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中央アジアの中でもとりわけ観光客からの関心が薄いタジキスタンですが、稀に、中央アジアを周遊される旅行客の方々に遭遇します。彼らに「旅のハイライトはどこでしたか?」と尋ねると、大概「サマルカンド」や「ブハラ」といったウズベキスタンの都市名が挙げられ、「タジキスタンはどうですか?」と質問すると、苦笑いされる方が一定数いらっしゃいます。
観光資源の豊富さにおいては、ウズベキスタン等にはまだまだ引けを取るタジキスタンですが、タジキスタンにも独自の魅力がたくさんある… はずです…!
ということで、今回はタジキスタンを旅のメインディッシュとして扱う予定がない場合においても、タジキスタンの首都を中央アジア周遊旅行の開始地点、あるいは終了地点とすることが可能であるというアピールを兼ねて、ドゥシャンベから隣国ウズベキスタンのサマルカンドへ安く1日で移動する方法、また、次投稿にてサマルカンドからドゥシャンベへ1日で移動する方法を紹介いたします。
乗降場所や価格は2023年6月時点の筆者の実体験に基づいています。必ずしも同一の条件で旅行が可能であるということを保証するものではありません。尚、今回ご紹介させていただく経路には、標高2000~3000m級の山々の山間を縫う峠道が含まれます。冬期は雪崩や積雪により通行止めとなる他、通年崩落や土砂崩れのリスクがあるため、同経路の利用につきましては、実際に現地に到着後に最新情報を確認した上で判断されることを強く推奨いたします。
乗り合いタクシーの利用料金にざっくりとした相場は存在しますが、やはり、世界各国地域と同様に「外国人価格」なるものは存在するのではないかと、認識しています。この度、筆者がタジク人、ロシア人、諸外国 (日本、オーストラリア、ドイツ、米国、オランダ) 人旅行者との交流を通じて確認に至った傾向としましては、地元民であるタジク人向けに設定される料金が最安であるのは言うまでもないですが、欧米人 (露語を話さない) と旧ソ連圏の露語話者の間でも小さくない料金の差がある様を目の当たりにしました。
相場を超えた料金の支払いを回避するためには、以下の2点が不可欠ですが、ロシア語の習得に関しては一長一短で対応できるものではないため、今後渡航を検討される方々のために、せめて価格相場を共有させていただきたいと思います。
1名分運賃: 一律2.5ソモニ (約33円)
ルダキ通りを南北に縦断する3番のバスを利用し、「Chorbogh Terminal」まで、ひたすら北上します。Google Mapで表示される所用目安時間は15分程度ですが (自動車の場合)、バスの場合は停車回数が多く、乗車時に金銭での支払い等が生じるため、もう少し時間を要することになります。筆者が目的地に到達するまでには約30分を要しました。個人タクシーを利用する場合は、市内中心部から30ソモニ (約395円) 程見積もれば充分かと思います。
バスはChorbogh Terminalに隣接するガソリンスタンドで停車しました。季節や運転手の気分によって、停車位置が変動するような気がしなくもないですが、辺りは殺風景なので、バス乗り場はすぐに確認できるのではないかと思います。
「都市間バス乗り場」と称しましたが、所謂バス等は皆無で、客引きをしている車の大半はミニヴァンですらなく普通の乗用車です。節約大好きバックパッカーの皆さんの大きな味方であると同時に、ぼったくりや道中の脱輪など様々なリスクを背負うことになるため、「未舗装道路上のプチギャンブル」としてお馴染みの「乗り合いタクシー」です。
乗り場に差し掛かるや否や、客引きが群がってきます。タジキスタンにしては珍しく、腕を掴んできたり、スマートフォンを勝手に取り上げて電卓アプリで金額を提示してきたりされる方もいらっしゃいました。騒がしい勧誘の手を潜り抜けて、一旦ターミナルの建物まで歩いてゆきましょう。こちらでは飲み物や菓子類が購入可能です。
飲み物を購入して息を整えたら、勝負の時間です。余裕のある表情を作り、騒がしい運転手の人だかりにゆっくりと歩み寄ります。
