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こんにちは!いつもは特派員としてロンドンの記事を書いていますが、エジプトから帰国したばかりでどうしてもエジプト気分が抜けず、気づけばエジプトのことばかり考えているので、諦めてカイロについて書いてみようと思います。過去に記事も多くないようなので、渡航前に入手したおすすめと実際行ってみた感想も含め、旅行を検討されている方の参考になれば幸いです。
ギザのピラミッド観光は、おそらくカイロ発ガイドツアーに参加するのが一番簡単だと思います。車で30分程度なので個人でも行けますが、価格交渉や効率的なルート選びを助けてくれるのと、知識豊富なガイドさんの説明はピラミッドをもっともっと興味深いものにしてくれると思います。筆者一行は適当にツアーを選んでとんでもないガイドに当たってしまったので(ラクダ使いのおっちゃんと同程度の知識量しかなく、殆ど何も説明してくれなかった)、事前にツアーの口コミを確認することを強くおすすめします。もしもどこから調べていいかわからない場合は「GetYourGuide(ゲット・ユア・ガイド)」というサイトを参照されるといいかもしれません。口コミが比較的正確との評判で、筆者がこのサイトで見つけたルクソールやハルガダのツアーでも失敗はなかったです。なお、ガイドのハズレはYouTubeで河江肖剰先生の古代エジプトチャネルが救ってくれました。
ギザでは別料金でラクダに乗ってメンカウラー王のピラミッドの向こう側の6つのピラミッドが一望できるスポットまで行きました。(実はギザには3大ピラミッド以外にも小さなピラミッドがあるのです)いかにも観光チックですがラクダは歩くスピードがゆっくりなのでリラックスできるのと、奥まで行くと観光客が少なくて静かなので心ゆくまでピラミッドの景観を味わうことができました。ラクダ使い用のチップの小銭は忘れずに。ちなみにトイレに行くにも毎回チップが必要なので、チップのことを考えなくていい日本っていい国だな…とエジプトから遠い祖国に思いを馳せました。
ツアー選びの失敗やチップ地獄を引き換えにしても、ギザのピラミッドには感動しました。期待値が高すぎて実際に行ってみたらがっかりするかなとも思ったのですが、平坦な大地に突如三角形の巨大建造物が生えているのは規格外の景観で、まばたきをする度に興奮しました。しかも、それが4500年前のもので更に唯一残る元祖・世界七不思議のひとつとなれば。
ギザに2022年にオープンするはずの大エジプト博物館が未だ一般公開されない中、カイロのエジプト考古学博物館に行ってきました。珠玉の展示物の数々を挙げればキリがないのでガイドブックに譲りますが、筆者が最も感動したのは古王国時代の遺物です。上記の像は「ラホテップとその妻ネフェルト」という夫婦の座像です。この像は映像や写真で見たことがありましたが、実際に目にすると全く別物です。目にクオーツとクリスタルを使っているので、光を反射して本物の目のようにキラキラしているのです。4500年前のものにも関わらずこれだけ色が残っていていて、目に生命を宿していることに畏怖すら感じます。この輝きはなかなか画像だと伝わらないので実際に見られて良かったです。また、2枚目の写真はカフラー王の像。こちらも像として完璧で、肌感もなめらかでとても美しいのですが、機械や鉄のない時代にこの像を見事に作り上げたアーティストの根気に感動します。そして、4500年もの時を生き延びてほぼ完璧な形で我々の目の前にあることにも!エジプト考古学博物館にはこれ以外にもツタンカーメンを含む超有名遺物の数々が展示されています。少しずつギザの大エジプト博物館に移されていると聞きましたが、主だったものは2023年4月末時点ではこちらの博物館に残されていました。予約なしで行きましたが、特に並ぶこともなかったです。
カイロ周辺観光の必須はギザのピラミッドとエジプト博物館だと思います。それ以外の見どころはあまり取り上げられていないようなので、ご参考までに印象的だった場所を紹介します。1か所目はカイロの城塞、モカッタムの丘の上にある「Citadel(シタデル)」です。12世紀にサラディンによって建てられてから増改築を繰り返し、700年間に渡り支配者の居住地でした。サラディンはエジプト・シリア・イエメンなどの地域を支配したイスラム王朝アイユーブ朝の創始者で、第3回十字軍を破った人物として有名です。シタデルにはムハンマドアリー・モスクがあります。こちらのモスクの内部は天井から吊るされたシャンデリアとたくさんの電灯が作り出す幻想的な雰囲気です。トルコのアヤ・ソフィアなどに倣ったそうです。白い美しい大理石の床が印象的な中庭には、フランス王ルイ・フィリップから贈られた時計台などがあります。(エジプトからはフランス王にルクソールのオベリスクを贈呈し、今もパリのコンコルド広場にあります)テラスからはカイロが一望できて、地平線にギザの2つのピラミッドを望むことができます。シタデルには他にも軍事博物館やスレイマン・パシャ・モスクなどがあります。
