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こんにちは! 文化の秋と言われるほど、秋になるとあちらこちらで魅力的な展覧会や企画展が開催されます。
今日は、歴史が今につながっていることを実感できる東京でのイベントを紹介します。筆者も、コロナ禍でなければ、この11月に日本に趣いて参観させていただいた展覧会です。
昭和女子大学創立100周年記念 秋の特別展「徳川将軍家を訪ねて」
ポスター(転載許可を同博物館より頂いています)
昭和女子大学創立100周年記念のこの特別展は、德川記念財団学芸員の方が昭和女子大学同窓生であった縁で、主催・昭和女子大学光葉博物館、共催・公益財団法人德川記念財団として、実現しました。
現在開催中の第Ⅱ部では、徳川将軍家と大奥の様子、女性の活躍をテーマとし、江戸の平和と徳川将軍家の存続に貢献した天璋院篤姫様や静寛院宮和宮様に縁の品々や、近年発見された美術品から大奥で慈しまれた逸品、また、昭和女子大学が所蔵する『井関隆子日記』(原本)が紹介されています。
非常に貴重な、国立博物館や江戸東京博物館などで展示されるレベルの美術品が惜しげもなく展示され、しかも入場無料で公開されています。
筆者の学生時代の専攻が近世文学でしたが、近世=江戸時代は非常におもしろい時代です。江戸の火消し制度や下水道設備、寺子屋制度、経済や文化の興隆などすべてにおいて非常にユニークかつ先駆的で、近世日本を作り上げた江戸幕府とその中心的存在である徳川将軍家が令和の今にも続いていることに歴史の趣を感じます。
日本という国の成り立ちの一部を垣間見る機会として、ぜひ足を運んでいただきたい展覧会です。
展覧会の見どころ − 徳川家康から現代に繋がる德川宗家の歴史を紐解き、平和の礎を体感する
今回のテーマは「徳川将軍家を訪ねて」という主旨に沿って、第Ⅰ部(10月24日に終了)では、幕府を開いた徳川家康と歴代将軍の実績を振り返るとともに、江戸開幕から続いた260年の泰平の世と日本の伝統と近代化の両立を果たした德川宗家をたどる美術品や史料が陳列されました。
現在開催中の第Ⅱ部では、天璋院篤姫様や静寛院宮和宮様が着用されたという着物や大奥での小道具を通じて将軍家の婚礼や大奥の暮らしをうかがい知れる展示となっており、昭和女子大学が所蔵している江戸当時の生の声を綴った『井関隆子日記』を紐解いて、大奥の暮らしや江戸の様子を、臨場感をもって参観者にわかりやすく紹介しています。
なお、当展覧会の図録は、昭和女子大学人見記念講堂地下1階にあるショッププレリュード(営業時間は短縮中のため要確認/日、祝:閉店)にて販売されています。德川記念財団の過去の展覧会図録や美術品を生かしたステイショナリーなどもお取り扱いがあります。どうぞ、展覧会とあわせてお立ち寄りください。
『井関隆子日記』について
筆者は、この展覧会の企画をうかがうまで、『井関隆子日記』について存じ上げませんでした。少し調べてみると、ドナルド・キーン氏の日本の歴代の個人日記を紹介した『百代の過客 日記にみる日本人』にも紹介されているそうです。
『井関隆子日記』には、天保11(1840)年1月1日から同15年10月11日までの900日間の気象や四季の変化、日々のつれづれや見聞、人物・社会・政治・学問・文学など広範囲にわたる筆者の私見が記されているほか、井関隆子の息子や孫から伝えられた江戸城内の様子も詳細に書き留められているとされます。
幕末に生きた旗本婦人の活きたドキュメンタリーとして非常に史料的価値が高いようです。
その原本は散逸したと言われていましたが、昭和47(1972)年に、深沢秋男教授によって紹介されました。その『井関隆子日記』の原本12冊は、現在、昭和女子大学に所蔵されています。
德川記念財団について
久能山東照宮博物館や日光山輪王寺宝物殿にて財団所有の美術品、歴史資料などの常設展示を行うとともに、全国の博物館にて主催・共催・特別協力の展覧会を開催し、また、多くの展覧会に出品協力を実施しているほか、「徳川賞」「徳川奨励賞」などで、日本近世の研究者を奨励・支援し、また、小中学生を対象とした各種コンクール等の表彰活動も展開されています。令和2(2020)年9月より、Instagramも開設されていますので、最新情報の確認にはどうぞそちらもお忘れなくご覧ください。