ドゥシャンベからパンジャケントまでは200km以上の距離があります。東京からだと諏訪、大阪からだと名古屋、のような距離感でしょうか。
インターネットやタジキスタンの友人からの情報で、3年ほど前の相場であれば片道1人100~120ソモニ程度 (約1316~1579円) という情報があったため、こちらを参考にしました。が、しかし、最終着地点は140ソモニ (約1843円) になりました。運転手の開始価格が160ソモニであったため、もう少し善戦する余地があったようにも思います。ガソリン価格高騰の影響もあるのでしょうが、大阪-名古屋間の高速バスの片道運賃が大人1人最安で1700円程度であるということを踏まえると、決して安いとは言えないでしょう。快適さと性能ではランクルを狙いたいところですが、車内全席が埋まらなければ出発とならないため、必ずしも車種にこだわることが賢明であるとも言えません。
1名分運賃: 160ソモニ→140ソモニ (約1843円)
運転手によっては昼食をとるための休憩を挟む場合がありますが、絶対ではないので注意が必要です。軽食と飲み物の持ち込みは必須と言えるでしょう。また、旅行客の方々におかれましては、食あたりには充分お気を付けください。総じて地方都市の方が発生頻度が上がります。生野菜は特に注意したいところです。
また、首都を出ると清潔な水洗トイレはほぼ見られなくなります。虫が飛び交い、トイレットペーパーの備え付けがないトイレの利用に1~2ソモニを支払う形態が一般的ですので、一定の覚悟が必要です。
1名分運賃: 20ソモニ (約263円)
街の外れに位置する都市間タクシー乗り場です。ここに一旦到着したものの、相乗りしていたお客さんがそのまま国境まで送ってもらうことになったので、筆者もこれに便乗します。やや割高ですが、20ソモニで合意に至りました。
国境に到着しました。タジキスタン側では「お得だよ」等と謳って、ウズベキスタン・スムへの両替を申し出てくる人が数名いましたが、認可を受けていない機関での外貨両替行為は違法と見なされることがあるため、ご注意ください。慌てて彼らに対応せずとも、国境を通過した直後に公式の両替所が設置されています。両者の提示レートを比較したところ、公式レートの方がややお得でした。
サマルカンド市街地行きのタクシーを捕まえます。運転手選びは客側に選択権があるはずですが、誰が最初に交渉を始めるかということで、運転手は揉めに揉めているようでした。個人タクシーの場合は10米ドルでも払い過ぎだという情報を事前に得られていたので、5米ドル程度を基準に交渉を開始します。
結果として、乗り合いのミニヴァンを利用することで15000~30000スム (約187~374円) まで抑えられることが分かったので、個人タクシーの快適さは放棄し、再度乗り合いの移動手段を選択しました。
運転手の言い値は大概相場の数倍~数10倍なので、一緒に国境を越えてきたタジク人旅行客に意見を仰ぎましたが、案外この辺りの価格相場には疎いようでした。出費を抑えるためには、両国の入国スタンプが大量に押されている経験豊富なタジク人、あるいはウズベク人と同じ乗り合いヴァンに乗り込むことが効果的です。彼らが支払う予定の金額を出発前に聴取し、運転手に同様の価格を提示して合意をいただくことで、現地相場の適正価格で利用することが可能です。
1名分運賃: 15000スム (約187円)
30分ほど走ると市街地に入り、40分ほど経過した頃に、サマルカンドのレギスタン広場前に到着します。楽しい楽しいサマルカンド滞在の始まりです。
快適さに関してはやや度外視した陸路での旅ですが、半日もあれば、充分ドゥシャンベからサマルカンドへの移動が完了します。タクシーに関しては、割増で料金を支払い貸し切りにする等、様々なカスタマイズの余地があるかと思います。
ウズベキスタンやキルギスへの渡航を計画される際には、是非タジキスタンを旅程に組み込むこともご検討ください。
記載価格は2023年6月30日時点、OANDA(143.6円=1米ドル)、タジキスタン国立銀行(1米ドル= 10.91ソモニ)、ウズベキスタン国立銀行(1米ドル=11510スム)発表の両替レートに基づいて算出しています。