次に紹介するのはMosque Madrasa of Sultan Hassan(スルタン・ハッサン・モスクとマドラサ)です。スルタン・ハッサン・モスクはマムルーク朝のスルタン・ハッサンによって1356年に建築が開始されましたが、スルタンは完成を見ることなく軍の司令官によって暗殺されてしまいました。スルタンの女性に対する度を越した散財やえこひいきなどが原因とされています。彼の身体は見つからなかったので、霊廟は役割を全うすることがありませんでした。壮麗な建物ですが何とギザのピラミッドの化粧板が使われているそうです。中央の中庭は金曜日の礼拝にも使用されていましたが、マドラサ(学校)の講義にも使用されたとか。入口は高さ36メートルと、圧倒的なスケールで美しいモスクですが(写真の人の身長を見る建物の高さがわかると思います)、筆者が訪れたときには他に観光客も殆どおらず、静寂で厳かな雰囲気でした。
今回の旅行は女性3人の個人旅行だったので、宿泊場所を決めるにはとにかく治安が最優先でした。そこでカイロのNGOに数年間勤務していた女性からおすすめされたZamalek(ザマレック)という場所にホテルをとりましたが、大正解でした。ザマレックはカイロ西部の人口島にある地区で、大使館や外資系のお店などが多くあります。橋を渡るとオールド・カイロにつながっていてエジプト考古学博物館にもアクセスできます。個人的にはもっとローカルな場所に行くのも好きなのですが、ザマレックではじろじろと見られたり、立ち止まるやいなや絡まれたりすることも少なく、夜でも安心して歩けたので良かったです。比較的外国人が多いので物価は気持ち高めですが、おしゃれなコーヒー・ショップなどもいくつもありました。
ちなみに筆者一行は歩くのが好きなので、ほとんどタクシーを使いませんでしたが、カイロは「Uber」があってしかも激安なので、値段交渉が煩わしいようだったらUberのアプリをダウンロードしておくのがおすすめです。なお、カイロはザマレックに限らず歩行者用の信号が見当たらないので、思い切って道路を渡る勇気が必要です。絶え間なくクラクションが鳴っていますが、怯まずに渡りましょう。現地の人が渡ったところについて行くのがベストです。
エジプト料理を想像できますか?正直、私はできませんでした。イギリスにはレバノン料理店やイスラエル料理店はありますが、エジプト料理店は殆ど見たことがありません。従ってあまり期待していなかったのですが、結論からすると思ったより全然美味しかったです!特徴はモロッコやレバノン料理に比べるとスパイスの量が少なめ、塩も気持ち控えめなので、マイルドで日本人にあう味です。米もたくさん使います。現地ですすめられたおすすめメニューは「コシャリ」。コシャリはエジプトのソウルフードで、米にパスタとひよこ豆やレンズ豆を混ぜてフライド・オニオンとトマトソースをかけたものです。炭水化物の塊ですね。日本人とイタリア人(同行者の1人はイタリア人でした)としては米とパスタを混ぜる、という時点で「いやいや…」と思いがちですが、意外と悪くないです。固定概念を捨てるのです!筆者が一番好きだったのは「ムルキーヤ」というガーリックのきいたモロヘイヤのスープです。これを米にかけてチキンと一緒に食べるのが、トロトロした食感の食べたことがない味で美味しかったです。
スイーツ系でいうと、アラブと言えば「バクラヴァ」。たまに甘すぎるものもありますが、筆者が食べたものは丁度いい塩梅でした。アラブ圏はナッツ類がとても美味しいですよね。エジプト産ではなかったですが、ピスタチオなども大変美味だったので、お土産でもっと買ってくればよかったです。
「Zooba(ズーバ)」はエジプト人の知人に教えてもらった店で、エジプトのストリート・フードを提供するカジュアルなレストランです。こじんまりとした店内ですが、英語メニューがありました。小皿スタイルで様々なエジプト料理を味わうことができるので楽しいです。シャクシュカはイギリスで食べるのとは違い、スクランブルエッグに近かったですが、とても美味しかったです。ナスと獅子唐のフライはお酢が使われているのか、さっぱりした味。フルはソラマメのシチューのようなものでエジプトの典型的な朝ごはんだそうです。そして、お腹一杯食べて、お会計は3人で7.86英ポンド(1,340円)とコスト・パフォーマンス最高でした。ウェブサイトによるとズーバはニューヨークやサウジアラビア、クウェートにもレストランを展開しているようです。
次はレストラン「Abou El Sid(アブ・エル・シド)」。こちらもザマレックにあるレストランで、エジプトらしい雰囲気です。同じく知人のおすすめでしたが、現地でも他の人におすすめされました。価格帯と立地から観光客もたくさんいます。レストランの名前は伝説の料理人にちなんでいます。アブ・エル・シドは元々家族や友人に料理をふるまっていた天才料理人でした。噂を聞きつけたスルタンに専属の料理人になるように依頼され、引き受けます。しかし、しばらくすると家族や友人が恋しくなり、スルタンの元から逃げ出します。その彼が残した秘密のレシピ本が発見され、それがこちらのレストランのインスピレーションになったとか。ストーリーのあるレストランというわけですね(真偽は置いておいて)。メニューは本格エジプト料理で、Stuffed pigion(エジプト伝統の鳩料理)等もあります。お店は週末は混んでいますが、バーカウンターもあるので、飲み物を飲みながら待つことができます。
いかがでしたか。エジプトは慣れないと大変なことも多いですが、(定価がなく毎回価格交渉しなければならない、トイレを含め何かとチップが必要、何度も何度も「where are you from」と聞かれる等)それを引き換えにしても見る価値がある、圧倒的に貴重な歴史遺産や美しい紅海、砂漠などが待っていますよ。