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札幌中心部の住宅街に隣接した円山エリアにオープンした天ぷら専門店「真心庵 天真」↑(しんしんあんてんしん)を紹介します。
天ぷらの「真心庵 天真」は、"海鮮懐石"の「さかな真心庵(しんしんあん)」↑敷地内に建物を増築し、天ぷら専門店として2020年12月15日にグランドオープン。
狭い路地にたたずむ隠れ家のような風情ある入口から、お店の中へ。
扉を開けて入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのは"和風庭園"と暖炉のように暖かげな炎。
靴を脱いでお店に上がると、床暖で足元がぽかぽかです。
できたばかりの「天真」は、カウンター10席のみ、木のぬくもりたっぷり、かつ開放感がある天井と、生き生きとしたクルマエビが印象的。
カウンターでいただく天ぷらのコース料理は、一面の大きな窓越しに見える和風庭園も天ぷらの味をより引き立ててくれそうです。
「天真」のメニューは、「御昼のコース」(5800円・税別)、夜は「大将のおまかせ」と「店長のおまかせ」(各1万5000円・税別)のコース料理(いずれも飲み物別)です。
その日届いた旬の食材で組み立てたコースをいただけます。
この日はグランドオープン前(レセプション)だったので、昼メニューと夜メニューを組み合わせた特別コースをいただきました。
先付から始まり、お造里へ。
天ぷら専門店ですが、隣接する懐石料理の「真心庵」とのコラボレーションで、天ぷらと和食の双方を楽しむ趣向の"和食と天ぷらを融合"したコースでは、お刺身も楽しめるそう。
そして、いよいよ"天ぷら"です。
「天真」が提供するのは、江戸前天ぷら。
18歳から"天ぷら"の道に入り、東京の名店で活躍したのち、札幌市内の「てんぷら樹(みき)」で20年間腕を振るってきた大将の職人技がカウンター越しに垣間見えるところも醍醐味です。
タネ用の薄力粉の銘柄から、揚げ油の銘柄と配合、すべて試行錯誤を繰り返して確立してきた職人技。
そして正統派"江戸前天ぷら"ならではの、天ぷらに適した全国各地でとれる食材を集めて提供しています。
天ぷらの最初に出てきたのは、クルマエビの頭。
サクサクに揚がったエビの頭は塩味がついており、熱々をそのままいただきます。
香ばしくて絶品。ひとつ目を食べて思わず、ふたつ目をもう一度味わえる幸せを感じました。
続いてもクルマエビ。
最初は大将のおすすめのとおり「塩」でいただきました。
お店に入ってすぐに目に入った水槽の活エビが天ぷらに。
クルマエビの下処理は、包丁を使わず手だけで行うところがポイントだそうですが、これを習得するにはかなりの年数がかかるそう。家庭の天ぷらとは歯ごたえや風味がまったく違う理由は、食材に加え匠の技であることを最初のクルマエビであらためて実感。
さらに活エビならではの"違い"は、揚げると"しっぽ"も美味とのこと。
大将の言葉どおり、2尾ともしっぽまでおいしくいただきました。
余談ですが、大将のおすすめどおり、天ぷらは塩でいただいたほうが、天つゆよりもエビの甘さや弾力感とふわっと加減をより強く感じられましたが、天つゆと大根おろしそのものがおいしく、しばしば、箸休めのように天つゆと大根おろしを単独でいただきました。
次々と並ぶ"揚げたて"の「江戸の天ぷら」は、「キス」(木更津産)、「コウイカ」(九州産)。
キスはふっくらと、コウイカは衣がさっくり、中心部はしっとり。
江戸っ子が大好きという「メゴチ」(鎌倉産)は、初めての体験。
小さなメゴチは、2尾をひと組として。
ペコロスは北関東から。あっさりした味の小タマネギは天つゆや甘辛いタレではなく、"醤油"で味つけされ、新鮮な食感と味わいです。
旨味と歯ごたえが印象的だった「小ナス」は高知県から、美しく揚がった「銀杏」は愛知県産です。
ここまで、見事に全国各地から取り寄せた選りすぐりの食材で「江戸前天ぷら」の奥深さをじっくり味わい、「天ぷら」に最適な食材があるということも初めてよくわかりました。
水産卸会社の社長でもある「天真」のオーナー社長が天ぷら好きなことから、「北海道でも本当においしい天ぷらを食べられるお店を」というコンセプトでオープンした天ぷら専門店「天真」。
大将によると、場所によって魚の水分量が異なり、北海道の魚は水分が多く脂がのっているので、天ぷらにはむしろ脂が少ない暖かい地域の魚が適しているそう。この「最適な食材」を求めて、食材の種類によって産地をあちこちから選んでいるところが「天真」ならではの味です。
とはいえ、おいしい食材が多い北海道。せっかくなので、江戸前天ぷらの技巧を北海道産食材にプラスした「北の天ぷら」をメニューに加え、そのひとつがこちら。
なんと北海道産食材は、衝撃の「ウニ」!
