キーワードで検索
ウイスキーやワインで注目される北海道余市町で、2022年は個人的にワイン畑を中心に余市町をめぐり、新たな魅力を知る1年でした。その1年の閉めくくりに冬の余市町を巡るツアーに参加し、余市町のブランドポークを味わうツアーで、これまで知らなかったスポットを巡りました。そのようすをご紹介します。
目次
この日、余市町に到着し最初に訪れたのは、果樹農家の「宮野果樹園」です。
余市町は、日本で初めて西洋リンゴの栽培に成功した町のひとつとして知られるリンゴの町といっても過言ではありません。
現在はリンゴ以外のフルーツも多く栽培され、初夏から秋にかけてフルーツ狩りができる果樹園がいくつもあります。
なかでも「宮野果樹園」は、果樹園で栽培したリンゴを使った商品づくりも積極的におこない、宮野果樹園(余市町豊岡町)のほか、JR余市駅直結の余市町観光協会が運営する余市町観光物産センター「エルラプラザ」でも販売しています。
今回、宮野果樹園ではリンゴの食べ比べをさせてもらいました。
栽培しているリンゴは、早生旭・未希ライフ・つがる・あかね・トキ・ひめかみなど14種類もあり、収穫の時期はリンゴの種類によって異なるそうです。
すでにリンゴの収穫期のピークを過ぎており、最も遅い収穫時期の3種類、ぐんまの名月、ふじ、あいかの香りを食べ比べさせていただきました。
どのリンゴもそれぞれ甘みや酸味の特徴がありますが、どのリンゴにも共通していえるのは、果樹園でいただくリンゴはどれもジューシーで香りが高い!
このリンゴの味を覚えてしまうと、毎回果樹園で直接購入したくなります。
そしてこちらが宮野果樹園で比較的早くからあったという「りんごのお酒」。
酒蔵がりんごのお酒を造ることになり、宮野果樹園が原料のリンゴを供給したことが始まりだそうで、製造しているのは奈良県の酒蔵です。
このお酒がとてもリンゴ感がいっぱいで驚きました。
アルコールはもちろん感じますが(9度)、すりおろしリンゴを飲んでいるかのように果肉をしっかり感じるお酒です。
そしてこちらは、最近、人気で品薄になりがちという「りんごたっぷりっ娘」。
こちらは、焼き肉のソースやドレッシングとして重宝する"万能たれ"ですが、余市町観光物産センター「エルラプラザ」でも販売しています。
以前、エルラプラザで購入しましたが、余市町産リンゴをたっぷり使った万能たれは、ひと瓶あるだけで肉や野菜をリッチなテイストでいただけるとても便利なタレなので、おすすめです。
リンゴのほかにもさまざまなフルーツを栽培する宮野果樹園では、自家栽培のフルーツを中心に作るジャムも販売しています。
その種類が豊富で、あまり見たことがないようなジャムもいろいろあります。
この日は20種類ほどのジャムが並び、人気のブルーベリーやマーマレード、ハスカップなどのほか、珍しいものではカーランツ、コクワ、山ブドウ、ルバーブなど。
特に惹かれたのは、「イタドリ」と「食用ほおずき」です。
また、イタドリは北海道のいたるところで目にする生命力が旺盛な植物ですが、春、芽吹き始めた頃のイタドリは、ジャムにして食べられるそうです。
宮野果樹園では、これまで知らなかったリンゴの種類や宮野果樹園をはじめ余市町で栽培されているフルーツの種類に驚き、新たな余市町の一面を知りました。
宮野果樹園のジャムや万能タレは、宮野果樹園のほかエルラプラザで購入が可能です。
余市町は、ウイスキーや果樹園、最近ではワイナリーの町として知られていますが、かつてニシン漁で栄えた日本海沿いの海の町でもあります。
旬の魚が入れ替わり獲ることができ、1年を通して旬のおいしい魚が余市町の鮮魚店や飲食店に供給されます。
今回、そんなおいしい魚を獲っている漁師の川内谷さんを訪ねました。
12月はヒラメ漁が中心だそう。
ヒラメ漁のシーズンが終わると黒ガレイのシーズンになるそうです。
川内谷さんの作業場には、漁期のヒラメのほかにホヤやアワビ、エイ、カナガシラという魚も魚箱に入っていました。
獲れる魚などの中には、ヒラメ漁の網にかかったものもあり、数が少なかったり基準のサイズに達していないものなどは販売せず、自家消費になるものも少なくないそうです。
そのなかで、漁師町以外ではほとんど知られていない魚が「カナガシラ」。
骨がとても多く、一般消費者が食べにくいとのことで、市場にはほとんど出ない魚です。
川内谷さんでもカナガシラは自宅用になるそうで、「味がとてもよい」とのこと。
煮つけなどにするそうで、作業場にはさばいたカナガシラがありました。
この日は、作業場で茹でているマダコも見せていただきました。
余市近海では、マダコが獲れるそうですが、マダコもヒラメ漁の網にかかったものだそう。
2kg以上のマダコは市場で販売されますが、それ未満のものは自宅でいただくそうです。
茹でたマダコは少し水分を落とし、真空パックにして冷凍保存するそうです。
北海道では、一度冷凍したマダコが販売されてますが、冷凍すると薄くスライスしやすくなるという意味もあるとのこと。
そしてこちらが茹でたて、凍らせていないマダコです!
