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パリ・モンパルナス駅からTGVで約1時間半ほど南西に下った先にアンジェというロワール川沿いの町があります。同地を代表するショコラトリーが、アンヌ・フランソワーズ・ブノワさんを中心に一家で経営している「ブノワ・ショコラ」です。同店のスペシャリテは「キャラモンド」と呼ばれるチョコレート。キャラメリゼしたスライスアーモンドをチョコレートでコーティングして、三角にカットしたお菓子で有名です。2022年12月にパリから同店を訪ねてみました。
アンジェの玄関口はフランス国鉄(SNCF)のアンジェ駅です。そこから北東に進むとアンジェの中心街にたどり着きます。アンジェにはフランス最古のタペストリーが展示されいてるアンジェ城やサン・モーリス大聖堂、アンジェ美術館などの名所が点在していますが、どれも徒歩圏内に集積しており、それらスポットからも近い場所にあるのが、ブノワ・ショコラの本店です。
同店を切り盛りするのがアンヌ・フランソワーズ・ブノワさん。今回取材をさせてもらったショコラティエール(女性チョコレート職人)です。
アンヌさんについて、ブノワ・ショコラの店舗概要から抜粋し少し紹介すると、アンヌさんはどの世界にもありがちな男性優位の業界で苦労を重ねてきたそうです。しかし2003年のパリにおけるサロン・デュ・ショコラで、女性として初の「ヤングタレント賞」を受賞すると、2005年には同じくサロン・デュ・ショコラのガナッシュ部門にて1位を獲得。2010年には、クラブ・デ・クロクール・ド・ショコラ(CCC:Club des Croqueurs de Chocolat)からトップ・ショコラティエ12人に選ばれました。
2014年には「金のタブレット」と「ベストショコラティエール賞」を受賞。2016年には国家功労勲章「シュバリエ」に叙勲され、2022年のCCC17人のメンバーによるブラインド・テイスティングで、再び「金のタブレット」に選ばれました。
じつは今回の訪問、アンジェへ行く前にアンヌさんと繋がるご縁があって、せっかくアンジェへ行くならと事前に連絡してブノワ・ショコラを訪れました。そのため、この日はアンヌさんご自身が出迎えてくれました。
パリとアンジェですし、なかなか直接お会いする機会も無いですので、いろいろと聞いてみました。
まずキャラモンドの代名詞である三角形、これはどうして三角にしたのかと質問してみたら「偶然なんです」と笑いながら答えてくれました。レストランのシェフをしていたアンヌさんの友人が、食後に供される「カフェ・グルマン」というミニサイズのデザートセットのためのチョコレートを考案してほしいと依頼され、できたのがコーヒーカップに立てかけやすい、このキャラモンドだったそうです。
食べてみると、キャラメリゼされたスライスアーモンドのカリカリの食感と、カカオたっぷりのチョコレートの風味が口の中で混ざっていきます。形状が平べったいため、食べていてもしつこくならず、またコーヒーやお茶のお供にとてもぴったりです。
フランスで発売されているキャラモンドは全て箱がオレンジ色ですが、このオレンジというのはアンヌさんの好きな色とのことでした。このシェフの友人からの依頼をきっかけにした偶然とアンヌさんの好みが重なって、この独特の風貌になりました。
じつはキャラモンドには、日本で暮らしている人だと何気なさ過ぎて見落としてしまうかもしれない点があります。それは包み方にあります。オレンジの三角の箱の中には黒い薄紙に包まれ、上部には箱の内側に入れる緩衝材が添えてあるのです。
「日本人のお客さまのおかげでパッケージを随分改良できました。なぜなら日本人のお客さまは、包み方にとてもこだわるからです」とアンヌさんは言います。ブノワ・ショコラは日本の高島屋で開かれた催事などにも出店したことがあり、そこでの日本における経験が反映されているそうです。
以前キャラモンドは、最初は透明な袋に入れただけで売っていたそうですが、次にアンヌさんは箱による梱包を取り入れました。そして内側に包み紙を入れ、上部に片段の緩衝材を加えて現在の形になりました。キャラモンドは小分けされたものが小箱で売られていて、この小分けのアイデアも日本人がよく求める「配り菓子」の文化からインスピレーションを受けたそうです。
アンジェ本店のあるリス通りには、向かい合って2店舗ブノワ・ショコラがあります。一つは、昔から営んでいたお店の場所でここはチョコレート専門店です。そして向かい側が、チョコレートの他にケーキやマカロン、そしてデザートに添えるお茶(扱う銘柄はマリアージュ・フレール)などを扱うブティックです。
もう一つ、他のショコラトリーではまず見ない光景があります。それは自販機! アンヌさんによると、フランスは日曜休みのお店も多く、自販機があればいつでもお客さまにチョコレートを買ってもらえることができるのではと設置したそうです。
実際、平日や週末の他に、夜遅くお店が閉まった後の需要にも応えられているとのことでした。「夕食に招待されたけどお店はもう閉まっているし、どうしようかと思った人が手土産として買っていくこともあります」とアンヌさんが教えてくれました。
普段ブノワ・ショコラのキャラモンドはフランスでしか購入できないのですが、「日本での展開はないですか?」とアンヌさんに聞くと「2023年はバレンタインデーに合わせて限定販売されます」と教えてくれました。キャラモンドは昨年もバレンタイン限定販売されていたそうで、日本限定商品である「オレンジ風味のキャラモンド」も昨年に続き今年も販売されるといいます。
キャラモンドを取り扱っているのは、シャルマン・グルマンのオンラインショップ、高島屋のオンラインストア、ルピシアオンライン(ルピシアオンラインはノワールとレの110gのみ)のオンライン3店舗です。これに加えて、高島屋各店で開かれる催事「アムール・デュ・ショコラ」でも取り扱いがあるそうです。気になった方は、この機会にぜひ日本でも味わってみてください。
■高島屋アムール・デュ・ショコラ(2023年)
1月20日〜 京都、岐阜
1月25日〜 日本橋、新宿、横浜、大阪、堺、泉北、岡山
2月1日〜 玉川、大宮、柏、高崎