キーワードで検索
北海道では年末近くになるとよく見かける「身欠きニシン」。北海道で多く生産され、日本各地で食べられている隠れた(?)名産品です。料理の材料に使われるため、お土産などとして全面に出てくることは少ないですが、もしかすると、お住まいのエリアで見かけているかもしれません。
目次
北海道では冬になると、お店でよく見かける身欠きニシン。
いわゆる"ニシンの干物"です。
そのまま食べるものではないので、子どもの頃は楽しみな食べ物ではありませんでしたが、秋から冬になると木箱に入ったり、ビニール袋に入って店頭に並んでいたり、家ではお米のとぎ汁の中に入っていたり、という身欠きニシンがある光景をよく目にしてきました。
今では、同じ道産子でも年代によって身欠きニシンへの馴染みが異なりますが、北海道は日本一の身欠きニシン生産地です。
北海道日本海側の町ではニシン漁が栄えた江戸時代から現在まで、ニシンの加工技術をはじめ水産品の加工技術が発展してきました。
現在、道内で製造されている身欠きニシンは、"本乾"という昔ながらの完全に乾燥した身欠きニシン(調理する際は米のとぎ汁などでやわらかく戻して使う)に加え、"ソフトタイプ"という調理しやすい身欠きニシンも登場しました。
▶ 目次へ戻る
北海道の日本海側には昔からニシン漁で栄えた町が多くあり、産卵シーズンの春になるとニシンの白子で海が白くなって見え、春の風物詩だったそうです。
このため、ニシンのことを「春告魚」(はるつげうお)と呼ぶこともあります。
現代にも伝わる「江差の五月は江戸にもない」(当時の江差町を謳っており旧暦の5月を指す)という言葉や、余市町発祥ともいわれる北海道の民謡、ソーラン節の"ニシン来たかとカモメに問えば"という歌詞などから、ニシンが昔から道民にとって身近な存在だったことがうかがえます。
ニシン漁で活気があった日本海側の町では、明治時代にニシン漁の最盛期を迎え、豊富に獲れたニシンは身欠きニシンのほか、イワシの肥料の代わりに肥料として加工されるなど、ニシン関連の加工品は、北海道産昆布などとともに「北前船」で日本各地へ運ばれました。
往年の繁栄は、江差町をはじめ岩内町、余市町、小樽市などから、北は留萌市、小平町まで、日本海側の町々にニシン漁網元の家屋などが「鰊御殿」や「番屋」として残っており、現在では観光スポットになっています。
1950年代に入ると、ニシンの回遊エリアの変化などから、ニシンの漁獲量は最盛期と比べると減ってしまいましたが、身欠きニシンをはじめとするニシンの加工品は、現在も北海道日本海側の町で作られています。
原料のニシンは、加工・調理する料理によって産地を変え、サイズや脂の乗りなどの特徴が異なるニシンのなかから適したものを原料にして加工しています。
例えば、大きなサイズのニシンが必要な場合はアラスカ産、お正月用数の子はカナダ産など。
近年は、再び北海道日本海側にニシンが回遊するようになり、春にはスーパーをはじめ鮮魚店にも生ニシンが並ぶようになりました。
一部のニシン加工品にも近海産ニシンが使われています。
▶ 目次へ戻る
江戸時代、「北前船」(きたまえぶね)は、北海道の小樽・松前・函館などを出発し、新潟、金沢、敦賀、下関などに寄港し大阪へ向かう航路で、大阪と北海道を往復して各地の産物を買っては売るというシステムで商売をしていました。
保存が利く「身欠きニシン」は、北前船で日本各地へ運びながら販売した先で、特に海のない地域では、貴重な貴重なたんぱく源として食べられていました。
このため、身欠きニシンを使った郷土料理は、現在では懐かしい故郷の味、郷土料理として日本各地に残っています。
身欠きニシンは、味が良いのはもちろん、ビタミン群も豊富に含む栄養食でもあります。
▶ 目次へ戻る
北海道ではどんな身欠きニシン料理があるかというと、最も知られているのは「ニシン漬け」です。
主な材料は、米のとぎ汁で戻した身欠きニシンのほか、大根、ニンジン、キャベツ、唐辛子、米麹、塩です。
昔は、秋になると各家庭で作っていました。
一気にたくさん作り、ひと冬の間に少しずつ取り出して食べていた乳酸発酵の保存食です。
室内に置くと暖かすぎて早くに酸味が出てしまうので屋外に置いていましたが、少し酸味が出た頃に凍ってシャリシャリするニシン漬けを食べるのが好きという人や、ニシン漬かり具合が人によって異なるなど、道民の間でも好みが異なる食べ物です。
現在は、自宅で漬ける家庭は少なくなりましたが、保存袋を利用したコンパクトな漬け方で、冷蔵庫で保存しながら食べたりもします。
ニシン漬けの文化は、形を変えながらも北海道の冬の風物詩、お正月の味などとして残っています。
また、京都名物のにしんそばは、京都発祥といわれていますが、北海道でも江差町をはじめあちこちで食べられており、レシピのルーツは江差町だったという説もあります。
京都のにしんそばと同じように、北海道のにしんそばも身欠きニシンの甘露煮が乗っています。
北海道では身欠きニシンの昆布巻き、身欠きニシンの甘露煮を食べる家庭もあり、これらは加工品としてスーパーなどで購入でき、お土産としても販売しています。
▶ 目次へ戻る
北海道ではニシン漬けが美味しく漬かってくる季節になりました。
北海道へお越しの際は、現地で昔ながらの身欠きニシンで作ったにしんそばやニシン漬けを食べたり、甘露煮などの加工品をお土産にチェックしてみてはいかがでしょうか。
どの料理もご飯が進む北海道の味です。