何の味付けもしていないマダコですが、噛みしめると海水の塩分がほどよく感じられ、歯ごたえを含め、とてもおいしくいただきました。
おいしさはもちろんですが、冷凍前の茹でたてタコをいただく機会はとても貴重な経験でした。
次に訪れたのは、川内谷さんから仕入れた魚を扱っている鮮魚店「新岡商店」です。
こちらでは、余市産の魚を小売りしている魚屋さんということで、この日は真ガレイ、赤ガレイ、ナメタガレイ、ハタハタや八角も店頭に並んでいました。
点灯の鮮魚を見せていただきましたが、この日、新岡商店での一番の目的は「津本式血抜き」の技術を見学することです。
そこで実技を交えたレクチャーをしていただきました。
津本式血抜きは、魚の頭と尻尾に切り込みを入れ、そこから水を通して血抜きをする方法だそう。
血抜きのコツは、血をきれいに抜き尽くすことではなく"抜き過ぎないこと"だそう。魚臭さのもとになる血ですが、抜き過ぎると旨味がなくなり、味気ない魚になるため、経験によってどの程度の血をわずかに残すか、がおいしさのポイントになるそうです。
特に青魚はこの神経締めを行うと、おいしさが格段に違うそうですが、手順を見ていると、一尾ずつこの作業を行う大変さを実感しました。
ですが、新岡さんによると、余市で水揚げされる魚にこの方式が適していること、また、日持ちがするようになるので、フードロスにもつながるため、津本式の神経締めをおこなっているそうです。
レクチャーのあとは、漁師の川内谷さんが獲ったヒラメを神経締めにしたお刺身をいただきました。
新岡さんがおっしゃっていた通り、歯ごたえといい、旨味といい、「魚のお刺身ってこんな味だった?」という驚きのおいしさでした。
おいしい津本式血抜きのお刺身を試食したあとは、どうしても魚が欲しくなり、店頭に並んでいるヒラメと生のマダラコを購入。
パック詰めされていない鮮魚を購入するのは久しぶりで、このスタイルでの買い物の楽しさを思い出しました。
新岡商店さんは、正月三が日以外、毎日営業をしているそうなので、鮮魚を購入するチャンスがあれば、余市産の旬の魚を新岡商店さんでゲットしてください。
ちょこちょこと試食をさせていただきつつ過ごしてきたツアーは、ランチタイムに「第1回ドラゴンシェフ」で優勝した下國 伸シェフが余市の食材を使った特別メニューのランチをいただきます。
会場は、余市町のイタリアンレストラン「ヨイッチーニ」。
(ヨイッチーニのオーナーは、こちらでご紹介したソウマファームの相馬さん。)
余市産のブドウを使ったワインと一緒に味わうスペシャルランチです。
今回いただいたワインは、余市でワイン用ブドウを栽培する木村農園さんのブドウで造ったワインシリーズ。
会場にはワイン用ブドウ栽培家の木村さんも駆けつけ、時折ワインの説明を聞きながらランチをいただきました。
例えば、最初にいただいた「ケルナー・スパークリング」は、瓶内二次発酵をさせたスパークリングで、こちらのワインのブドウの収穫時期は、二次発酵を想定し時期を見計らうそうです。
ワインに加え、貴重な味体験をしたのが「そうせい農園」の「越冬ふじ」というアップルジュースです。
そうせい農園の山下さんも会場にいらっしゃり、越冬ふじの説明をしていただきました。
加工用のリンゴを中心に栽培するそうせい農園では、栽培の過程でリンゴの葉摘み作業をおこなわず、収穫ぎりぎりまでリンゴの光合成をおこなうよう促し、収穫も根雪になる直前のタイミングまで待つそう。
そして越冬ふじのジュースは、ふじリンゴをひと冬寝かせることで水分を飛ばしリンゴの旨味を凝縮させたのち、ジュースにしています。
飲んでみると、確かに、甘みはもちろん、口当たりがまろやかに感じ、これまでには味わったことがないようなアップルジュース。
人気で希少なジュースなので、もし販売しているのを見かけたら、ぜひ購入することをおすすめします。
そしてこちらがこの日のランチ。下國シェフの調理による余市ワインポークをメインにしたこの日限りのスペシャルワンプレートランチです。
余市ワインポークのロース肉をオーブンで高温と低温を繰り返してしっとり焼き上げたそう。
ソースには、余市産リンゴとトマトを使い、リンゴの皮から出るエキスも生かし、ワインポークの味わいに合わせたそうです。
また、付け合わせは一鱗新岡商店さんのスミイカを使った以下の足と耳のソテーで、味付けはイカの塩分のみ。
