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【英ウェールズ】町おこしで有名になった古書の聖地「ヘイ・オン・ワイ」

June

June

イギリス特派員

更新日
2022年1月21日
公開日
2022年1月21日
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Sut Mae!(シュマイ!こんにちは!)

ウェールズ南部に広がるブレコン・ビーコンズ国立公園(Brecon Beacons National Park)には「世界初の古書店街(World's First Book Town)」の看板を掲げる小さな町「ヘイ・オン・ワイ(Hay-on-Wye)」があります。

世界でも最大規模といわれる東京の神田古書店街やロンドンのチャリング・クロスと違って、ヘイ・オン・ワイは人口2000人にも満たない田舎町。

古書店の数は比べ物になりませんが……ある1人の変わり者が古書で町おこしを成功させて、世界中に知られるようになったウェールズの観光地です。

今回はそんな、ちょっと面白い!? 古書の聖地「ヘイ・オン・ワイ」を紹介します。

■ 古城まで本屋になった古書の聖地「ヘイ・オン・ワイ」

ヘイ・オン・ワイには現在、古書店が30軒以上並んでいます。

その始まりはオックスフォード大を卒業後、里帰りしたリチャード・ブース(Richard Booth)が1961年に映画館や旧消防署を買い取って開いた古書店からでした。

▲ ブースが最初に開いた古書店「Richard Booth's Bookshop」(現在は別のオーナーが所有)

▲ 地下から2階まで幅広いジャンルの古書が並んでいる店内

そして、1971年にブースは町の中心部にある古城まで購入し、城ごと古本屋にしてしまいました。

▲ 現在はヘイ・キャッスル・トラストが管理するヘイ城(Hay Castle)

ここ数年ヘイ城は修復工事のため休業中ですが、中庭に設置された無人の販売店「正直古書店(Honesty Bookshop)」は常時利用が可能。

▲ ブースが考案したとされる正直古書店

棚に並ぶ古書はどれも1~2ポンドという安さで掘り出し物を探す古書ファンに人気があります。

そんなブースに続くように町の人たちも書店を開き始め、田舎町に次々と古本屋が集まりました。

▲ ヘイ城向かいにあるヘイ・オン・ワイ・ブックセラーズ

さらにウェールズ観光局の協力を得たブースはヘイ・オン・ワイを「古書の町」として大々的にPRし、町おこしを成功させます。

そして、世界中に知られるようになったことでブースは1977年にヘイ・オン・ワイの独立を宣言!

自ら独立国ヘイ・オン・ワイのリチャード書籍王に就任しました。

そんなやりたい放題のブースでしたが、次第に町で厄介者扱いされるようになり孤立。

店の経営にも失敗し、破産宣告を受けたため、2005年に古書店を売却したあと、ドイツへ移住してしまいます。

晩年はイングランドに帰国したブースでしたが、ヘイ・オン・ワイに戻ることはなく、2019年に80歳でその波乱万丈の人生の幕を閉じました。

■ ヘイ・オン・ワイの歩き方

さて、そんな興味深い歴史をもつヘイ・オン・ワイの町を歩いてみましょう!

町の中心部にバスの停留所と有料駐車場があります。

▲ バス停留所のあるオックスフォード通り。通りの向かいに案内所(写真右)

案内所でガイドブックや散策マップを手に入れるのもおすすめです。

▲ ヘイ・オン・ワイの案内所と郵便局

案内所の前を通過し、キャッスル・ストリートへ。

通りには古書店だけでなく、アンティークショップも立ち並びます。

▲ あらゆるアンティークを扱うヘイ・アンティーク・マーケット

▲ 本だけでなく食器や家具などアンティーク探しも楽しめるヘイ・オン・ワイ

ヘイ城の正直古書店を通り過ぎると旧タウンホールが建つマーケット広場へ。

▲ 赤いリボンが飾られたヘイ・オン・ワイの旧タウンホール

広場では毎週木曜日にマーケットが開かれます。

▲ マーケット広場から撮影したヘイ城

マーケット広場を通り過ぎると突き当たりにリチャード・ブース書店があり、さらに古書店が並ぶ石畳の通りへ。

時計塔が見えてきます。

▲ 町のランドマークの時計塔

▲ 時計塔近くに店を構える古書店「Clock Tower Books」

他にも犯罪に関する本だけを集めた店や地図専門店など、マニアックな古書店も…。

▲ 犯罪ミステリー専門の古書店「Murder and Mayhem」

▲ 「Murder and Mayhem」店内の様子

ヘイ・オン・ワイは「ワイ谷にあるヘイ」という意味で町にはワイ川が流れます。

川沿いには景色のよいフット・パスも整備されているので散策にもおすすめです。

そんなヘイ・オン・ワイの町が最もにぎわうのは毎年5月下旬に開催されるヘイ文学祭の10日間。

例年、50万人近い来訪者が押し寄せる本の祭りでは著名な作家の講演や朗読会が催されます。

アメリカ元大統領のビル・クリントンや女優のジェーン・フォンダも自著を宣伝しにきたこともあるという大きな祭典は著作者や出版社が版権を交渉したり、新人作家を発掘する場にもなっているようです。

機会があれば、文学祭の時期に訪ねて、またレポートしたいと思います。

今はまだ旅が難しい状況ですが、事態が収束したら、文学ファンや古書好きの方にはぜひ一度訪れてほしいおすすめの場所です。

■ ヘイ・オン・ワイへの行き方

・ アクセス: ロンドン・パディントン(London Paddington)駅から鉄道でニューポート(Newport)を経由してヘレフォード駅(Hereford)へ(約3時間)。またはヘレフォードからT14のHay-on-Wye行きバスでヘイ・キャッスル(Hay Castle)へ(約1時間)。

■Hay-on-Wye Tourist Information Bureau

・ 住所: Oxford Rd, Hay-on-Wye, Hereford HR3 5DG

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