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「築約100年」という建物は各地にあると思いますが、「史跡」などとして保存されていることが多いのではないでしょうか?今回は1世紀もの間映画を上映し続けており、経済産業省の近代化産業遺産にも認定された映画館「高田世界館」を紹介します。
高田世界館は1908(明治41)年の陸軍第13師団が高田市(当時)に創設されたのを機に、芝居小屋「高田座」として開業しました。建築様式は洋風建築を模して、和風建設方法で作った「擬洋風建築」です。
その後は時代の流れもあったのでしょう。映画館となり「高田東宝劇場」「高田セントラルシネマ」と名前を変え映画館として市民の娯楽場としてにぎわいを提供してきました。2007(平成19)年まで成人映画館として営業していましたが、建物の老朽化が深刻な問題になり廃業―取り壊しの危機に直面しました。
そんな状況に市民や映画ファンの間から「地域の宝として残すべき」という声があがり、保存運動が始まります。そして2009(平成21)年にNPO法人「まちなか映画館再生委員会」ができ、個人オーナーから譲渡されて運営を担う事になりました。当初は月数回の上映でしたが、現在は常設館として独立系映画を中心に上映しています。
それでは「高田世界館」の中に入ります。まずロビー、現代のシネコンとは違って狭い感じです。ホール入り口の取っ手や「次週上映」のロゴなどあちこちに歩んできた時間を見てとれます。映画を上映していない時間はホールや映写室も見学できます(見学のみは1人500円、映画を観る方は300円)。
さて古いドアからホールに入ると、まず天井にどぎもを抜かれます。凝った意匠の施された木組です。中央には江戸時代に高田藩の藩主だった榊原家の家紋「源氏車」が描かれています。この部分にはかつてシャンデリアがあったそうです。二階席もあるのも歴史を感じさせます。そしてこの二階席のやわらかなカーブと、側面にある柱がヨーロッパの劇場を思わせます。
一度、ロビーに出てこれまた歴史を感じさせる階段を上って二階へ。背面が木製の時代物の椅子もある観客席から下を見ると「これぞ劇場!」という眺め。スクリーンの前も広く、以外にも音楽ライブや落語、演劇などが開かれるそうです。次は映写室へ―。狭い映写室には存在感のある35mフィルムの映写機が2台鎮座しています。なんでも70年近く前 の映写機だそうです。現在はデジタル上映が主流ですが「100年続いたフィルム上映の技術も残す」と、この映写機を用いた上映会が行われています。
映画館のある高田地区には、冬の通路を確保するために一階の屋根を張り出させた雁木通りの町並みが美しく、歴史的建造物が多い地域です。映画館向かいの古い建物をリノベーションした交流施設「高田小町」で、観光情報を手に入れて「まち歩き」を楽しむのがおすすめです。
高田世界館