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シュマイ!(こんにちは!)
連日のストームでイギリスは数十年来の暴風災害となりました。ウェールズでも南西部を中心に各地で土砂崩れや洪水が多発し、2月25日現在も鉄道の一部路線が運休となってます。
ただ、英政府やウェールズ政府は警戒レベルの高かった地域の学校を一斉休校にして、不要不急の外出自粛や公共交通機関の運休などを早々に実施したため、被害を最小限に食い止めることができたようです。
防災対策に「やり過ぎ」はありませんからね!
さて、今日は久しぶりに雨風もなくおだやかな朝を迎えたウェールズ。
せっかくなのでしばらくお休みしていたウェールズの古城探索を愛犬と楽しんできました。
……といっても、自宅から数十分の距離にある城跡で以前から、案内板を見て気になってた場所です。
そこで今回は中部ウェールズのポウィス州にある中世の要塞「ドルフォーウィン城(Dolforwyn Castle)」を紹介します。
■ グウィネズの王子が建てた要塞「ドルフォーウィン城」
わが町ウェルシュプール(Welshpool)から南西の町ニュータウン(Newtown)へ向かう途中にウェールズ人の王子が建設したドルフォーウィン城が建つ村アバミュール(Abermule)があります。
▲ アバミュール村に設置されたドルフォーウィン城への道標
当時、北ウェールズ一帯を治めていたグウィネズの王子リウェリン・アプ・グルフィッド(Llywelyn-ap-Gruffudd)はウェールズ征服を狙うイングランド王ヘンリー3世に対抗するため、ウェールズ中部に広がるセバーン渓谷は戦略的拠点となると考え、占領しました。
その後、ヘンリー3世からモントゴメリー条約のもと、リウェリン王子は"プリンス・オブ・ウェールズ"として認められるとその地位と権力を確固たるものにするため、1273年から1277年の間にドルフォーウィン城をセバーン渓谷が見渡せる丘に要塞として建設したのです。
▲ 城跡に設置された案内板とセバーン渓谷の眺め
ただ、新しいイングランド王エドワード1世の許可なしに城を建設したため、怒りを買うことに……。
また隣町のウェルシュプールでポウィス城(Powis Castle)を所有していた南ポウィスの王子グルフィズ・アプ・グウェンウィンウィン(Gruffydd-ap-Gwenwynwyn)との間でも緊張が高まりました。
そして、城が完成した直後の1277年にエドワード1世の腹心だったウィッグモアのモーティマー男爵とリンカーン伯爵にドルフォーウィン城は包囲され、井戸が未建設で水が不足したことから同年4月8日に落城。
グルフィズ王子に城の監護権が与えられたのち、モーティマ男爵が土地も含め、所有を認められました。
建設当時は伝統的なウェールズ様式だった城もエドワード1世によって改造され、南門は封鎖。中庭には新しい建物が建設され、井戸も掘られました。
▲ 今でも水が枯れずに残る井戸(貯水槽)跡
モーティマ伯爵家が3代に渡り相続したドルフォーウィン城でしたが、1322年に反逆行為で家財を没収されるとリチャード2世の時代まで英国王の所有地となります。ただ、その頃には国王の関心もなくなり、荒廃し始めたため、ポウィス伯爵へ譲渡されました。
その後、好古家D.K.ロイドが城を買収した祖父から引き継ぎますが1955年にウェールズ政府関係機関「カドゥ(Cadw)」に寄贈。現在はカドゥの管理下において無料で一般公開されています。
小高い丘の上に建つドルフォーウィン城へは村はずれにあるこのゲートから出発!
坂道を7〜8分上るとさらにゲートがあります。
周辺一帯には小さな牧場や民家があるため、ゲートは必ず閉めましょう。
麓から歩き始めて10分ほどでドルフォーウィン城が見えてきます。
城跡の各所には案内板も設置されているので当時の様子をイメージしながら探索開始!
まずは城の入口だったとされるゲートウェイ跡。
そのすぐ右横には守衛室があり、ここからの眺望もなかなかです。
現在、城跡の中心部分は何もない更地ですが、当時は長方形の囲いを作るように北の壁にD字型の塔と2階建ての建物、東の壁には円形の塔、西は玄関口、南の壁にも家屋と小さな入口があったとされます。
▲ 城の中心部
▲ 武器庫だったとされる円形の塔の跡
完全な廃墟と化し、土台部分や遺構しか残っていませんが、城壁に囲まれていたとされる城の構造はわかりやすく、中世の要塞での暮らしが想像できる場所です。
城内には礼拝堂や醸造所、パン屋、貯蔵庫などもあったことが1981年から2002年にかけて行われた発掘調査で明らかになっています。またその際、皮の本の表紙の一部やエドワード2世時代の銀貨も発見されました。
▲ 貯蔵庫跡
▲ 城壁に設置された階段部分(登るのは危険と注意書きされています)
ウェールズには約600の城があるとされ、そのうち100を超える城がドルフォーウィン城のような廃墟あるいは修復された建物として残っています。そして、その他は風化し、遺構や土塁のみとなっているそうです。
今は何もない城跡でも、それぞれに違った歴史やその地で暮らした人たちの足跡がそこにはあり、景観を楽しみながら悠久のロマンを感じることができます。
今後も日本ではほとんど知られていないマイナーな城をたくさん紹介していきたいと思います。
ぜひ皆様もウェールズにお越しの際は古城巡りをお楽しみください。
■ Dolforwyn Castle
・ 住所: Abermule, Montgomery SY15 6JJ