「礼文産ウニのおいしさを天ぷらで味わうには」と大将が腕を振るったのは、なんと有明海産の海苔の天ぷらと生ウニとを掛け合わせた一品でした!
生のウニを揚げた海苔と合わせる、という発想は、大将の研究の成果だそう。
ウニは、やはり生がおいしいとのこと。
このふたつのコラボレーション、鼻に抜ける生ウニの磯の香と、揚げた海苔の香ばしい磯の香がかけあって美味でした。
とても贅沢な気持ちになる取り合わせです。
そして北海道産アワビも天ぷらに。
揚げたアワビの柔らかさに驚きます。
生でいただくコリっとした歯ごたえとは別物の食感は、一度お試しあれ。
そして、おいしい時間はあっという間に過ぎ、とうとう来てしまった「シメ」の時間。
コースでは、シメに「天茶」と「天丼」のどちらかを選べます。
ご飯は、釜炊きごはん。
道産米「ゆめぴりか」のぴかぴかした粒が立っています。
食べる機会がなかなかないことと、好きな"ひつまぶし"をイメージして、迷わず「天茶」を選択。
すると、天茶にもクルマエビ。
これまで天ぷらをたっぷり堪能しましたが、おいしい天茶は、するすると喉の奥に消えていきます。
とはいえ、天丼も食べてみたい、と少し味見をさせていただきました。
この天丼の「かき揚げ」が曲者です。
贅沢にも「クルマエビ」のみの"かき揚げ"が鎮座する天丼。
かき揚げは、しっかりとした甘辛い味付けで、ゆめぴりかとの相性がぴったりなうえ、アルコールがかなり進みそうな天丼なのです。
真っ先に頭に浮かんだのは「赤ワイン」。
かき揚げを食べて赤ワインを飲みたくなる、という初めての経験をしました。
これは、天茶にしようか、天丼にしようかを迷うパターンです。
おなかの満たされ具合によっては、ごはん抜きでかき揚げとお酒でシメたくなるかもしれません。
コースの終わりは、抹茶デザート。
ほんのり感じる抹茶のほろ苦さが口の中をクリアにしてくれました。
甘みが欲しいときは、蜜をたっぷりとすくって。
実は「天真」では、飲み物もとても充実しています。
日本酒のほか、おすすめしたいのは、ワイン。
スパークリング・赤・白。全国の日本酒と世界各地から取り寄せたワインが常時500本以上もあるそう。
そのワインなどがストックされているのがこちらです。
1階床下にあるワインセラー。お店の入口を入ると、床の一部がガラス張りになっており、そこからワインセラーを覗き見ることができます。
専属ソムリエの方や大将にペアリングのアドバイスをいただいたり…
自らワインセラーに降りて、ワインや日本酒を前に直に選ぶこともできます!
美しくも悩ましい、幾何学模様アートのようなワインセラーに感動しましたが、アートな空間はワインセラーだけではありません。
九谷焼作家、松本佐一氏の作品がずらり。
廊下でつながっている「さかな真心庵」の入口前に並んでいるほか、揚げたての天ぷらを並べてくれるお皿もまた松本佐一氏の作品という贅沢。
そして落ち着いた雰囲気の「和風庭園」。
艶やかな鯉が泳ぐ池も風情いっぱいです。
技巧を尽くした「天ぷら」と豊富なラインナップの飲みもの、そして落ち着いた「和」の雰囲気すべてを静かに堪能できる「真心庵 天真」。
味覚も視覚もじっくり癒せるお店です。
コロナ禍が落ち着き、北海道旅行を楽しめるようになった際は、特に札幌旅行のリピーターの方々に行先としてリストアップして欲しいお店です。
カウンター席で静かに味わうなら、ひとり旅にもおすすめです。