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「ジャポニスム2018:響きあう魂」の映画イベント「日本映画の100年」に関連して、日本の映画関係者のフランス入りが続いていますが、2月15日はパリ市内シネマテーク・フランセーズにて『シン・ゴジラ』の上映会と樋口真嗣監督によるアフタートークがありました(過去記事では戦前の無声映画『雄呂血』、アニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』上映会の様子も紹介しています)。
『シン・ゴジラ』は、怪獣が暴れまわるシーンはもちろんですが、実際に怪獣(ゴジラ)が日本に現れたら現実の社会はどう怪獣に対応するのか、ということを描いています。緊急自体が発生しているのに、その都度会議を経なければ物事を進めることができず対応が後手後手に回ってしまう日本政府や、自衛隊の武器使用についてなど、日本で暮らしている人から見ると「確かにこうなりそうだよね」と共感して楽しめる部分は多いのですが、果たしてフランスの観客の目にはどう映ったのでしょうか。
結論から述べると、反応はとても良いものでした。終幕後は会場で割れんばかりの拍手が起こり、上映会に続くアフタートークもユーモアを交えた樋口監督の語り口が手伝って、とても盛り上がりました。
樋口監督は開口一番「見ていただいたようにゴジラを倒したのはフランスです。その感謝の気持ちを見せたくて今回は(フランスに)来ました」と『シン・ゴジラ』のストーリーと関連づけてリップサービス。会場は大きく沸きました。そして樋口監督は、順にフランスの特撮ファンの質問に答えていきました。
『シン・ゴジラ』において樋口監督は「昔の東宝が持っている科学者を美しく描く物語が、今の時代ならこうなるんじゃないかということを表現した」と言います。また「政治家と官僚そして研究者が集まったら、どの国でもそうなんですけど、違うことができるんじゃないか」ということを考えつつ、ストーリーを構成したそうです。
CGの技術が発達する前の怪獣映画といえば着ぐるみで怪獣のシーンを撮影していました。なぜ『シン・ゴジラ』では着ぐるみによる撮影を使わず、CGを使ったのかという点については「本物に見えないと、この物語が破綻してしまう。だから地球上で本物に見えるものは何かなと考えたときに、3DCGがない時代だったらスーツに入る形でしたが、今なら3DCGが一番良いのではないかと思って3DCGでやりました」と説明。
そしてゴジラの動きをデジタル的に記録するモーションキャプチャの役者に狂言師の野村萬斎さんを起用した点については「ゴジラは決して恐竜ではない。その存在感をどう出すかということで思いついたのが、狂言という日本の伝統芸能だった」と述べました。
アフタートークの会場にいて、とにかく感じたのは、フランスの観客の皆さんが『シン・ゴジラ』という作品が好きで、特撮が好きで、樋口監督や『シン・ゴジラ』で総監督を務めた庵野秀明さんの作品が好きなんだということ。『シン・ゴジラ』と庵野さんの代表作である『新世紀エヴァンゲリオン』を関連付けた質問も飛びました。
アフタートークの最後は、会場から再度起きた大きな拍手に包まれながら樋口監督は舞台袖へ退場。観客もそれぞれ感想を言い合いながら、満足そうに帰っていく顔がとても印象的な上映会でした。