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Suet Mae!(シュマイ!こんにちは!)
10月に入り、ウェールズではこの数日、秋雨が降り続いています。
先延ばしにしていた日本への帰国予定もイギリス人の主人が同伴では難しいこともあり、2020年はイギリス国内で休暇を楽しもうと先月中旬から2週間、スコットランドをキャンピングカーで周遊してきました。
幸運にも前半は快晴の日が続き、後半も曇りがちで急に冷え込みましたが、雨はほとんど降らず、イギリスでは珍しく? 天候に恵まれた休暇となりました。
そこで今回はスコットランドへ向かう途中、初日に立ち寄った湖水地方の名物「ケンダル・ミントケーキ」と伝統のレシピを引き継ぐ老舗店「ロムニー」を紹介したいと思います。
イギリスではハイキングや登山のお供として、定番の「ケンダル・ミントケーキ」ですが、日本ではあまり知られていないので湖水地方のちょっと珍しい菓子として、おみやげにもおすすめの品です。
新型コロナウイルス収束後に湖水地方への旅を計画される際にはぜひ、ご賞味ください。
安心して旅に出られる日が1日も早く来ることを、心より願っています。
■ ケーキではない? 失敗から生まれた湖水地方の名物「ケンダル・ミントケーキ」
湖水地方南部の町ケンダル(Kendal)は緑の丘に囲まれたケント川のほとりにあり、石畳が続く小路や城跡などいまでも中世の面影を多く残します。
観光の中心地ウィンダミアへ列車や車で15分ほど。湖水地方の南の玄関口として、週末や行楽シーズンには多くの観光客でにぎわいます。
▲ 湖水地方南部の町ケンダル/町の中心となるタウンホールとハイゲート通り
そして、名物の「ケンダル・ミントケーキ」はこの町の菓子職人ジョセフ・ワイパー(Joseph Wiper)の失敗により誕生しました。
1869年のある日、ワイパー氏はミント・キャンディーを作ろうと飴を加熱。いつもより混ぜ過ぎたため、砂糖が結晶化し白濁してしまったので捨てずにそのまま放置したところ、翌朝には口の中でほどけるほどもろい食感のおいしいミント味の菓子ができあがったのだとか……。
そんな、失敗から生まれたミント味の菓子ですが、いまでは町の名を冠し、ケンダルといえば「ケンダル・ミントケーキ」と誰もが思い浮かべるほど、イギリスでは知られた伝統菓子のひとつです。
さて、ケーキというとふわふわのスポンジ生地を想像しがちですが、このケンダル・ミントケーキはそんな想像とはまったく異なります。
砂糖とグルコース、ペパーミントオイルと水だけで作られるケンダルのミントケーキは日本の「しょうが糖」や「ハッカ糖」のようなもので、食べやすく板チョコ状に仕上げられた甘い砂糖菓子です。
なぜそんな砂糖菓子をケーキと呼び始めたのか? 疑問ですが、そのネーミングのセンスもまた発売当時から変わらず、国民に親しまれているゆえんかもしれません。
▲ ロムニーのケンダル・ミントケーキ(エクストラ・ストロング)
■ エベレスト初登頂で一躍有名に! 老舗店ロムニーの「Romney's Kendal Mint Cake」
現在、このケンダルの町でミントケーキを作っているのはワイパー氏のレシピを引き継ぐ「ロムニー(Romney)」と1880年創業の「クイギン(Quiggin)」、そして1913年創業の「ウィルソン(Wilson)」の3軒ですが、いずれも長年、それぞれの伝統の味を守り続けている老舗店です。
そのなかでも有名なのが1953年にイギリス遠征隊のエドモンド・ヒラリー卿が人類初のエベレスト登頂を達成した際に、手軽な栄養補給源として気に入り携帯したといわれるロムニーのケンダル・ミントケーキです。
このエピソードを機に、ケンダル・ミントケーキは多くの登山家や探検家に携帯されるようになったとか……いまではハイキングや登山のお供として、一般の人々にも親しまれています。
▲ ハイキングのお供、ロムニーのケンダル・ミントケーキ(オリジナル)
ロムニーのケンダル・ミントケーキは湖水地方であれば、スーパーや土産店などで、簡単に手に入れることができますが、ケンダルの町外れにある本社工場には誰でも購入可能な販売所があるとのことだったので、今回、はじめて訪ねました。
ロムニーの本社工場(George Romney Limited)はケンダルの町の中心部から北へ約1.5km。徒歩で約20分、車で5分ほどの場所にあります。
周辺は倉庫が建ち並ぶ工場地帯で観光客を見かけることはありませんでしたが、私たちが訪ねる少し前には湖水地方に遊びにきていた家族連れが来ていたとか……。
販売所というより、倉庫の事務所に販売窓口を設けただけの簡易なもので想像とはかなり違ってましたが(笑)とても気さくな事務員さんがそんな世間話も交えながら、商品の説明をしてくれました。
販売されている商品は種類やサイズもいろいろとあり、どれも卸売り価格でお値打ちに提供しているのだとか……ミントケーキ好きの主人はみやげ用ではなく自分用として、いくつも購入し大満足の様子でした。
▲ ロムニーの本社工場でケンダル・ミントケーキを購入
ケンダルのミントケーキはチョコレートのように溶けたり、生菓子のように賞味期限の心配もないので自分で楽しむのはもちろん、おみやげとしてもおすすめです。
ブラウンシュガーで作られた茶色いミントケーキや人気のチョコレートでコーティングされたもの、化粧箱入りの詰め合わせなど、好みや用途に合わせて、選ぶことができるのでぜひ皆さんもお気に入りのものを見つけてみてはいかがでしょうか?
ただし、登山家の栄養補給源にもなるものですから、エネルギーを補給しすぎないよう食べ過ぎにはくれぐれも注意してください。
▲ わが家の一番人気、チョコレートでコーティングされたケンダル・ミントケーキ
■ ケンダルへの行き方
・ ロンドン・ユーストン(Euston)駅から列車でオクセンホル・レイク・ディストリクト(Oxenholme Lake District)を経由し、約3時間30分。
■ George Romney Limited
・ 住所: Mintsfeet Trading Estate, Kendal, Cumbria, LA9 6NA
・ URL: https://mintcake.co.uk/