さらに"イカ墨めし"は、スミイカの墨を使っています。
マッシュポテトにはリンゴも入っていました。
下國シェフは、通常はコースでお料理を提供することが多いそうなので、今回は、下國シェフの貴重なワンプレート料理です。
9月には、下國シェフのコース料理をいただき余市ワインポークのさまざまな部位を使ったお料理に感動したのですが、今回は、それぞれのお料理どうしのハーモニーが際立ち、ワンプレートならではの感動がありました。
余市ワインポークのソテーと余市町産食材の味わいに合わせ、ワインもスパークリング、白、ロゼ、赤とひと通り堪能し、余市町の食の豊かさを改めて実感するランチでした。
なお、「ヨイッチーニ」は、通常、余市の食材をふんだんに使ったイタリアンレストランとして営業しています。
オーナーシェフの相馬さんは、ふだん、ワイン用ブドウ園「ソウマファーム」でブドウ栽培をおこなっており、ソウマファームのブドウを使ったワインもまた希少なワインとしてなかなか手に入りにくいのですが、ヨイッチーニではソウマファームのブドウで造ったワインも飲めるので、余市の夜を楽しむ際は、ヨイッチーニで美味しい時間を。
余市の特産品のほとんどといっても過言ではないほどバリエーションが豊富な余市町観光物産センター「エルラプラザ」。今回はツアーバスでアクセスしましたが、公共交通機関のJR余市駅や高速バスの余市駅前停留所が隣接しています。
こちらは、「YOICHIタータン」でデコレーションされたクリスマスツリー。
エルラプラザの入り口に飾られていますが、余市といえば、竹鶴政孝氏とリタ婦人がニッカウヰスキーを創業した町で、その縁から余市町はスコットランドのイースト・ダンバートンシャイア市と姉妹提携していることから、スコットランドの伝統柄"タータンチェック"を余市独自のデザインとして公募し決定。
2018年にはスコットランドの登記所に正式な余市町のタータンチェック「YOICHI」として登記されたそうです。
そしてこの「YOICHIタータン」のデザインをモチーフにしたお土産に加え、エルラプラザではYOICHIタータンの生地の販売もおこなっています。
エルラプラザには、午前中に訪れた宮野果樹園のジャムも販売しています。
今回は収穫シーズンが終わっていたため、エルラプラザでリンゴは販売していませんでしたが、前回(9月)に訪れた際は、エルラプラザで「早生旭」↑(写真)を購入しました。
もう少し早い時期であれば、フレッシュなリンゴもチェックしてみてください。
有料試飲のワインは、前回とは異なるラインアップだったのでテイスティングしました。
こちらのテイスティングは時間がわずかなときにも、また、イートインスペースがあるので、エルラプラザで販売しているおつまみ系のお土産を購入して一緒に楽しむこともでき、おすすめです。
JR余市駅から徒歩約2分の場所にあるカフェバー「クンプウ ウィン&カフェ」で、ツアーを締めくくる余市産ワインの試飲です。
この日のラインアップ。余市産ワインを4種類試飲できる貴重な時間です。
そして余市ワインポークの生ハムがおつまみに登場。
こちらはこのツアーのために特別に用意された生ハムで、余市産ワインと余市産生ハムの特別なコラボレーション。
前回に続き、「余市リキュールファクトリー」の余市産果実を使ったリキュールの試飲もさせていただきました。
おいしい食事のあとに、さらに地元で地元産のおつまみとワインをいただく楽しいひとときになりました。
秋の「余市ワインポークを楽しむ会」に続き、冬のツアーに参加し、余市町のおいしいものをいただくだけではなく、果樹栽培のこと、魚のこと、漁のことなど、多くのことを学びながら余市町をまた少し知ることができました。
2023年には、また新たなツアーとして登場するそうです。
余市の海のごちそう、山のごちそうを堪能しながら巡る大人の社会見学のようなツアーは、知識欲と食欲を同時にそそるツアーでした。
余市町へ行くたびに感じることは、余市町の皆さんの余市町愛と仲の良さです。
忙しい中にも楽し気に余市町を案内していただき、その様子からも元気をもらえる町のように感じます。
そのようなわけで、札幌から日帰りで参加可能な余市町を巡るツアーは、これからがさらに楽しみです。
2023年は、ぜひ余市町を巡るツアーをチェックしてみてください。