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こんにちは~北杜・山梨特派員の水月です。今回は、山梨に生まれた歌人、山崎方代を紹介します。
この歌碑は、山崎方代生家跡に置かれたものです。
「なりゆきにまかせているとかたわらの涙の土瓶が笑い出したり」
方代の短歌は、口語体でわかりやすい表現を使い、何気ない日常のなかに孤独やユーモアを込めているところが魅力なんですよ。
こんなふうに木の立札もありました。南天の木の横に立っていました。
「一度だけ本当の恋がありまして南天の実が知っております」
この歌は、和歌山に住む歌人に恋をした方代が、その女性を想って歌ったと言われています。すてきだなあ。
生家跡は、甲府市右左口(うばぐち)町の敬泉寺(きょうせんじ)の隣りです。
小さなお寺ですが、方代ファンが訪れるスポットになっています。わたしもお参りしてきました。
方代の歌碑が数多く設置されている「右左口の里」もすぐ近くあります。
この右左口町付近には、なんと26もの歌碑が設置されているんです。
厳冬期のいまは訪れる人の姿もありませんでしたが、夏には釣り堀やBBQ、陶芸なども楽しめる公園です。
「ひる前にランプのほやを磨きあげいつものように豆を煮つめる」
右左口村に8人兄弟の末っ子として生まれた方代は、家業である農業などを手伝いながら、15歳頃から短歌を詠み始めました。
「右左口の峠の道のうまごやし道を埋めて咲いておるらん」
故郷右左口を愛した「望郷の歌人」とも呼ばれているそうです。
「右左口の里」の駐車場からは、南アルプス連峰のなかに美しく雪化粧した白根三山を望むことができました。真っ白い山の左が間ノ岳(あいのだけ)、右が富士山に次いで日本第2位の標高を誇る北岳です。
方代は、日々こういう風景を眺め、暮らしていたんですね。
『方代』という歌集を購入(税込2100円)。短歌に明るくない私ですが、ちょっとだけ勉強しました。というか、心に響く歌が多くて夢中になって読んだんですよ。
冒頭の一首。
「わからなくなれば夜霧に垂れさがる黒きのれんを分けてでてゆく」
20代のときには神奈川に移り住み、生涯家を持たず、妻子を持たず、酒と煙草と短歌を愛した人だったといいます。
「茶碗の底に梅干しの種二つ並びおるああこれが愛と云うものだ」
方代が、茶碗の底をじっと見つめるさまが目に浮かびました。
読み終えて、方代の視野の広さ、視点が自由自在に動くおもしろさにハッとさせられるとともに、日常というものをとても大切にしていた人だったのだと感じ、あたたかな気持ちになりました。コロンと転がった梅干し種、真っ赤な南天の実、道端のシロツメクサ(うまごやし)、ランプのささやかな灯り、豆を煮る匂い、そんな身近なものたちがくっきりと浮かび上がってくるような歌の数々。あらためて、いまの時代に多くの人に読んでいただきたいと思いました。
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■山崎方代〈1914(大正3)年~1985(昭和60)年〉
・甲府市観光課~山崎方代 URL: https://www.city.kofu.yamanashi.jp/welcome/gejutsu/houdai.html
■山崎方代生家跡(敬泉寺隣り)
・住所: 〒400-1504 山梨県甲府市右左口町64 敬泉寺
■右左口の里
・住所: 〒405-1505 山梨県甲府市中畑町1132
・TEL: 055-266-4680