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(c) Faltazi
パリの街中には無料で使える全自動洗浄機能付きのトイレ「サニゼット」がありますが(使い方は以前のブログで紹介しました)、最近は少し変わったタイプのトイレも広がっています。男性向けの小用に特化したユリトロトワールです。
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ボックス側面に出っ張っているU字型の部分が便器になっており、立って用を足します。小便はボックス内の乾燥素材に吸収されて処理。中の乾燥素材は定期的に交換されます。乾燥素材はそのまま捨てるのではなく、1年ほど置いて堆肥にされ、上部にある花壇の土壌として戻されます。ユリトロトワールのカタログによると、乾燥素材の交換頻度はユリトロトワールの型と容量により135〜270回に1回だそうです。
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ユリトロトワールの優れているところは、設置に際して水回りの工事がいらないところ。パリは歴史的な街並みが広がり、社会インフラも昔の規格のまま。最新のものに作りかえられないところは多いです。ユリトロトワールなら、今までトイレを作りたかったけれどスペースや配管の問題で作れなかったところにも、簡単に置くことができます。
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パリは週末の夜にもなると、気軽に使えるトイレの少なさも手伝って、結構な頻度で立ちションをしている男性(時には座りションをしている女性も)がいます。ユリトロトワールは、そういう立ちション公害への対策にもなります。ユリトロトワールを販売するFaltazi社の担当者に問い合わせたところ、「本当にトイレが少ないパリで、ユリトロトワールはそれらトイレを補うためのもの」と説明してくれました。
そして排泄物が、堆肥として上部にある花壇の肥料に変わることも、1つの循環型システムを形成できています。
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一方で、シンプルな構造ゆえに目隠しも何もなく、用を足しているところが丸わかりということが、ユリトロトワールに対して批判的な反応にもつながりました。今夏、パリ中心部の高級住宅地サンルイ島の路上に、分かりやすく置かれたユリトロトワールは、住民からの不満が出ました(反発を受けすでに移動)。ユリトロトワールの担当者は「残念ながら、この実験的設置は結果的に論争になり、賢明な選択ではなかった」と言います。
ただし、このように行政がユリトロトワールを分かりやすく設置したことは、本来の使い方ではなかったようです。ユリトロトワールの担当者によると「ユリトロトワールは夜中の立ちションと戦うために着想されたもの。いつも汚れている場所や目につきにくい場所に、動かしやすく、隠して設置しやすい製品」だそうです。
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実際、私もユリトロトワールを使ってみたのですが、人目が気にならないなら大丈夫かな、という感じでしょうか。ユリトロトワールの担当者も「ユリトロトワールは、広場の中央や人通りが多い通りに置くことを想定しておらず、そのようなところに置いてしまったら、恥ずかしさの問題はある」と述べています。
加えて、今回の設置論争から発展したもので、男性のトイレ対策にはなるけれど、ユリトロトワールは女性のトイレ対策の解消には貢献していないという意見もありました。
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ユリトロトワールは現在パリに数カ所設置されています。緊急の場合に備えて、こういう形のトイレがあるということも覚えておいてもいいかもしれませんね。