今回も、昭和女子大学の創立100周年記念にあたり、現代日本に繋がる社会・経済・文化の基盤を作り上げた各徳川将軍の真筆や宗家のみに公開されてきた書画を始め、女性文化や女性の底力を示す美術品・史料の数々を特別展に出展しています。
昭和女子大学について
昭和女子大学は、大正9(1920)年に、新しい日本文化の創造と人類福祉の増進に自ら進んで貢献する女性の育成を目指し、詩人の人見圓吉(東明)により創立された日本女子高等学院を前身とする私立大学です。「世の光となろう」という学園目標のもと、幼稚部から大学院博士課程、各研究所までの教育環境を有すると同時に、ダブルディグリー・プログラム(昭和女子大学で3年、海外の協定校で2年、計5年間学び、2大学の学位を取得する制度)の実施や米国のテンプル大学日本キャンパスを併設など、開学時より、時代のニーズに沿って女子教育に必要とされる実学を提供しています。
昭和女子大学構内の様子(写真撮影・提供:井上裕乃様)
昭和55(1980)年4月に学園創立60周年を記念して建設された人見記念講堂も、とてもすばらしいコンサートホールです。こけら落としはカール・ベーム氏指揮によるウィーン・フィルハーモニーのベートーヴェン(交響曲第2番、第7番)で、これは、カール・ベーム氏最後の来日演奏会でした。そのあとも、小澤征爾氏やカラヤン氏、ゲヴァントハウス管弦楽団やベルリン・フィルハーモニーなど、錚々たる芸術家達のコンサートが展開され、学生たちは世界一流の芸術を学内で享受する機会に恵まれています。
1980年代には一貫教育の一端として、付属中高部での週5日通学制度や5修生制度(飛び級制度・高校2年までに中高6年間の教育を修め、高校3年は昭和女子大学1年生として大学で学ぶことができる)が開始され、学科を越えた教育カリキュラムの履修や資格取得の環境が実現しました。1988年にはボストンに海外キャンパスを設置し、単位留学のシステムも日本で初めて取り入れています。また、付属校は、スーパーグローバルサイエンスハイスクールの認定校にもなっています。校風を維持しながらグローバルな時代の流れを反映させた柔軟性のある教育を展開しており、実就職率は10年連続全国女子大学No. 1(2020年時)を誇っています。
また、地域住民向けの生涯学習プログラムや世田谷区との産学連携による子育て支援や子供たちへの国際化支援の取り組みなども学生主体で取り組んでおり、女性教育の雄として、強い輝きを放っています。
今回の展覧会が開催される光葉博物館は、平成6(1994)年に昭和女子大学学内に設立されました。学内のさまざまな研究成果の発表の場、地域社会に対する情報発信の場、そして生涯教育を担う地域に根ざした大学の一端を担う場として、さまざまな展覧会を提供しています。
■昭和女子大学創立100周年記念
「徳川将軍家を訪ねて ―江戸から令和へ–」
●第Ⅰ部 徳川幕府を創った家康と歴代将軍
・会期: 2020年10月3日(土)~10月24日(土)
●第Ⅱ部 女性によって継がれた徳川将軍家と井関隆子日記
・会期: 2020年11月7日(土)~12月5日(土)
【主催・会場】 昭和女子大学光葉博物館
・住所: 〒 154-8533 東京都世田谷区太子堂1-7-57
・TEL: 03-3411-5099 https://museum.swu.ac.jp/
【共催】 公益財団法人 德川記念財団
・開館時間: 午前11時~午後4時
・休館日: 日曜日・月曜日・祝日
・アクセス:
東急田園都市線・世田谷線「三軒茶屋」駅下車 南口Aより徒歩約8分
JR渋谷駅西口バスターミナルより三軒茶屋経由のバス「昭和女子大」下車
※今後の新型コロナウイルスの感染拡大状況により、変更が生じる場合があります。来館前に、ウェブサイトなどで最新情報を確認してください
※来館の際は、昭和女子大学正門守衛室で、展覧会の見学のための来訪の旨を伝え、「見学証」を受け取り、入構になります
※入構の際には検温、マスク着用、手指消毒など、感染防止への協力をお願いいします
※2020年11月26日(アメリカ太平洋時間)更新:展覧会ポスターを追加し、一部の誤字と情報を修正いたしました。