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2019年4月24日から同6月15日まで、パリ日本文化会館と大津市歴史博物館の共催で「大津絵:日本の庶民絵画」展が開かれます。大津絵とは江戸初期から明治時代にかけて、東海道を往来する旅人の土産物として人気を集めた民芸品です。
企画展の開催に先駆けて前日にプレス向け内覧会が開かれたため足を運んでみました。
無学を披露するようで恥ずかしいのですが、じつは私、今回の企画展を知るまで大津絵というものについて、ほとんど知識がありませんでした。一方で今回の展示の案内をもらって、そのユーモラスな描写にとても興味をひかれたのも事実です。
内覧会では、展覧会を監修したフランス国立極東学院学長クリストフ・マルケさんと大津市歴史博物館学芸員・横谷賢一郎さんによるガイドツアーが組まれ、大津絵と今回の展示について集まった在仏メディアに対して説明が行われました。
初期の大津絵は、庶民の日常的な需要に応えた仏画を発展したそうです。それが次第に教訓や風刺を含んだ戯画などに変容。その後は画題も約120あったものが「藤娘」など10種類に絞られていき、縁結びや験担ぎのキャラクターとして「大津絵十種」として親しまれるようになったと言います。
まず会場序盤に展示されているのは江戸時代の古大津絵です。そして奥に進むにつれて時代が新しくなっていきます。どの作品を見ていても思ったのですが、愛嬌があるモチーフばかりで、親近感がとても湧いてきます。
展示作品は、大津市歴史博物館の所蔵品に始まり、民芸運動の提唱者・柳宗悦が集めた東京の日本民藝館の大津絵コレクション、笠間日動美術館、根津美術館、パリのギメ美術館、フランス国立図書館、個人コレクションから借りてきたものです。
大津絵は、江戸末期には浮世絵の絵師として有名な歌川国芳や河鍋暁斎なども、大津絵からの画題を取り入れて絵を描いています。また海外でも一部では知られており、ピカソも大津絵をかつて所蔵していたそうです。今回の展覧会には、そのピカソの「猫と鼠」を画題にした旧蔵品に加えて、1950年に開かれたバルセロナの民芸展でミロ注目した大津絵が並んでいます。
どれも素晴らしい作品ばかりであるものの、特に興味深かったのが仏画師・小川千甕がヨーロッパ滞在中の1914年に描いた、大津絵の釣鐘弁慶をモチーフにしたカバンを運ぶホテル従業員の姿。大津絵が西洋と出会った瞬間です。
さらに当日は、内覧会にあわせて大津絵師である5代目高橋松山さんの作画デモンストレーションも行われました。
浮世絵はフランスでも有名ですが大津絵はほとんど知られていません。今回の展示は、海外で行う大津絵の展覧会としては過去最大のものとのこと。これをきっかけに日本文化の新しい面が、パリでより知られるといいですね。
【データ】
住所:101 bis Quai Branly 75015 Paris
開催期間:2019年4月24日〜6月15日(12〜20時)
定休日:日・月曜
料金:5ユーロ
最寄り駅:地下鉄6号線Bir Hakeim/RER C線Champ de Mars – Tour Eiffel