が少し変わっていたかも?と
思わずにはいられない博物館見学でした。
大人が見ても、子供が見ても、世界が広がっていきそうな北海道大学総合博物館。
親子での見学もおすすめします!
※写真は許可を得て撮影しています。
【北海道大学総合博物館】
札幌市北区北10条西8丁目
TEL: 011-706-2658
開館時間: 10:00~17:00(6月~10月の金曜のみ10:00~21:00)
休館日: 月曜日(月曜が祝日の場合、翌平日が休館)・年末年始(12/28~1/4)
入館料: 無料
アクセス
・JR「札幌駅」北口より徒歩約10分
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